2015年1月15日木曜日

「がんの2/3は”不運(ランダム変異)”が発生の原因」という研究結果

「Science」オンライン版(1/1号)に発がんに関する興味深い研究結果が掲載されました(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25554788)。

この研究は、ジョンズ・ホプキンズ大学医学部腫瘍学教授のBert Vogelstein氏らが行なったもので、不運と環境、遺伝の3つの因子ががんの発症にどの程度寄与しているのかを定量化するモデルを作製し、報告したものです。


その概要は、「遺伝や環境が発がんに関与しているのはおよそ1/3に過ぎず、2/3は幹細胞の分裂時に生じるランダムなDNA変異によって発生する」ということです。もしそうであれば、生活習慣などの環境要因の改善は特定のがんの予防には非常に有効ですが、その他のがんには効果がない可能性があるということになります。

今回の研究では、31の異なる身体組織での幹細胞の分裂数に関する過去の研究を検討し、その領域の生涯のがんリスクと比較しました。ただし、乳がんや前立腺がんなどの一部のがんについては、信頼できる研究がないため今回は対象としていないそうです。計算の結果、22種類のがんは主に細胞分裂時のランダム変異によって説明できることがわかりましたが、その他の9種類は、「不運」と環境や遺伝の組み合わせによる可能性が高いようであったということです。

もしこの報告が真実なら、食生活の改善などによるがんの予防には限界があるということになります。ただ繰り返しになりますが、この研究には乳がんは含まれていません。乳がんは、一部には遺伝が関与することも環境要因(食事やホルモン環境)が関与していることも今までの研究で報告されていますので、おそらく遺伝+環境+不運の組み合わせで発症するものと推測されます。不運は自分でコントロールできませんが、食生活を改めることはできます。それで全て予防できるわけではないという今回の結果ですが、自分でやれることはやっておいた方が良いのは言うまでもありません。

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