2009年2月25日水曜日

乳腺術後症例検討会

今日は、勤務先の病院と関連病院2施設の症例検討会(毎月1回開催)がありました。
昨年途中から、オープン参加にしたので、近隣の他施設の技師さんも参加しています。

決して症例が豊富な病院ではありませんが、その分、1例1例を大切にするようにしています。手術症例をすべて画像提示して、病理結果と照らし合わせて、職種を越えて知識を共有できるように心がけています。

超音波技師がマンモグラフィを読めて、レントゲン技師も超音波検査の所見が理解できるようになり、病理所見を見て、画像所見の振り返りができれば、診断精度は上がり、結果的に早期乳癌の発見につながると信じています。

今回は25人以上の参加があり、会議室はいっぱいでした。これからも他施設から積極的に参加したくなるような企画も交えながら、工夫していきたいと思っています。

久しぶりに飲みながら懇親会をするのもいいかな?

2009年2月22日日曜日

代替補完療法2 一般的なお話

なかなか主治医には言い出しにくいようですが、知人や家族に勧められて、いろんなサプリメントを飲んでいる患者さんは多いようです。私は、患者さんに相談された場合は、害がなければ基本的に許可しています。ただ、以下の点を理解した上で、判断するようにお話ししています。

①代替補完療法は、臨床的な効果がきちんと証明されていないこと…あたかも証明されているかのように書かれていることもありますが、私たちが”効果がある”と判断するのは、きちんとした大規模の無作為の臨床試験で統計学的に有意な差があった場合です。ほとんどの代替補完療法はこの条件を満たしていません。
②代替補完療法にも副作用は起き得ること…例えばキノコ類(βグルカン)は大量摂取で心筋障害を起こすこともあると言われています。
③あまりに高価なもの、”ガンに効く”と謳い文句が書いてあるもの(これは薬事法違反です)や”私はこれでガンを克服した”などの顔写真入りの宣伝が載っているものは、あやしいものが多いので、手を出さない方が無難です。

かなり昔に、知人が研究しているという薬剤(鉱物から精製したものだったと思います)を家族が勝手に点滴の中に混注させていたことがありました。このようなことは大変危険ですので決してしてはいけません。必ず、主治医に相談するようにして下さい。

私は代替補完療法のすべてを否定するつもりはありません。中には本当に臨床的に効果がみられるものもあるかもしれません。
でも、なぜかガンに効くと長く言われているサプリメントも、臨床試験をしようとはしていません。なんとなく効くんじゃないか?程度のほうが儲かるからかな?臨床試験をして、効果なしと判断されたら、売れなくなるからかな?そんなことを思ってしまいます。
きちんと効果が証明されるのなら、私は大歓迎です。ガンと戦う武器は多ければ多いほどありがたいですからね。

2009年2月19日木曜日

乳腺症と乳癌

”乳腺症は、乳癌になりやすいのですか?”

外来でよく聞かれる質問です。

私は、
”乳腺症の一部は乳癌と関係あると推測されていますが、そういう変化があなたの乳腺内に起きているかどうかは、両方の乳房をすべて顕微鏡で調べないと正確にはわからないので、あまり乳腺症だから…とは考えなくて良いです。ただ、乳腺症の有無に関わらず、20-25人に1人は乳癌になりますから、すべての女性は乳癌に気をつけなければなりません。”
と、わかるようなわからないようなお答えをしています。

そもそも”乳腺症”とは何か?ということに正確にお答えするのは、実は難しいのです。

症状的には、”中年女性に好発する、痛みを伴う硬結を乳房に生じる状態”を意味しており、女性ホルモンの不均衡(エストロゲンのプロゲステロンに対する相対的過剰状態)により発症すると言われています。ですから、しばしば月経前に悪化し、月経後に軽快することが多いのです。

エコー検査では、ヒョウの柄のような乳腺のムラが強くあらわれたり、嚢胞という拡張した乳管の中に液体がたまった袋ができたりといった所見が見られます。また、マンモグラフィでは、全体に乳腺が濃く写ることが多く、細かい石灰化が広い範囲に見られることがありますが、乳腺症に特徴的な所見というのはありません。

病理学的には、乳腺組織(乳管上皮細胞)の増殖、仮性、嚢胞化、線維化など、様々な変化をきたしています。その中でも、異型を伴った乳管上皮の過形成などは、乳癌の発生リスクを高めると言われています。しかし、これらの変化がどの程度起きているかは病理学的検査以外ではわかりません。

以上のような特徴はありますが、例えばすごく痛みが強くてごつごつ触れても、エコー上はあまり所見がなかったり、逆に典型的なヒョウ柄模様の乳腺でも触診上は異常なくて痛みもないということもあります。また、未出産の若年女性では、月経前は乳腺は硬く、ごつごつして痛みや張りがあるのはめずらしくありませんし、エコーをしたらヒョウ柄の方が多いです。さらに言えば、触診上も既往上も乳腺症ではないと思われる女性の剖検による病理検査では、結構な割合で病理学的な乳腺症の所見があったという報告もあります。

こういった事実を考えると、いったい何をもって乳腺症とすべきなのか?、乳腺症と正常の境界線はどこにあるのか? ということがまったくわからなくなってしまいます。

だから乳腺症かどうか?はあまり重要ではないのです。
マンモグラフィだけで乳癌の存在がわかりやすい乳腺なのか、エコーを併用すべきなのか、という判断をしたり、定期的に検査を受けてもらう啓蒙目的に使用している言葉という意味合いが強いのです。また、エコー検査を保険適応で行なうために便宜上、必要であるということも言えます。

2009年2月17日火曜日

多国籍乳腺外来…

そんな大それた外来じゃないんですが…。

ただ、時々いろんなお国の患者さんが受診してくるんです。

アメリカはもちろん、中国、韓国、台湾、フィリピン、モンゴル、マリ、エジプト、イラン…。

英語くらい医者なら話せると、世間一般では思っているようですが、少なくとも私はまったくだめです。
専門用語の英語はわかりますが、日常会話が思い出せません。
あれこれ記憶をたどるより、身振り手振りと適当な英語の組み合わせで、ひたすらしのぎます。イスラム圏の方はそもそも英語を話せない人も多いんです。だいたいは通訳できる人が一緒だったり、外人さんが日本語ぺらぺらだったりでなんとかなるんですけどね。

でも、外来をすべて予約制にしてから、外人さんの突然の受診はなくなりました。どきどきしなくてすむのはいいんですが、少しさみしいです。

またそろそろ、おつきあいの長いアメリカ人の女性が来ます。彼女はほぼ日本語で通じるので楽しく会話しています。でも最近はちょっと精神的に参っているみたいです。もっと英語と精神科の勉強をしておけばよかった…。

2009年2月16日月曜日

17年ぶりの定期往診

今月から、久しぶりに定期往診をしています。
前に定期往診していたのは内科の診療所にいるときでしたので17年ぶりくらいです。

その患者さんはご高齢で、状態は決して良くはありませんが、私の往診をとても楽しみにしていてくれます。私も研修医時代に戻ったような新鮮な気持ちになれました。外来ではなかなかゆっくり話す時間はとれませんが、往診ならベッドに一緒に腰掛けてのんびりとお話できます。今日は一緒に写真も撮ってきました。とてもいい笑顔をした素敵なおばあちゃんです。

できるだけ長く大好きな自宅で過ごせるように、痛みや不安を感じずに生活できるように、訪問看護ステーションの看護師さんたちと協力して援助していってあげたいと思っています!

2009年2月14日土曜日

病院の選び方2 有症状の場合

前回、乳房に関する症状(しこり、痛みなど)があるときには、検診ではなく、外来に受診するように書きましたが、いざ受診しようと思ってもどこに受診したらいいかわからないと思う方も多いかと思います。

結局、かかりつけの主治医に相談したり、友人から勧められたり、最近ではネットで検索したりして判断するしかないのですが、受診してみないと自分のニーズに合うかどうかわからないこともあるかもしれません。
そこで、安心して受診できる病院の選び方について個人的な意見を書いてみます。

乳腺を診てくれる病院はだいたい次のように分けられます。

①乳腺クリニックなどの単科の病院(ほとんどは19床以下の診療所ですが、比較的ベッド数の多い病院もあります。)
②総合病院の外科外来(乳腺外来)
③大学病院の外科外来(乳腺外来)
④癌専門病院(がんセンターなど)

それぞれ良いところ、問題点があります。
①④は、乳腺の専門家が診てくれると思ってよいので、そういう点では安心です。また症例数も豊富です。②③は、一般外来にかかった場合は専門外の医師の診察を受けることがあります。
一方、①(④)では、重い合併症を持っていたり、高齢者の場合などは、万が一術中や術後に問題が生じた場合には、専門的な対応ができないことがあります。そのような場合は、②や③のほうが安心です。
また、①の場合は、院内にある検査機器が限られており、例えばMRIやシンチグラフィなどは他の病院で撮影をしてきてもらったり、病理検査室がないため、迅速検査(乳房温存手術のときに、切除した端に癌が明らかに残っていないかとか、リンパ節に転移していないかを手術中に調べる検査)ができなかったり、他施設に持っていくため時間がかかったり、専門外の外科医が判断しなければならなかったり、という問題もあります。

これらを踏まえて、患者さんのからだの状態やニーズに沿って選べば良いと思います。

さらに、インターネットで、病院や医師を調べる場合は、以下の点を確認して参考にしてみて下さい。

①乳腺専門医がいること。
②一定の乳癌手術件数をこなしていること。ただし、一般には年間50例以上を目安にしていることが多いですが、例えば、乳癌の手術をする医師が5人いて、年間100例手術している場合は、外科医1人あたりの手術件数は年間20例です。乳腺外科医1人で年間40例こなしているほうが、手術件数は多いことになりますので一概に施設の年間手術数だけでは判断できないところもあります。
③学会発表などで、積極的に臨床的な発表を行なっていること。臨床に力を入れている一つの目安になります。
④化学療法室(またはそれに準ずる設備)があること。最近では、乳癌の術前や術後に化学療法(抗癌剤)を外来で使用することが多くなっています。専任スタッフがいて、専門の治療室があるほうがより安心です。

あとは、担当医との相性だけです。これが実はけっこう重要なのですが、こればっかりは実際に話してみないとわからないところもあります。良い巡り合わせがあるといいですね!

2009年2月12日木曜日

病院の選び方1 乳がん検診

外来でいつも思うことは、乳がん検診の趣旨を理解されていない方が多いということです。

乳がん検診は基本的に、乳房に関する症状がない方、乳腺症などで定期的に乳房検査を受けていない方が受けるための制度です。しかし、時々、”しこりを自覚したので検診を受けに来ました”と言って来院される方がいます。もっと極端なケースでは、他院で乳癌と診断されているのに、信じられなくて、何も言わずに検診を受けに来る人もいます。私も2人ほど経験していますが、万が一、見逃していたら…と思うと冷や汗ものでした。
お願いですから、症状がある場合には、検診ではなく、外科外来に”受診”して下さい!

さて、乳がん検診を受ける施設を選ぶ基準ですが、いくつか挙げてみますので参考にしてみて下さい。

①マンモグラフィ検診精度管理中央委員会(精中委)の認定施設であること
②精中委の認定診療放射線技師がいること
③精中委の認定読影医がいること(2名以上いて、マンモグラフィをダブルチェックしているのが、より望ましい)

*マンモグラフィを撮影する技師が女性かどうかも選択する基準の一つになります。最近は、女性の技師を希望される方が多いです。

*30才台の方は検診対象外です。乳房痛や張りがある場合、硬さが気になる場合は外科に(検診センターではなく)受診して相談してみて下さい。たいていは保険診療で検査(一つだけ受けるならエコー検査をお勧めします。3割負担で検査料は1050円です。)をしてくれるはずです。全く無症状の場合は、全額自己負担になる場合があります。

*40才以上でも、乳房痛がある方や硬さが気になる方、出産経験がない方、以前、乳腺症と言われたことがある方は、マンモグラフィで乳腺が濃く写り、しこりがわかりにくいことがありますので、エコー検査を勧められるがあります。そのような方は、集団マンモグラフィ検診などではなく、すぐにエコー検査ができる施設(一般病院の乳腺外来や開業の乳腺クリニックなど)で乳がん検診を受けた方が良いと思います。