2009年2月14日土曜日

病院の選び方2 有症状の場合

前回、乳房に関する症状(しこり、痛みなど)があるときには、検診ではなく、外来に受診するように書きましたが、いざ受診しようと思ってもどこに受診したらいいかわからないと思う方も多いかと思います。

結局、かかりつけの主治医に相談したり、友人から勧められたり、最近ではネットで検索したりして判断するしかないのですが、受診してみないと自分のニーズに合うかどうかわからないこともあるかもしれません。
そこで、安心して受診できる病院の選び方について個人的な意見を書いてみます。

乳腺を診てくれる病院はだいたい次のように分けられます。

①乳腺クリニックなどの単科の病院(ほとんどは19床以下の診療所ですが、比較的ベッド数の多い病院もあります。)
②総合病院の外科外来(乳腺外来)
③大学病院の外科外来(乳腺外来)
④癌専門病院(がんセンターなど)

それぞれ良いところ、問題点があります。
①④は、乳腺の専門家が診てくれると思ってよいので、そういう点では安心です。また症例数も豊富です。②③は、一般外来にかかった場合は専門外の医師の診察を受けることがあります。
一方、①(④)では、重い合併症を持っていたり、高齢者の場合などは、万が一術中や術後に問題が生じた場合には、専門的な対応ができないことがあります。そのような場合は、②や③のほうが安心です。
また、①の場合は、院内にある検査機器が限られており、例えばMRIやシンチグラフィなどは他の病院で撮影をしてきてもらったり、病理検査室がないため、迅速検査(乳房温存手術のときに、切除した端に癌が明らかに残っていないかとか、リンパ節に転移していないかを手術中に調べる検査)ができなかったり、他施設に持っていくため時間がかかったり、専門外の外科医が判断しなければならなかったり、という問題もあります。

これらを踏まえて、患者さんのからだの状態やニーズに沿って選べば良いと思います。

さらに、インターネットで、病院や医師を調べる場合は、以下の点を確認して参考にしてみて下さい。

①乳腺専門医がいること。
②一定の乳癌手術件数をこなしていること。ただし、一般には年間50例以上を目安にしていることが多いですが、例えば、乳癌の手術をする医師が5人いて、年間100例手術している場合は、外科医1人あたりの手術件数は年間20例です。乳腺外科医1人で年間40例こなしているほうが、手術件数は多いことになりますので一概に施設の年間手術数だけでは判断できないところもあります。
③学会発表などで、積極的に臨床的な発表を行なっていること。臨床に力を入れている一つの目安になります。
④化学療法室(またはそれに準ずる設備)があること。最近では、乳癌の術前や術後に化学療法(抗癌剤)を外来で使用することが多くなっています。専任スタッフがいて、専門の治療室があるほうがより安心です。

あとは、担当医との相性だけです。これが実はけっこう重要なのですが、こればっかりは実際に話してみないとわからないところもあります。良い巡り合わせがあるといいですね!

6 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

有症状のことで質問させていただきます。
乳腺症の人は、乳房に痛みやハリ感を感じることが多いですよね。
痛みの機序というは、どのようなものなのですか?
教えていただけますか?

hidechin さんのコメント...

乳腺症は30-40才代の女性に多い病態で、女性ホルモンの影響によって生じると言われています。ですから月経前やホルモン補充療法で痛みが増強することがあります。

痛みの原因はいろいろ推測されていますが、確かなところは私もわかりません。女性ホルモンの影響で、乳管周囲に浮腫(炎症のときに起こるような腫れ)が起きるためと説明してあったのを読んだことがあります。日常診療の印象では、乳腺症の所見の一つである嚢胞(乳管の中に分泌物がたまって膨らんだ袋)を伴う方に、強い痛みを訴える傾向があるように思います。しかし、その機序は説明されていません。
また、エコー所見では乳腺症の程度は軽いのに、強い痛みを訴える方もいます。ですから、何らかの原因で、痛みを発する物質が増加するのだと思いますが、正確なところはあまりよくわかっていないのだと思います。
あまり明快なお答えができずに申し訳ありません。

匿名 さんのコメント...

現在の私の主治医は最初のしこりが見つかった時に婦人科から紹介され、それ以来6年間かかっている先生です。私が通っている総合病院に外科の先生は6人ぐらいおられる様ですが、乳腺外科専門医はその先生だけです。また、広い範囲でかなり有名な先生らしく(手術の腕がいいと評判だそうです)、遠いところからも患者さんはいらっしゃってるようで、いつも大変混んでいて、予約していても毎回1時間~2時間待たされるのは普通です(長い時は3〜4時間の時もあります)。先生自身も次から次へと患者を診るのが精一杯という感じで、看護師さんのお話によると「トイレも我慢して、ご飯も食べてないのよ」という忙しさの様です(どこのお医者様もそうかもしれませんが)。そのせいか、私の名前が呼ばれて診察室に入っても、本当に忙しそうに一言二言会話をするのがやっとで、しかも先生の言葉はいつもそっけなく全然心が通っているように思えませんし、こちらがちょっと素人臭いことを聞いてしまうと、怒った様な口調で言われるので、私はいつも用意していた質問をほとんど聞く事ができず、帰って来ては後悔して落ち込むことばかりです。それでも、先日の乳癌が見つかるまでは、あまり先生との関係に悩んだり考え込むこともなかったのですが、今回の手術、そして化学療法が始まり、精神的にも肉体的に大変辛い状況の時に、やはり頼りになるのは主治医の先生、という思いが強くなります。それなのに、私の質問にそっけなくされたり、鼻で笑われ”忙しいのにくだらない”という様な態度をとられると、私の中でどんどんと不信感はつのり、大変落ち込みます。抗がん剤で苦しんでいる最中に主治医への信頼感がないと「頑張って乗り越えよう」という気持ちにもなれません。

何を甘えたことを…、とお感じになられるかもしれませんが、患者にとって、主治医への信頼感は治療を乗り越える上でとても重要なものなのです。また心の支えになるものだと思っています。これは人それぞれ感じ方は違うと思いますし、人と人の関係は個々に違うものなのだということはわかっています。ただ、私自身が信頼できないと感じる限り、この先長い治療が続くのに、このまま治療を続けていくのがとても辛く感じてしまうのです。身内からは「病院を変わったら?」などと言われますが、それはそれで、また一からだと思うとそれもストレスですし、簡単には決心がつきません。

総合病院の先生は皆さんお忙しくて患者一人一人と向かい合う時間などないのでしょうか?私の様な思いをしている方もいらっしゃるのでしょうか?割り切って付き合っていくしか仕方ないのでしょうか?

とりとめもなく、長くなってしまって大変申し訳ありません。
相談というより、辛い気持ちを関係のないhidechin先生にぶつけてしまいました。お許しください。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん

”何を甘えたことを…、とお感じになられるかもしれませんが、患者にとって、主治医への信頼感は治療を乗り越える上でとても重要なものなのです”

→まったくもってその通りです。甘えたことだとは思いませんよ。主治医の先生は有名な先生のようですので患者さんが集中して大変なのだと思います。その点はその先生ほどではありませんが、私も同じような経験をしていますので理解できます。ただ、だからと言って患者さんの訴えに耳を傾けなくて良いということではありません。必要なことは遠慮せずに聞いていいんですよ。もしそれできちんとした対応をしてもらえないのであれば、かかりやすい病院に紹介してもらうのも一つの方法です(できれば手術してもらった病院で診てもらうのがベストではありますが…)。
ただ一人の人間としては、その先生もお気の毒だと思う気持ちもあります。ネット社会になって、ますます一部の医療機関に患者さんが集中する傾向があるからです。一人の医師が診れる患者さんの数には限界があります。きっとその先生も本当はゆっくり患者さんのお話を聞いてあげたいと思っているのではないでしょうか?でも長時間待っている後の患者さんのことを考えると一人一人にかける時間を短くせざるを得ないのではないかと思います。手術も病棟も外来も、となると、外来単位を増やすということも容易ではありません。
なかなか難しい問題ではありますが、まずは時間のことは関係なく、聞きたいことをお聞きになってみて下さい。それでもどうしてもだめならその時に考えましょう。
それではお大事に!

匿名 さんのコメント...

>hidechin先生
どうもありがとうございます。
そうなんです、私もその先生の過酷な仕事環境を見ていると、時間がないことも、焦る気持ちもわかるのです。ただ、もう少し言い方などを、こちらが“怖い”と感じる事のないような言い方で答えていただけたら、わたしもそんなに毎回びくびくすることもないと思うのですが…。でも、仕方ないのかもしれませんね、心に余裕がない時は誰でもそうなってしまうのかもしれませんよね。hidechin先生のように、患者ひとりひとりのことを考えてくださる先生に担当していただけたら、なんて考えてしまいますが、ないものねだりはいけませんよね…。話を聞いていただけただけで、少し心が軽くなりました。頑張って治療に向き合っていきたいと思います。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん

その先生は自分の物言いの”怖さ”に気づいていないのかもしれません。”先生のお話の仕方、怖いですよ!”って笑顔で伝えてみるのも一つの方法かもしれませんね!