2009年4月20日月曜日

十全大補湯の効果

以前、代替補完療法のところで漢方薬について書きましたが、私も時々、乳癌術後の患者さんに漢方薬を使うことがあります。

私から処方することがあるのは、骨髄抑制に対して加味帰脾湯、タキサン系抗癌剤による筋肉痛に芍薬甘草湯、などが代表的なものです。

一方、患者さんから希望される漢方の代表は、十全大補湯です。
免疫賦活作用があるという巷の噂で好まれているようです。効能書きには、適応症として、”病後の体力の低下、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血”と書いています。東洋医学で言うところの虚証という、体力が弱った人が適応です。

今回は、患者さんの希望ではなく、私が判断して処方しました。
その患者さんは往診で診ている乳癌再発(骨、リンパ節)の92才のおばあちゃん。しっかりした方ですが、とても神経が細やかで心配性…。いろんなところに神経痛が出たり、吐き気がしたり、眠れなかったり、便秘したり、胸が苦しくなったり、いろいろな症状が出たり消えたりします。入院すると良くなるのでかなりメンタルな影響が大きいことはご本人も自覚されています。

そして、先日、その患者さんから、”背中が寒くて寒くてしかたがないので心配です…”と訪問看護ステーションに電話が入りました。
熱も風邪症状もないので、器質的な疾患ではなさそうでしたので、十全大補湯を試してみました。

その1週後に往診してみると、劇的に効いたとのこと。

よかった、よかった。

患者さんのつらい症状に効いてくれれば、それがなにより一番です。理屈ではありません。
また、同じような症状の方がいたら試してみようかなという気になりました。

8 件のコメント:

kimity0115 さんのコメント...

わ~おばあちゃん 症状が改善して本当によかったですね~~^^
hidechin先生の的確な判断のおかげですね~
私もFEC6クール抗がん剤治療しましたが4.5ヶ月間、本当に自分でもよく耐えたと褒めてやりたいくらいです。

でも、もう二度と抗がん剤治療はしたくないです・・それくらい辛かったです><

私も骨髄抑制で免疫力低下の時期は毎回熱など出していましたし、歯茎がひどくやられ回復しないまま予定の投与日になってしまい一週遅らせたときもありました><

主治医には、大まかな副作用の症状については、しっかり薬の希望を言って処方はしてもらえましたが、
投与日に歯茎のこと毎回訴えて話しても歯医者に行って処置してもらってくださいとしか言われず、ご飯も食べれず辛い日々を過ごしていました。

今思えばこういう漢方薬とか処方依頼してもよかったのかなと思ったりもしました。

副作用で歯周病になってしまい抗がん剤修了して4ヶ月たった今でもまだ完全に歯茎は戻っていません。。

抗がん剤は終わっても爪あとはまだまだ残っています。。

完全に元通りの身体にはなることはもう無いですが、でも髪の毛などは時間がたてば元の長さになるんだし、時間が解決してくれる事に対しては、気持ちを強く持ってそれまでなんとか頑張るしかないと思っています。

ケースバイケースですがhidechin先生のご判断でこれからも一人でも多くの患者さんが、辛い副作用から少しでも緩和できるような、診察、薬の処方をして頂いて心配なく抗がん剤治療をできるような環境にしてあげていただけると患者さんも安心できると思います^^

リンダ さんのコメント...

私は抗がん剤の後、閉経しまして、その後アリミテックス飲んでおりますが、関節痛はだんだんと、慣れてきました。
が、やっぱ更年期障害なんでしょうね、不眠や、倦怠感、イライラ等に悩まされております。


私もその漢方薬飲んでみたいな~~!!
普通の薬局でも売っていますか?
主治医に言ったら 処方してもらえるのなな・・・?

漢方医じゃないと無理ですよね。

Unknown さんのコメント...

漢方薬ですか、、92歳のおばあちゃんは先生と出会えてよかったですね。あらゆる手立てを考え患者さんの症状の緩和対策をとられているのですね。kimityさんやリンダさんもさまざまな事を乗り越えられてきたのですね。医療者として考えさせられます。お二人とも頑張れているのですね。応援しております。kimikomew

hidechin さんのコメント...

kimity0115さんへ
歯周病ですか…。あまり経験はないですね。口腔内の粘膜が弱くなるから感染を起こしやすくなったんでしょうか?
抗癌剤の副作用対策は、昔に比べてかなり進歩しました。特に嘔吐に対しては、ステロイドの予防投与と新規薬剤の開発で、FECでも吐く人はほとんどいなくなりました。ただ、脱毛予防や口内炎予防など、まだまだ不十分なところがありますよね。もっと副作用が少なくて効果的な再発予防薬の開発が進めばいいですね!

hidechin さんのコメント...

リンダさんへ
更年期症状が主なら、別な薬のほうが良い場合もあります。例えば当帰芍薬散とか加味逍遥散などがよく使われます。特に漢方専門の医師じゃなくてもたいていの病院で処方してもらえますが、婦人科で処方されることが多いです。相談してみて下さいね。

hidechin さんのコメント...

kimikomew3824さんへ
実は、このおばあちゃんに”漢方はどうかな”って最初に言ってくれたのは、一緒に往診に行っている看護師さんなんですよ。それで、漢方の本を調べて、十全大補湯が良さそうだと思って処方したんです。
経験のある看護師さんたちにはいつも助けてもらっています!

ちっこ さんのコメント...

hidechin さんもご一緒された看護師さんも
いい人で良かったぁ!

私の周りの患者さん達が体調不良を訴えても「十人十色で症状は様々だからねぇ」で終わってしまうケースが多い様です

特に投薬については素人が口を出せないと思いますからね、いらない事を言って嫌われたらどうしよう、とか・・・も問題です

「怠い」だけでも大きな不安だったりするのですが真剣に耳を傾けてくれるDr.は少ない様です

hidechin さん、看護師さん、本当にありがとうございます。私の心が救われました。

hidechin さんのコメント...

ちっこさんへ
そう感じていただけたならうれしいです。
でも実際はそのような検査結果にあらわれない体調の異常は対処が難しいというのが本音です。私も検査をして異常がなければ心配ないよってお話しして様子をみることも多いのです。

患者さんが一番心配しているのは、そういう症状が”再発によるものではないか?”とか”抗癌剤の副作用のせいではないか?”ということなので、検査で異常がないことを確認し、よく説明すれば自然に良くなるケースがほとんどです。

問題なのは、医師がよく話も聞かず、検査もせずに”精神的なものだ”と決めつけることがあるということです。この場合は、症状が長引くことが多いです。

基本は患者さんの訴えに耳を傾けて、何を心配しているかを把握することだと思います。