2009年9月28日月曜日

ホルモン療法の副作用2 骨粗鬆症

女性ホルモンの働きの一つに骨吸収を抑制して、骨形成を促進する作用があります。ですから女性は閉経後に女性ホルモンが急激に低下すると骨粗鬆症になりやすいのです。

乳癌術後のホルモン療法のうち、タモキシフェンなどのSERMsと呼ばれる抗エストロゲン剤は、骨に対してはエストロゲン様の作用を呈しますので、むしろ骨粗鬆症に対して抑制的に働きますが、閉経前のゾラデックスやリュープリン(LH-RH agonist)や閉経後のアリミデックス、アロマシン、フェマーラなどのアロマターゼ阻害剤はエストロゲン自体を低下させますので骨粗鬆症が出現します。

骨粗鬆症の有無は、骨密度(骨量測定)検査で調べます。骨に沈着したカルシウム量が、若年成人の平均(Young Adult Mean=YAM)の70%以下になると骨粗鬆症と判定します。また、YAMの70-80%で、脆弱性骨折(軽微な外力で生じた非外傷性骨折)をきたした場合も骨粗鬆症と判定します。骨量は年齢とともに自然に低下し、80歳くらいになると平均値が70%くらいになりますのでこの年齢になればだいたいの人が骨粗鬆症の状態になると考えて良いです。しかし、乳癌術後の患者さんが、上に書いたようなホルモン療法を行なうと、同年齢の平均より骨量が低下してしまう(骨年齢が上がってしまう)ため、通常より早く骨粗鬆症になる危険があるということです。

骨粗鬆症になると、骨痛が出たり、骨折しやすくなったりします。特に骨折は著しく生活の質(QOL)を低下させますので注意が必要です。私は、これらのホルモン療法を行なう患者さんには6ヶ月から1年に1回、骨密度の検査を行なっています。実際は、それほど急激に著しく骨量が低下するわけではありませんが、通常の人の年齢に伴う骨量の低下に比べるとやはり少し減り方が大きいようです。

骨粗鬆症の治療には、以前はカルシウム製剤とビタミンDの併用+運動療法が一般的でした。現在でも軽度の骨量減少の場合にはこれらを投与することがありますが、その効果は不十分と言われており、最近はビスフォスフォネート製剤(ボナロンなど)を投与することが多くなっています。ちなみに骨転移の場合に点滴で投与するゾメタもビスフォスフォネート製剤の一つです。強力な骨吸収抑制作用を持っているため、骨粗鬆症に対しては6ヶ月に1回程度の投与で良いと言われています。内服薬よりも簡便なため、患者さんにとってはこちらの方が楽ではないかと思いますが、残念ながら骨粗鬆症に対しては保険適応外です。また、ラロキシフェンというタモキシフェンと構造が似た薬剤も骨粗鬆症の治療に効果があると言われています。なお筋力の維持が転倒の予防や骨の保護にも役立ちますので、運動療法はいずれにしても大切です。

4 件のコメント:

陽 さんのコメント...

先生、ご無沙汰しています。
でも、毎日、こちらを読ませていただいては、感心したり、納得したり、勉強させていただいてます。

現在、フェマーラを服用して1年半になります。
昨年11月の骨密度検査では、腰椎DEXA法で123%という結果でした。
それ以前も、5年前、MD法で100%、6年前が、かかとで調べる超音波法で20代相当とのことでしたし、ママさんバレーもしてるので、骨年齢だけは自信がありました。

でも、今月初め、薬局にあった簡単な超音波の検査で、Cランクという結果が出ました。
やはり、フェマーラの副作用が出てきたのかと、不安に思ったり、それとも、簡易な検査だから、誤差があるのかもしれないと思ったりしています。

化療で閉経して、ちょうど7年です。
フェマーラのこともあるし、骨量が低下してるのかなと、気になっています。
年末の検査、いつも以上に不安です。

そのほかの副作用は、手先・足先の痛みと手のこわばりが、今、あります。
お尻の筋肉痛や膝の関節痛が辛い時期も、時々ありました。
副作用にも波があるみたいです。
不快ではあるけれど、もうちょっと頑張ってみようと思っています。

hidechin さんのコメント...

陽さんへ

お久しぶりです!

骨密度は検査方法でかなりばらつきがでることがあります。特に簡易法の信頼性はかなり落ちると思います。重要なのは同じ検査法で推移をみることです。1年前に123%だったものがそんなに急激に低下するとは思えません。フェマーラの影響はそろそろ出て来てもおかしくないとは思いますが、私の経験上はそんなに急激には落ちないのではないかと思います。薬局の検査は気にしなくて良いのではないかと思いますよ。

不快な副作用はありますが、なんとか生活に支障がない範囲であればフェマーラを継続したほうがよいと思います。

陽さんもバレーをしていたんですね。私も9年間やっていたんですよ。もうすっかり跳べなくなりましたけどね!健康のためにもこれからも続けてくださいね!(怪我にはくれぐれも気をつけて、ですが…)

陽 さんのコメント...

先生、ありがとうございます。
ほっとしました。
多少の低下はあるでしょうけれど、安心して、骨密度の検査に臨めます。
フェマーラも、続けていこうと思います。

ホルモン療法の副作用については、とても身近なことなので、次回も楽しみに待ってます。

先生も、バレーをなさってたんですか!?
これもまた奇遇ですね~
年を重ね、だんだん、思うようにプレイできなくなっているのですが、手術を経て、試合に復帰したときの歓び、感動が忘れられません。
バレーができるって、幸せなことだとつくづく感じています。
そのためにも、ケガ、気をつけます!

今日は、ピンクにライトアップされた東京タワーを見て来ました。

hidechin さんのコメント...

陽さんへ

昨日が東京タワーのライトアップだったんですね。札幌のテレビ塔はもう終わってしまいましたがきれいでしたよ。ピンク色の東京タワーはテレビ塔より迫力がありそうですね!