2010年3月10日水曜日

乳がん患者さんたちがネットに情報を求める理由

このブログでもそうですが、mixiの乳がん関連のコミュニティに参加していると、本当にこの国の乳癌医療は患者さんにとって満足のいくレベルまで達していないのだなあといつも思います。

患者さんが書き込むコメントや直接私宛に届くメッセージの内容は様々です。例を挙げてみますと、

①主治医から受けた病理結果などの説明がわからない。聞きたいことがあっても聞ける雰囲気がない。
②主治医から勧められた治療内容や化学療法中の副作用などについて他の人(もしくは私)の意見を聞きたい。
③主治医から見捨てられたのでどうしていいかわからない。
④民間療法を知人から勧められた(もしくはしてみたい)がどうだろうか?
⑤家族が乳癌になったのでとても不安。どうサポートしてあげればいいんだろう…。

などなど。

本当は外来で担当医や看護師などがゆっくり時間を取ってあげれば、ほとんどは解決する内容なのです。

”忙しそうだから”、”聞くと嫌な顔をされる”、”聞きたくても聞けるような雰囲気ではない”などの理由で結局このようなネットの情報に頼らざるを得ないのです。

がんという”病気”を治療するレベルはそれほど欧米に負けていないかもしれませんが、患者さんという”病人”を診る医療レベルは低い国なのだとネットの情報に関わって初めて知りました(もちろん、こういう視点で患者さんのサポートを一生懸命にしてくれている病院もたくさんあります)。

ネットの情報を見ていて心配なのは、患者さん同士の情報交換内容が間違っていることがけっこう多いことと、患者さんの弱みにつけこんでくる悪徳業者が患者や患者の家族のふりをして入り込んでくるということです。

間違った内容にはコメントを書き込んだりメッセージにはすべてお答えするようにしていますが、私一人では限界があります。セカンドオピニオンに行くほどではないけど相談したい、という患者さんの要望にお応えするために、何か良いシステムづくりはできないか、いろいろ考えているところです。

6 件のコメント:

きみちゃん さんのコメント...

hidechin先生~おはようございます!
お久しぶりです^-^
なかなかこちらに立ち寄れないでいましてごめんなさい・・・(T-T)
でも先生はおかわりなく引き続き私達乳がん患者のために、とても為になる情報を更新していただいているので本当に嬉しい限りです!
心強い存在ですよ~~!

さて興味深い今回の記事の内容ですが・・

理由としてはー

乳がんは20人に一人が羅患されるといわれてるこの時代ですが、相談したくても、周りに乳がんを患った方を探し出すことは現状は困難ですから情報も得られない=ネットで情報収集する=これに尽きると思います。

世間に堂々と公表してる方もそうはいらっしゃらないですから・・
やっぱり公表すると、世間的地位が何かと具合悪くなってしまうから隠してる人もいらっしゃるだろうしそうすると余計に探しだせないですよね・・

当事者は誰に相談して情報を得ればいいかわからず不安ですからね・・

もちろん病院にかかって医師に診てもらって専門的な治療方針をたてていただくんでしょうが、そこで、他の乳がんと告知された人はどうしてるんだろうとか体験談の声を一番聞きたい!聞いて情報を得たいと思ってると思います。

やっぱり、患者にとって、先輩の体験者の声が一番信頼性がありますしね、こればっかりは乳がんという病気にならないとわからない当事者の患者の気持というものがあります。

もちろん病気を治療する上で、乳がんといっても一人一人症状違うので、治療の方針も違いますでしょうが・・

でもがん患者共通して言えることは、告知されてどのように辛い治療を克服されたのかとか、また提案されたその治療方法は本当に自分にとって納得いく治療方法なのかとか、そして、どのように気持の整理をつけて今まで生きてこられたのかとか・・
そういったことは残念ながら医師に聞いても医師の立場ではわからないことですしね。

病気を治す事以上に、患者はこういった様々な不安な要素を抱えてもっと情報を得たいと思いながら、辛い治療に挑んでるんだと思います。

でも、病気を治していくという専門の主治医に、精神面でのメンタルフォローまでを患者は治療時間の制約上、求められないし、医師も忙しくそこまでおいつかない現状なので、その点は一番残念なことだなといつも思います。

最近ではそういった医師ではフォローできない所を、大きな病院では診察室の隣に、乳がん体験者の方が、乳がん患者さんの相談にのってフォローしていただけるお部屋を設けて少しでも患者さんの不安を取り除いていただけるシステムを導入されてる病院も見受けられますよね。

相談にに乗るための人材を育成するための、認定乳がんコーディネーター要請講座を開いているNPO法人も結構あるようですしね。

こういったシステムをもっと強力にして病院とのネットワークを強化していきながら連携していくことができれば、どれほどのがん患者さんは救われることでしょう~と思います。

(私もいずれは将来的に、がんピアサポーター養成講座を受講して
患者さんをサポートするような立場になれたらいいなと思ってるんですよ~^-^)


診察室の前で待ってる間に、気軽に入れるようなそのようなお部屋で、ほんの10分でも相談に乗っていただいて、例えば、乳がん患者さんをサポートする患者会の存在があることの情報ひとつ頂ければ、そこからネットワークが広がり、自分に必要な情報も得ることができます。要は情報を得るきっかけさえ頂ければその先はかんり違ってくると思います。

病院の壁には掲示板でこういう情報を張って提供しているとは思いますが、「お問い合わせは受付までどうぞー」とだけあり、そういうことは自分が興味を見せて積極的にアクションしないかぎり、病院側もあえて勧めてこないのが現状ですしね・・

患者もいろいろ動揺することがあってそこまで目がいかなくて気が付かずに居てしまいがちですので、ドクターやナースから、一言、患者会の存在とかのことを、声かけてもらえるとまた全然ちがうのになとも思ったりします。

非常にもったいない事だと思います。

医師ではわからない患者ならではの不安な気持というものもありますのでとても心強いシステムだと思うんですけどね。

こういったシステムがもっともっと全国各地に広がればそこからいろんな情報ネットワークも広がるし、乳がん患者さんも安心して治療に望めるんではないでしょうか。

やはり医師不足の世の中、がん患者の人口はどんどん増えていく・・・・この厳しい現実を打破するには、医療の現場、医師にたよるだけではもう限界があると思いますので、患者自信も、世間にこの現状を訴え働きかける必要があると思います。
周りの支えになっていただける方々のご支援があってこそ成り立つものですので・・
誰にも相談できずにいて不安な気持ですごしてる患者さんが一人でも少なくなる世の中になっていって欲しいと心より願います。

長くなりました<(_ _)>
今回はいつも思っていることでしたので、いっぱいコメントしてしまいました~

hidechin さんのコメント...

>きみちゃんさん
おっしゃる通り患者さん同士の情報交換は、私たち医療従事者にはわからないこともありますので重要なことですよね。

がんサロンや患者会での交流は、特に初期治療段階の患者さんたちにとっては心強いことだと思います。

ただ、私がネットでの情報交換を危惧しているのには理由があるのです。

上に述べたがんサロンや患者会というのは、医療従事者がなんらかの形で関わっており、正しい情報提供ができる環境です(もちろん、細かく見ると不確実な情報も行き交っているとは思いますが、疑問があればすぐに修正可能です)。

しかし、mixiなどのサイトを見ていると、患者さんからの情報が間違っていることが多いのがとても気になります。医師からの説明が不十分なことも原因の一つだと思いますが、ご自身の経験が全ての患者さんに当てはまると勘違いされているため、逆に不安をあおる結果になってしまったりしています。

例を挙げると、
①早期なのに乳房全摘されるのはおかしい。早期なら温存できないはずはない。
②ホルモン剤は副作用が強いから長期にわたってつらい思いをする。
などです。

また、患者さんになりすまして悪徳業者があやしげな民間療法に誘導しようとするのもとても気になります。ネット内で同調者がコメントを書き込むと、まるでそれがすべて正しいかのような誤解をまねく恐れがあり、正しい治療を受ける機会を奪ってしまいます。

幸い、mixiの患者さんたちの中でも監視の目が行き届いているのでほとんどの方は大丈夫だと思いますが、つらい治療は嫌だな、と思っている方はかっこうのターゲットにされてしまうのではないかと心配です。

どんな情報も鵜呑みにしないで熟考する姿勢が大切だと思います。

きみちゃんさんがおっしゃる通り、患者さんと医療従事者がもっと気軽に簡単に情報交換できるようなシステム作りが必要ですよね。私の勤務する病院では、新病院建設にあたり、そのあたりにも十分に気を配るように現在検討中です。

きみちゃん さんのコメント...

hidechin先生が危惧されるお気持コメント拝見してよくわかしました。

>医師からの説明が不十分なことも原因の一つだと思いますが、ご自身の経験が全ての患者さんに当てはまると勘違いされているため、逆に不安をあおる結果になってしまったりしています。

思い込みや勘違い・・・
なるほど、そうですね

>早期なのに全摘はおかしい・・

悪意はなくふっとそう思ってしまって安易な気持でコメントされてしまったが為にそれを読んだあまりまだ知識のない患者さんであるなら不安に思ってしまう・・そういうことですね

同じ乳がんと診断されても、標準治療のガイドラインはあるものの、誰一人として同じ人はいない・・人によって症状は違うわけだし治療方法も違いますものね。

要はその辺の客観的な判断でそのコメントを読み手がどうとらえるかってことですよねえ。。

反対に、早期ではあっても乳房内でがんがちらばっていれば、全摘の場合もありうるという貴重な症例をコミュニティー内で紹介してもらえたことに、こんなパターンもあるんだという意識を植え付けてもらえた・・そういうことに意義があると思いますが。

ですからミクシーという公のネットワーク上でコメントする以上は、責任あるコメントを求められるべきであると私も思います。

明らかに悪意のみちた悪徳業者がからんでるとわかれば警戒しますが、まだ右も左もわからない知識のない患者さん、またはご家族の方では情報の真意の判断はできにくい場合もあるでしょうしね。

ただミクシーに関していえば、コミュニティーには管理人が居るわけですから・・
あきらかに悪意に満ちた、まちがったコメントや不安の元になるようなコメントなどがあった時などは、しっかり管理人がフォローすべきことであるとも思います・・

hidechin先生ほどの専門的な知識までは、求めるこつはできませんが、そのための管理人でありますからね。

この手の問題はなかなか解決にむすびつかず長くかかる事ではありますよね・・地道にコメントしていくしかないんでしょうかね。。

でも、先生も何かと気苦労があおりで大変かと思いますが、先生のようなお立場の専門家がいらっしゃって適格で正確な情報を提供いただけコメントしていただける事は、何より患者にとって心強い存在であるのは確かです。

無理だけはなさらず、ご自信のペースをお守りいただいて、私達患者を見守っていただけると本当にありがたいです^^

hidechin さんのコメント...

>きみちゃんさん
患者さん同士のコミュニティに医師である私が口をはさむのは最小限にしようとは思っているのですが、必要に応じてこれからもコメントを入れたいと思っています。でもできることなら患者さんの間で解決するほうが良いですよね。

ぶいもりた さんのコメント...

hidechin先生 御机下

こちらでははじめまして。mixiでお世話になっておりますぶいもりたと申します。
7年前に皮下乳腺全摘+同時再建術を受け、現在は乳がんを忘れて過ごしています。

コミュニティなどでの患者の皆さんの発言からは、ネットに情報を求めていると同時に、患者は誰かに自分の経験を話したいのではないかと強く感じます。他人が滅多にしていない珍しい経験を話したい、自分が辛かったことを聞いて欲しい、そして何より自分の経験を誰かの役に立たせたい、といった様々な思いが伺えます。そういった気持ちを表現する機会は実生活でとても少ないと思います。

私自身もWebで乳がん日記を公開していますが、メールを下さる方の中には、体験談はあくまでn=1であって統計的には何の意味も持たないことをなかなか理解して戴けない方もあり、一時はサイト閉鎖を考えました。一方で「がんというイメージに必要以上に苦しまないで」「がんを正しく怖がってほしい」というメッセージを多くの人に聞いてほしいという欲求もあります。

科学の基本中の基本、自分の経験が一般に外挿できるという考えは(こと医療の分野に関しては)危険であるという認識を持てば、コミュニティなどでの安易なアドバイスは減ると思うのですが、それは誰からどのように得るのか、ついに患者教育のようなものまで必要になってきたのか、むしろそれは家庭教育の中にあるべきではないか、などさまざまに考えています。

取り敢えず今の私に出来ることは、コミュニティにインチキがやってきたら笑ってやるくらいのことでしょうか。

今後とも記事/コメントを楽しみにしております。

hidechin さんのコメント...

>ぷいもりたさん
こんばんは。コメントありがとうございます。
ほとんどの患者さんは悪意はなくご自分の経験を書き込まれているのだと思います。そしてそれが書き込んだ方にとっても経験談を聞いた方にとっても有益であることが実際には多いのだと思います。
ただ、私自身がよく経験するように、医師の説明が正しく理解されていないことがよくあるのです。これはほとんどが説明する側に責任があるのだと思いますが、紙に書いてご説明した内容も忘れていたり間違って解釈されていることもあります。ゆっくりわかりやすい説明をしなければだめだといつも反省させられます。
ネットでの情報交換は顔が見えません。そして医師が患者さんに直接話をする以上に一方通行の伝達になりやすいと思います。また不特定多数の人が見ているため、受け取り方も様々でしょう。
ですからこういうネットでの情報交換は参考程度にとどめて、疑問に関してはやはり直接担当医に確認することをお勧めするのがネットでの情報交換の責任あるあり方だと思っています。
mixiにおけるぷいもりたさんの存在は貴重だと思います。これからもぷいもりたさんの冷静なコメントを期待しています。