2010年3月16日火曜日

乳癌術後早期理学療法のリンパ浮腫予防に対する有用性

乳癌術後に理学療法を行なうことは、かなり昔から行なわれてきました。その効果を支持する報告はありましたが、施設によって方法は様々でした。また、昨今の縮小手術(乳房温存術、センチネルリンパ節生検など)の普及と医療費節減政策に基づく在院期間の短縮により、十分なリハビリを行なわずに退院するケースも増えています。

今回、 乳癌術後の早期理学療法はリンパ浮腫の予防に有効であるという報告が、British Medical Journalオンライン版に掲載されました。

対象および方法:
乳癌術後の120名を対象とし、腋窩リンパ節郭清をともなう片側乳癌手術から3日~5日後に、患者は理学療法早期介入群または対照群のいずれかに割付けた。介入群では3週間にわたり、週3回の腫瘍専門の理学療法士による用手的リンパドレナージ、瘢痕組織のマッサージ、および肩関節周囲筋のストレッチングを受けた。
また、両群の被験者に、リンパ浮腫の原因と症状に関する教育プログラムを実施し、資料も配布した。

結果:
1年後の二次性リンパ浮腫発症率→対照群 25%、理学療法介入群 7%(p=0.01、リスク比0.28)。
上肢径の左右差→対照群 平均5.1%増加、介入群 平均1.6%増加。
リンパ浮腫の発症→対照群では早期理学療法群と比較して、4倍早かった。

結論:
「用手的リンパドレナージ、理学療法による肩の運動、および指導などの手術後の介入は、乳癌術後少なくとも1年間はリンパ浮腫の発症を防止する可能性がある」

考察:
二次性リンパ浮腫は患者のQOLにマイナスの影響を及ぼす慢性症状である。さらなる研究をおこない、乳がん手術後の早期理学療法が二次性リンパ浮腫の長期にわたる予防に対して、有効であり続けられるかどうかを解明する必要がある。


最近では乳癌は日帰りで手術を行なうこともあります。腋窩リンパ節郭清を行なってもドレーンが抜けたらすぐ退院になることが多いと思います。実際はセンチネルリンパ節生検では、リンパ浮腫の発症はまれです。全例に同じリハビリが必要かどうかは不明です。しかし、腋窩リンパ節郭清を受けた患者さんは、やはりきちんとした理学療法を受けた方が良いのかもしれませんね。

8 件のコメント:

itomaki さんのコメント...

本来であれば、手術を行う前から始めたほうが当然ながら効果は上がると考えています。
しかし、手術を受ける前のメンタル的な衝撃を受けている時から「こんな風になる」なんて見せつけられるのはどうか?と反対を唱える方もいます。
結果はわかっていても、治療を受ける立場になったときに「何が良い方法なのか」一緒に考えていけるといいと思うのですが、まだまだですね。

hidechin さんのコメント...

>itomakiさん
それでなくても手術で頭がいっぱいのときにあれこれ言われても混乱する人もいるかもしれませんね。
うちの病院では、以前は術前の可動域の測定と簡単なオリエンテーションをしていましたが、最近は諸事情でやらなくなってしまいました。
退院後に肩の痛みや可動域制限を訴える方がたまにいますので、やはり早期のリハビリの指導は必要だと思います。

匿名 さんのコメント...

こんにちは
6月30日に全摘手術、リンパ郭清をうけました。
術後1ヶ月以上経ちますが、まだ排液が治まらずに外来で抜いてもらっています。
切除した範囲がとても大きかったからとの説明を受けましたが、あまりにも続くためとても不安になりました。
7月26日に抜き、7月30日には、600cc抜きました。
1週間後の明日、外来ですが、また胸と脇にたまってきました。
このままだと化学療法にすすめないのでしょうか。
排液が異常に多い理由は、何かありますか。
お答をいただけるとうれしいです。

匿名 さんのコメント...

先程 排液のご相談をしました。
前回の排液の量を600ccと書きましたが
260ccの間違いです。
ごめんなさい。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
リンパ液の量が多いのですね。心配されるお気持ちはよく理解できます。ただ通常、いつか必ずおさまるものですので、何か悪いことが起きているのではないかと考える必要はありません。

リンパ液が多い原因としては、
①リンパ節郭清範囲が広かった
②肥満
などが考えられます。
化学療法はリンパ液を抜きながら平行してできないわけではありません。ただ以下の点に少し注意が必要です。
①創傷治癒を遅らせる可能性があること
②白血球が低下している時期に穿刺排液を繰り返すことによって創部感染を併発しやすくなる可能性は否定できないこと
③抗がん剤が貯留液に蓄積し、骨髄抑制などの副作用が遷延する可能性があること(穿刺排液すれば問題ありません)

以上です。いずれにしても、あるとき急にリンパ液の貯留がおさまってしまうことが多いです。匿名さんももう少しではないでしょうか?
それではお大事に!

takako さんのコメント...

排液のことで匿名で書き込みしました
たかママと申します。
夏休み中なのにお返事を頂いて本当にありがとうございます。
いつか治まると信じてあせらずに待ちます。
主治医の先生は、信頼していますが、とても慎重で気を使われているのがわかり、なんでも聞けそうで聞けないのです。
排液のこともリンパ郭清範囲が広すぎたのではと感じていらっしゃるようです…。
(レベルⅢまでしました。)
肥満のことも否定されていましたし。
気を使わせている私に問題があるのかもしれませんね。ちょっと寂しいです。

hidechin さんのコメント...

>たかママさん
何でも遠慮しないで聞いた方が良いですよ。遠慮していると医師としてはどう思っているのかわからずに対応に困ることもあるのです。
今後長いおつきあいになるのですから、きちんとコミュニケーションを取れる関係を築くことをお勧めします。
それでは早くリンパ液が少なくなることをお祈りしています。お大事に!

takako さんのコメント...

ありがとうございます
そうですね。きちんと気持ちを伝えないと先生も言いようがないのかもしれないですね。
明日は、いろいろ質問してみようと思います。