2010年4月22日木曜日

漢方治療〜少しずつ始めました




先日来、漢方に目覚めてしまった私は、昭和40年代の漢方の古書を2冊と同僚から借りた(買い取る予定)患者さん向けの「最新 漢方実用全書」、そしてコーチャンフォーで見つけた「健康保険が使える 漢方薬の選び方・使い方」の合計4冊を読みあさっていました。なかなか奥が深くて、理解するまでには到底及びませんが、ちょっとだけ漢方の基本知識がわかりかけた状態までたどりつきました。

そして今日の乳腺外来、写真にある2冊の本を机の片隅に置いて診察に臨みました。

基本はあくまでも標準治療です。標準的な診察所見や検査で器質的な疾患がない場合や標準治療が困難な症例のみに漢方を検討するつもりでした。漢方薬にも副作用があり、証が合わない場合には無効であるばかりではなく、肝機能障害や下痢、むくみなどの有害反応をきたすことがありますので、私のような専門医でもない医師は、特に慎重に投与しなければならないと思ったからです。

今日の午後からの乳腺外来の予約は30人。そのうち乳癌術後の定期検査の患者さん2人に漢方薬を処方しました。2人とも術後5年以上経過し、再発所見はなく、順調に経過している患者さんです。

1人目は、不眠(入眠障害)の患者さんでした。症状をよくお聞きすると、いらいらしやすく、のぼせる感じがある、首の後ろが暑い、胃腸は丈夫で便秘や下痢はない、比較的体力もあるとのこと。けっこう精神症状が強そうなので抑肝散という薬にしようかと思ったのですが、当院の内規で「患者限定薬」になっていたため、更年期障害でよく用いる加味逍遥散という薬を処方してみました。

2人目は、咽頭のつまり感が非常に強い患者さんでした。この間、この症状が不安で耳鼻科を受診し精査しましたが異常はなく、胃カメラでも食道に器質的な病変は認めないことがわかったにも関わらず、症状が取れないということでした。今日のCTでも異常がなかったため、典型的な「咽喉頭異常感症」(通称ヒステリー球 咽喉頭神経症などとも呼ばれる)と診断しました。このような病態は古代中国の時代から存在しており、「梅核気」(ばいかくき)、「咽中炙臠」(いんちゅうしゃれん)と呼ばれていたそうです。

こういう症状を訴える患者さんは私の外来では非常に多いのです(若い人にもみられますが中年女性に多いため)。不安が強い人、神経質な人、ストレスが多い人によく見られ、他の不定愁訴を伴っている場合も多いようです。検査で異常がないことを確認した上でこの病気について十分にご説明し、原因となっていることが解決すれば自然に良くなることも多いのですが、症状が強い場合には精神安定剤が有効です。

この患者さんは日中眠くなる可能性のある精神安定剤の服用を希望しなかったため、この病態によく用いられる、半夏厚朴湯という薬を処方しました。遠方の方のため、処方の継続は近医にお願いしましたが、きっと効果があると思います。なにせ中国で2000年にわたって効果があると認められてきた薬剤ですから…。

漢方は勉強すればするほど面白いです。もちろん癌自体の治療に使用する気はありませんが、治療の副作用や手術の後遺症、女性特有の更年期障害や不定愁訴などには、とても有効ではないかと考えています。もっと勉強して、患者さんの苦痛を癒せるようになりたいと思っています。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

初めまして。術後治療にノルバデックスを服用して3年ほどになります。副作用からか、不安感、胃痛、腹部不快感があり、色々漢方薬を試しました。その中で半夏厚朴湯がいいようで、今一日一包程度服用しています。効果が高い分ノルバデックスとの飲み合わせが心配になりましたが、先生はどのようにお考えでしょうか。
また、色々試してきて今更なのですが、ノルバデックスとの併用は止めておいた方がいい漢方薬はありますか。
お忙しいところ恐縮ですが教えてください。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
初めまして。
漢方薬と西洋薬の相互作用に関しては十分なデータがないためかあまり問題にされることはありません。ただし漢方薬同士の場合は成分が重なることがよくありますので注意は必要です。少なくともノルバデックスの添付文書上には半夏厚朴湯を含めた漢方薬との薬物相互作用の記載はありませんのでまず問題ないと思います。私の患者さんの中にも併用した方はいらっしゃいますが特に問題はありませんでした。
以上です。

匿名 さんのコメント...

お忙しいところご回答ありがとうございました。