2010年10月27日水曜日

臨床試験結果の透明性について

がん領域において、世界中で新薬や新しい薬剤の組み合わせなどの治療法の臨床試験(治験)が行なわれています。私は治験に直接関わったこともなく不勉強のため、詳しくは知りませんので、認識が間違っていたらすみません。ちょっと思うことがあったので書きます。

私自身、臨床医としては、患者さんにプラスになる新しい治療が生まれることを心から期待しています。もちろん傍観者としてではなく、本来は自分も治験に関わらなくてはいけないと思っていますが、なかなかハードルは高いです。

ただ、期待した結果が得られないと治験の途中で判明した場合、今の時代では第三者機関が治験の中止を勧告するようになってきています。米国ではFDAなどがその役割を担っているようです(全てかどうかは知りませんが…)。国内でも途中で中止になったケースは今までもありました。

先日、ある乳がん患者さんから連絡を受けました。この患者さんは、ある術後補助療法の治験に参加していて、以前から相談を受けていた方でした。そのお話によると、比較対象の群が明らかに不利益があるとわかったので治験が中止になったと担当医から説明を受けたというものでした。

この治験は以前から私はとても注目していたものでした。そして好ましい結果が出ると信じていた治験であり、実際今まで報告されていた内容では十分にその結果が期待されるものだったのです。しかし、治験の結果は新しい治療法のほうが従来の治療法より明らかに劣るということだったので、事実関係を確かめるために、当該薬の製薬メーカーの担当者に問い合わせをしてみました。

しかしその返答は、”治験の結果は製薬会社側からは公表できない。治験を担当した医師から聞いて下さい”というものでした。日本中、世界中が注目し、期待していた治験です。実際、保険外診療などでこの治療を行なっている(当然効果を期待して)患者さんもいるのです。良い結果は公表するけど、中止になった理由は公表しないという姿勢には疑問を感じます。治験中の患者さんにはご説明しているのですから、公表しても良いのではないかと私には思えるのですが…。もちろん、製薬会社にとって不利益になる結果は隠したくなるのもわかりますが、なぜ期待できるはずの結果が得られなかったのか?という理由は、臨床医にとってとても重要な情報なのです。

治験については、どんなことを行なっているのかはネットで検索すると知ることができます。新しい治療を期待している患者さん、医療従事者のためにも、良い結果だけではなく、期待した結果が得られなかったという事実も公表するような透明性が必要ではないかと強く感じました。

今回の治験がどんな治験なのか、その内容をここでお話できないのは残念です。内容を書くとどこのどんな治験かがわかってしまうからです…。
とてもじれったいです!
なんとも言えない怒りを感じています!

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