2011年2月8日火曜日

代替補完療法9 漢方薬2〜霊芝

霊芝は一般的にマンネンタケ科の万年茸(マンネンタケ)を指し、その有効成分であるβ-D-グルカンなどの多糖類や、ガノデリン酸などの卜リテルペン類が細胞レベルの基礎実験や動物実験において、免疫賦活作用や抗腫瘍作用があったとされています。このようなデータをもとに、人体においても抗がん作用があるかのように宣伝している場合があります。しかし人体に対する効果は調べた限りでは質の高い報告はなく、まだ十分には証明されていません。

乳がん領域においても基礎研究では様々な作用が報告されています。その一つはInt J Oncol. 29(3): 695-703 2006に掲載されている”Ganoderma lucidum inhibits proliferation of human breast cancer cells by down-regulation of estrogen receptor and NF-kappaB signaling.(霊芝はエストロゲン受容体の発現量の低下とNF-κBシグナル伝達を介して乳がん細胞の増殖を抑える)”という報告です(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16865287)。なかなか興味深い内容ですが、エストロゲン受容体が減少した場合にはホルモン療法の効果はどうなるのだろうという疑問があります。

また第61回日本癌学会総会において、”マウスの同系腫瘍MM46乳癌に対する鹿角霊芝含有飼料の制癌作用(サントリーと帝京大学の共同研究)”という研究報告が発表されています(http://www.suntory.co.jp/news/2002/8273.html)。鹿角霊芝含有飼料を食べたマウスの乳がん重量が対照マウスに比べて有意に抑制され、抗がん剤(シクロフォスファミド)との併用においても増強効果があったという報告です。

いずれも人体での研究ではありませんので、現在のところ主たる治療としての効果は期待できません。

また、ある培養細胞を用いた実験で抗腫瘍効果があったという報告によると、その際に使用した霊芝エキスは1mg/mlというような非常に高い濃度だったということですので、そのまま人体に当てはめることは困難です。このあたりの詳細は、下記のブログにわかりやすく記載してあります。


『「漢方がん治療」を考える〜霊芝は本当にがんに効くのか?』(http://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic/e/c97e549ef59c0c5463047ea733521336)

この中で銀座東京クリニック院長の福田一典先生は、
”霊芝の成分が、人が服用して、本当に抗がん作用を発揮するのかまだ十分な根拠はありません”
と結論づけています。

何度も書いていますが、患者さんが希望した場合、標準治療をきちんと受けた上で、有害でさえばければ私はこれらの代替補完療法の併用は拒否はしていません。しかし、標準治療の代わりとして、霊芝を選択するにはあまりにも臨床研究データが乏しすぎます。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

いつもブログを拝見させていただいています。
質問なのですが、便秘で困っています。お薬だと下痢になってしまうと聞きました。
何かよい漢方はありますか?

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
初めまして。
申し訳ありませんが、私は漢方の専門家ではありませんし、便秘に対して通常ほとんど漢方は処方しません。また漢方は本来体質などを見極めて処方するものです。診察もせずネットの問い合わせでお勧めできるものではないのです。ご理解いただければ幸いです。
もし漢方をご希望でしたら、漢方に詳しい内科医にご相談願います。