2011年2月10日木曜日

ゾメタと下顎骨壊死2

先日製薬会社の方が「ビスフォスフォネート関連顎骨壊死に対するポジションペーパー」という文献を持ってきてくれました。これは「ビスフォスフォネート関連顎骨壊死検討委員会」から出されたものです。前回このタイトルで書いてから時間がたったこともあり、最近の知見を追加します。若干変更になった点もあります。

ビスフォスフォネート(BP)は乳腺領域では骨転移の治療に用いるゾメタが代表的です。以前はアレディアという薬剤も使用していました。他に骨粗鬆症の治療薬として用いるボナロンやダイドロネルもBPの仲間です。BP関連顎骨壊死(BRONJ)は解剖学的性質から上額骨より下額骨に生じやすいと言われています。

<診断基準>
1.現在あるいは過去にBP製剤(ゾメタなど)による治療歴がある。
2.額骨への放射線治療歴がない。
3.口腔・額・顔面領域に骨露出や骨壊死が8週間以上持続している。

<BRONJの臨床症状>
・骨露出/骨壊死
・疼痛・腫脹
・オトガイ部の知覚異常(Vincent症状)
・排膿
・潰瘍
・口腔内瘻孔や皮膚瘻孔
・歯の動揺
・深い歯周ポケット
・X線写真:無変化〜骨融解像や骨硬化像

<BRONJのリスクファクター>
・製剤によるファクター:窒素含有>窒素非含有、注射製剤>経口製剤→ともにゾメタはリスク大
・局所的ファクター:骨への侵襲的な歯科治療(抜歯など)、口腔衛生状態不良、歯周病などの基礎疾患
・全身的ファクター:がん、高齢者、透析患者、貧血、糖尿病、肥満、骨パジェット病
・先天的ファクター
・その他のファクター:薬物(ステロイド、シクロフォスファミドなど)、喫煙、飲酒

問題はBPを投与している患者さんが歯科治療が必要になった場合にどうするかです。以前ここで書いたのは”休薬が可能な状態であれば、抜歯の3ヶ月前から抜歯後2ヶ月までゾメタを休薬する”というものでした。しかし今回の文献では、ゾメタなどの注射性BPにおいては原則として休薬しないということになっています。その理由は、BP製剤の休薬がBRONJの発生を予防するという明らかな臨床的エビデンスがないからということになっています。おそらく注射製剤を使用する患者さんは、骨転移のために投与しているはずですから、休薬することのデメリットのほうが上回るという判断なのでしょう。

<BRONJの治療指針>
・骨壊死の進行を抑える。
・疼痛や知覚異常の緩和や感染防御により、患者さんのQOL(生活の質)を維持する。
・患者さんの教育、経過観察を行ない、口腔内清掃を徹底する。

治療の内容は、病状の進行度によって異なります。詳細は省きますが、抗菌性洗口剤の使用、瘻孔や歯周ポケットの洗浄、抗菌薬の塗布や注入、抗菌薬の内服や静注、壊死骨の掻爬・切除などを行ないます。

今後はさらに症例を積み重ねて、新たな予防・治療指針ができると思います。とりあえず自分でできることは、骨転移がない患者さんでも普段から歯科治療はきちんと受けておくこと、ゾメタを使用している患者さんは、できるだけ口腔内を清潔に保つことだと思います。

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