2011年2月9日水曜日

造影マンモグラフィ(Contrast Enhanced Spectral Mammography(CESM)

昨年の第18回日本乳癌学会学術総会のランチョンセミナーでも報告がありましたが、日本人のように乳腺濃度が高い場合にも有効な新しい技術を用いたマンモグラフィが国内でも提供が開始されました(GEヘルスケア・ジャパン)。

この装置は、乳房内の血管を鮮明に描出できるデジタルマンモグラフィ用撮影技術「セノブライト」です。日本人をはじめとするアジア人や、若い女性に多い乳腺密度の高い乳房でも病変を鮮明に描出できます。GE製のマンモグラフのオプションとして、初年度に国内で20台の販売を計画しているとのことです。

この技術は造影剤と2つの異なるエネルギー値での撮影によって、乳がんにともなう新生血管を映し出すものです。
撮影方法は、撮影前にヨード造影剤を静脈注入した後、低電圧と高電圧の2回に分けて、通常の撮影ポジションで左右両方の乳房をそれぞれ2方向から撮影します。計5分間で,左右各2方向の乳房画像4セットを1セットとして撮影しますし、適切なフィルター設計によって,被爆線量は通常の乳房撮影の1.2倍以下に抑えられており,乳がん検診における国際的なガイドラインを下回っているとのことです。

以前からマンモグラフィに造影剤を併用する方法は検討されてきました。しかし従来の時間差分法(造影後の画像から造影前の画像を引く)を用いたデジタルマンモグラフィによる造影手法(Contrast Enhanced Digital Mammography(CEDM))では、圧迫時間が長く、かつ1回の造影で1枚のフィルムしか撮影できない難点がありました。しかし今回のCESMの手法では1回の造影ですみ、撮影時間も短く、被爆も許容範囲内ですので期待できる検査法だと思います。

CESMは若年者や乳腺症のある患者さんに対しては有効な検診手段になりそうです。問題は、価格が3000万円と高価であること、ヨード系の造影剤を使用するためアレルギー患者には使用できないこと、撮影前に造影剤を注入する手間がかかることです。国内でのデータを集積した報告を待ちたいと思います。

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