以前に「乳癌の治療最新情報23 HER2陽性乳がんに対する新たな補助療法」(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2010/12/23her2.html)(第33回サンアントニオ乳癌シンポジウムで発表された術前化学療法の成績)でも少し触れましたが、乳がんに対する新たな分子標的薬が近い将来、使用可能になりそうです。
今回の第34回サンアントニオ乳癌シンポジウムで発表されたのは、新規分子標的薬ペルツズマブ(pertuzumab)の再発乳がんに対する第3相臨床試験(国際共同試験)の結果です。
ペルツズマブはHER二量体化阻害ヒト化モノクローナル抗体と言われる分子標的薬です。ペルツズマブはトラスツズマブとは異なる部位に結合して異なる機序でHER2からの増殖シグナルを抑えますのでトラスツズマブの作用を補足・増強すると予測されています。この臨床試験はCLEOPATRA (CLinical Evaluation Of Pertuzumab And TRAstuzumab)と呼ばれ、日本を含む世界19カ国で、未治療のHER2陽性転移性乳がん患者808人が登録されていました。
この結果によるとトラスツズマブ(商品名 ハーセプチン)+ドセタキセル+ペルツズマブ群は、ハーセプチン+トラスツズマブ+プラセボ群に比べると主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を約6カ月(中間値 18.5ヶ月 vs 12.4ヶ月)延長したそうです。全生存期間(OS)の最終解析はまだですがペルツズマブ群で今のところ良好な傾向があります。有害事象では、下痢、ほてり、粘膜炎症、発熱性好中球減少、ドライスキンがペルツズマブ群でやや多い傾向を認めました。ペルツズマブ併用群での心毒性の増加はみられませんでした。
この結果をもって欧米ではHER2陽性転移性乳がんの適応症でペルツズマブを承認申請しました。日本も参加した臨床試験ということですので、近いうちに国内でも中外製薬が承認申請をするのではないかと思われます。問題はやはり高額な医療費にあります。分子標的薬を2つも使用しますので自己負担額は相当高額になると思いますが、それに見合った効果が得られるのではないかと期待しています。
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