乳癌が心配だけど、どこに受診したらいいかわからない、乳癌になってしまって不安…、再発したからもうだめかもしれない…。そんな不安や悩みに少しでもお役に立てればと思って始めてみました。 (*投稿内容と無関係なコメント、病状のご相談はご遠慮願います*)
2012年1月29日日曜日
15th Breast Cancer UP-TO-DATE Meeting
昨日、パシフィコ横浜で日本化薬主催の第15回 Breast Cancer UP-TO-DATE Meetingが行なわれました(14:00-18:00)。このMeetingは年1回行われており、今までも何度か参加させていただいています。昨日9:30千歳発の便で東京に向かい、今朝9:30羽田発の便で札幌に戻ってきました。
内容の概略は以下の通りですがちょっと専門的な話になります。
SessionⅠ: 「pCRを検証する」
①乳癌術前化学療法におけるpCRの判定の重要性と問題点(黒住昌史先生)
pCR(病理学的完全寛解)の定義から術前化学療法の臨床試験(NSABP B-18、B-27)におけるpCRと予後との関連などの基礎と臨床についてわかりやすく解説して下さいました。near pCR(組織学的効果がgrade2b)でもpCRに近い予後が得られること、MD Anderson Cancer CenterのHPに残存腫瘍量から予後を推定できるツールがあることなどについてもお話しして下さいました。
②pCRは予後を予測できるのか?〜intrinsic subtype別のpCRと予後の関連のエビデンス(高橋将人先生)
subtype別のpCRと予後についてのお話でした。個人的にはpCRの予測計算をするNomogram(ER、PgR、Ki-67、化学療法のサイクル数からpCR率を予測計算する)が興味深かったです。
SessionⅡ: 「分子標的治療〜時空を越えて〜」
3人のパネリストによるミニレクチャーを交えたパネルディスカッションでした。
遠山達也先生からは、原発巣と再発巣のHER2の変化が何故起きるのかということに関してのレクチャーでした。HER2の判定は病理医の経験によってかなり変わってしまうこと(各施設のローカル判定と中央判定では免疫染色法で20%、FISH法でも12%の不一致が生じる)や同じ腫瘍内で性質が違う腫瘍細胞が不均一に混在している場合にはサンプリングエラーが起きうること、仮に中央判定で95%の精度で診断したとしても、計算上は原発巣と再発巣で9.5%の不一致が生じるという非常に興味深いお話が聞けました。またそれを踏まえて再発巣を切除してホルモンレセプターやHER2を確認する意義があるのかというと討論では、検索することによって患者さんにメリットがあると考えられる場合には組織検査をするべきであるという意見でした。その際に、患者さんから分子標的治療の機会を奪わないことが大切だという意見でパネリストは共通していました。つまり原発巣、再発巣のどちらかがHER2陽性なら抗HER2療法は継続すべきということです。ホルモンレセプターの場合もそうですが、この辺りは効果と経済的負担を考えると微妙なところですが、他の隠れた転移部位の性質はわからないのでやはり継続した方が望ましいのでしょうね。HER2の検査を行なうに当たっては、①再発巣だけでなく原発巣も同時に再度判定する(同じ病理医による同じ判定基準で) ②可能であれば免疫染色法とFISH法の両方で判定する、というお話が勉強になりました。
佐治重衝先生からは新しい分子標的薬と今後の見通しについて、臨床試験の結果を踏まえて解説していただきました。時間が短かったため、かなり駆け足での説明でしたからメモも十分に取れなくて残念でした。今度もっとゆっくり解説していただきたいです。
徳永えり子先生からはHER2のsignal pathwayと薬剤耐性についての解説でした。最近では”oncogene addiction(遺伝子中毒…ある特定の遺伝子にがんの増殖が大きく依存している)”という考え方から”network addiction(特定の遺伝子だけでなくそれに関わる様々なnetworkにがんの増殖が依存している)”という考え方にシフトしてきているということでした。つまりハーセプチンが効果を発揮しても別の経路を介して増殖を促してしまうから、周囲の経路ごとブロックしてやろうという考え方です。とりあえず近いうちに使用可能になりそうな薬剤としては、ハーセプチンとは作用機序が違うHER二量体化阻害剤のPertuzumabがあります。ハーセプチンとのdual blockageに期待が持てそうですが、がんの耐性化というのはかなり複雑ですので新薬が開発されてもいたちごっこのようになりつつあって研究者の頭を悩ませているようです。
SessionⅢ: 「骨転移治療:問題点から今後を探る」
4人の先生による様々な角度からの骨転移診断と治療に関するお話でした。ストロンチウムについては、約7割に有効という全田貞幹先生の報告と5割以上が無効という菰池佳史先生の報告が少し対症的でした。このような差が出たのは、対象症例の背景の違い(治療歴など)やゾメタなどの他の治療の併用の有無の影響なのかもしれません。
昨日の朝、羽田に向かう途中から咳が出てきました。このMeetingが終わる頃には喉の痛みと倦怠感、関節痛、寒気が出てきて徐々に体調が悪化しています(泣)明日の仕事がちょっと心配です。もうそろそろ体力の限界なので今日は早く休みます!
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4 件のコメント:
はじめまして 乳がん検診に携わっている技師です。体調はいかがですか?
教えていただきたいことがあり投稿いたしました。今働いている職場の放射線科医から宿題を出され困っています。その宿題というのが
1.マンモトームで3mmの悪性部位を完全に切り取れた場合opeをせず放射線治療で可能なのか?
2.ope後放射線治療 or ope後ホルモン療法のみ 二つのケースは何を基準に決めているのか?
私の答えは
1.マンモトームのみでRTをしたケースは見たことがなく、マンモトームは組織診断の一つだから完全に組織が取れたとは判断できない
2.温存療法はRT前提でのope 断片陰性でも完全に取り切れたかは断定できないので再発を考えるとRTは必要 ホルモン療法のみでは再発率はRTよりは高い
RTとホルモン療法のみの使い分けはわかりません
と答えました。これでは納得いってくれませんでした。
体調が回復してからでかまいませんので先生のお考え聞かせてください。
よろしくお願いします。
>匿名さん
はじめまして。風邪はなかなかすっきりしません(泣)
え〜…ご質問についてなんですが…。申し訳ありませんが、このブログは医療関係者の教育の場ではないのです。もし匿名さんがご自身で疑問に思われてお聞きになりたいのであれば可能な限りお答えするのですが、今回のお話は職場の放射線科のDrからの問題なわけですよね?つまりその放射線科Drに聞けば答えを知ることはできるわけです。そのかわりに私が答えをお答えしてしまうというのは、ちょっとまずいような気がするのです。ですからすみませんが、正解を得るまで調べて(答えを聞くのではなく)ご自身で考えてみて下さい。それでもどうしてもわからなければそのDrにいろいろ調べたけどわからないので教えて下さいと言ってみてはいかがですか?なにか意地悪をしているみたいで大変申し訳ないのですがご理解いただければ幸いです。
*ちなみに質問1は、質問の前提が間違っているのではないかと私は思います。質問2は質問の主旨が実はよくわかりません。乳房温存術の話なのか乳房全摘を含めた全体の話なのかで答えが変わるのではないかと思います。
大変申し訳ありませんでした。
失礼しました。
ブログはこれからも拝見させて頂きますね。
ありがとうございました。
>匿名さん
お役に立てなくてすみません。ご理解いただけてよかったです。これからもよろしくお願いいたします。
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