2009年9月11日金曜日

予後調査と中断チェック

いま空き時間を利用して、乳癌術後の患者さんの予後調査をしています。

予後調査というのは、術後の患者さんがお元気でいらっしゃるか、通院を中断していないかを調査する目的で行ないます。最近さぼっていたため、ここ数年は十分な調査ができていませんでした。

方法は、まず、電子カルテを開いて最終受診日を調べます。最近受診された方はお元気であることがこれで確認できます。電子カルテのチェックで大部分の予後調査は終了です。前までは関連病院に通院されている患者さんの通院状況は病院への電話か訪問で調べないとわかりませんでしたが、今はパソコンから関連病院のだいたいの状況は調べることができるようになりました。これで手間はかなりはぶけるようになりました。

カルテの受診状況で確認できなかった患者さんは、関連病院以外の病院に通院されているか、中断されているか、転居されているかなどの方々なので、お電話をかけて調べなければなりません。現在はまだまだここまで達しておらず、カルテをチェックしている段階です。なにせ800人くらいの患者さんを1人で調べているので肩は凝るし目は疲れるし、なかなか時間がかかるんです…。

予後調査をしていていつも感じるのは、いつの間にか通院しなくなっている患者さんが多いということです。理由はいろいろあると思いますが、電話がけをしたときによく聞くのは、”もう10年たったから行かなくていいと思った”という言葉です。私は患者さんが無事10年経過しても少なくとも年1回は乳房検査を受けるようにお話ししていますが、過去に乳癌患者さんを受け持っていた医師の中には10年で終了で良いですと説明していたこともあったようです。

また、うちの病院は医師の移動が多いので、他の医師が主治医の場合に、移動をきっかけに中断してしまう患者さんもいます。一番困るのは、まだ術後5年もたっていないのに突然中断してしまって、中断チェックが漏れてしまった場合です。経済的な理由(検査や薬代は高額なので患者さんにとってはかなりの負担になります)、高齢のため、などの理由が多いですが、このようなことが発覚すると、患者さんの思いを聞き出せていなかったことをいつも反省させられます。

術後10年以上たっても通院していただく一番の理由は、対側(+温存)乳房の新たな癌の検診目的です。対側乳癌は、通常初回の癌より早期で発見されることが多いです。これは、患者さん自身が自己検診をして注意をしているということと、定期的に検査を受けていることに起因します。しかし、たまにかなり進行して見つかる場合もあります。以前、このような症例をまとめたことがありますが、術後10年以上たった患者さんと高齢の患者さんにこのような進行例が多いという結果でした。これは、10年たったからもう大丈夫だろうという油断と、もう年だから大丈夫、とか受診が大変、などの理由で定期的な検査を中断してしまったからなのです。

前回、他の臓器のがん検診の必要性を書きましたが、対側(温存)乳房のがん検診も一生必要です。術後10年経っても、何歳になっても通院できる間は乳房検査を受けましょう!

2 件のコメント:

kimity0115 さんのコメント...

久しぶりにコメしま~す(~0~)/
日ごろのお仕事も忙しいのに、予後調査されてるんですね~本当にお疲れ様です(^ー^)
アフターフォローまで考えていただいているなんて、とても患者さんはとても安心できる
環境でうらやましいです^^

ご本人の意に反して・・確かに何かの原因で洩れてしまうこともありますよね・・

とりあえず10年経過して何もなければもう大丈夫ってうお話もよく聞きます。
そう思いたい気持もわかりますが、一回ガンに患ってしまったら一生付き合っていかないといけないっていう事ですよね

医療側も患者側も、危機意識をもってそういう認識を広めていかないと、洩れてしまう患者さんをフォローするのも現実的に難しいですし・・

最終的には自分の身体は自分で守るしかないですものね!

hidechin さんのコメント...

kimity0115さんへ

そうですね。みなさん、そういう意識を持っていただけると良いのですが…。10年たってやっと病院から解放されると思う方もいますし、経済的な問題から通院しなくなってしまう方もいます。そういう時は患者さんの悩みにもっと耳を傾けなければだめだということを痛感します…。