乳癌の診断をする場合、マンモグラフィや超音波検査に引き続いて行なう検査が、細胞診または針生検(組織診)です。患者さんからの問い合わせやコミュニティの書き込みを読みますと、”医師にClass5と言われたから、末期なんですよね?”などと、かなり誤解されているケースも多いようです。
1.細胞診
23-22Gという細い注射針を病変に刺して、細胞を吸引して調べる検査です。針生検に比べると麻酔も不要で侵襲も少ないため、繰り返し検査可能です。小さな病変や、嚢胞性の病変の検査に適しています。組織を切り取るわけではなく、吸い取ってばらばらになった細胞(細胞集塊)を見て、元の病変がどんなものかを推定する検査なので、この検査単独では確定診断にはなりません。
判定は、以前はClass1-5(1 正常、2 良性、3 境界病変、4 悪性疑い、5 悪性)で行なっていましたが、現在は、「検体適正」と「検体不適正」に大別し、「検体適正」は“正常あるいは良性”、“鑑別困難”、“悪性の疑い”、“悪性”の4 項目に分類しています。ただ、まだ国内ではClass分類で判定しているところが多いようです。
問題は、病変に正しく穿刺されているか、十分な細胞が採取されていて判定可能な検体かどうか、ということです。Class分類では、そのあたりがあいまいなため、例えば画像的には硬癌を疑うのに、穿刺が不十分で脂肪しか採取されていない場合、Class分類では”Class1”になってしまい、場合によっては誤診につながってしまいます。新しい分類では、”検体不適正”となって、再検査が必要と判断できます。
いずれにしても、上で述べたように細胞診は確定診断ではありません。特に乳腺腫瘍は他の臓器より判断が難しいため、誤りが起きうるのです。ですから画像所見と合致した場合にのみ、最終診断とみなされます。施設によっては、慣れた病理医やサイトスクリーナーがいない場合、このような判断の間違いを避けるため、細胞診はやらないところもあります。
なお、細胞診を何度もすると癌が進行するのではないかと聞かれることがありますが、そんなことはありません。
2.針生検
11-18Gという太い針で組織を切り取って採取する検査です。細胞診に比べると針が太いため、局所麻酔が必要です。検査後の出血の可能性もあり、侵襲は少し大きな検査になります。組織診ですので、これだけで確定診断になりますが、中には判断が難しい症例もあります。その場合は、開放生検(腫瘤摘出術など)を行なうこともあります。また、針生検は、良悪の診断だけではなく、ホルモンレセプターやHER2などの検査も可能なため、術前に化学療法を行なう場合には、その前に必ず針生検を行ないます。
針生検の装置には、針が2段階に飛び出して内筒と外筒の隙間に組織を切り取るタイプの従来のものと、太い針の窓から組織を吸引して回転する刃で組織を切り取って採取するマンモトームの2種類があります。採取する組織量はマンモトームの方がはるかに多いので、十分な情報が得られますし、針を抜かずに何度も採取が可能です。従来のタイプで複数回採取する場合は、その都度刺し直しますが、同じ穴に入ってしまうため、2回目以降はあまり組織が取れなくなることがあります。
判定基準は、細胞診と同様です。非浸潤癌を疑う場合には、細胞診では”悪性の疑い”止まりのことが多いため、針生検の方が診断には適しています。また、マンモグラフィにしか写らない微細石灰化の場合は、ステレオガイド下(マンモグラフィでモニターに映しながら)で石灰化が取れるまで何度も生検を要することが多いので、マンモトームが最も適しています。
針生検も、検査によって癌が進行することはないと考えて良いですが、針の穴を手術時に切除しないとそこから局所再発する可能性がありますので、特に乳房温存術の場合には注意が必要です。
5 件のコメント:
この記事を読み思い出したのですが、
私は最初針生検をした時にHER2陽性 スコアは2だったのですが、
術後フィシュ方で検査をして、ハーセプチンをするかもしれないとか言われていたのですが、
術前抗がん剤をしてから手術した時の病理検査では、HER2陰性 スコア0でした。
それで、もう一度最初の針生検の時の細胞を調べてくれたのですが、最初の針生検の結果は間違いだったそうです。
そのようなことはあるのでしょうか?
検査に間違いがあっていいのでしょか?・・なんだか納得できずに、あいまいなままに終わったのですが、この記事読んで思い出した次第です。
りんださんへ
針生検は腫瘍のごく一部から採取したものなので、切除材料と結果が異なることはあります。腫瘍は必ずしも均一ながん細胞からなるわけではないのでホルモンレセプターも結果が変わることがまれにあります。
おそらく、針生検は、HER2(2+)かHER2(3+)か、微妙な状態だったのではないでしょうか?検体の取り違いでもなければ、きっと、単純な間違いというのとは違うんじゃないかと思いますよ。
早速回答ありがとうございます。
単純な間違いじゃないということで、安心しました。
私も、非浸潤ガンではなかったけど、細胞診では”悪性の疑い”とまりでしたね
悪性の疑いはあるが病変が小さい場合診断できない・・・といった文面だった記憶があるます
2年前でしたが、確か4段階の分類での判定だった気がするので、classって何の判定のことかなって思ってました。
次の段階の再検査の針生検をして、MRIやマンモグラフィー検査と併せてようやく乳がんと診断されました。
私の場合は、針生検の時と術後の病理検査の結果は一緒でしたが、違う結果がでる場合もあるんですね・・・
>針生検も、検査によって癌が進行することはないと考えて良いですが、針の穴を手術時に切除しないとそこから局所再発する可能性がありますので、特に乳房温存術の場合には注意が必要です。
先生これってどういうことなんでしょうか??
針生検の時の穴は私はそのまま残ってるような気がしますが・・・
kimity0115さんへ
針生検後に乳房全摘をして、顕微鏡で見てみると、針生検をした針穴に沿ってがん細胞が播種されていることが確認されることがあるのです。また、乳房温存術後に乳房照射をしていなかった時代には、針穴から再発したと考えられる局所再発が報告されていました。ですから、非照射の場合には針穴(できれば細胞診の場合も)を皮膚切開時に一緒に切除していたんです。
最近は温存術後は基本的には全例放射線照射をするので、仮にわずかのがん細胞が針穴に播種されてもあまり問題ないのかもしれませんが、私は可能なら切除する方がよいと考えています。
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