一度リンパ浮腫になってしまうと完全にもとの状態に戻すのはなかなか困難になります。
ひと昔前の治療は、
①セルフマッサージ…具体的な指導はあまりせず、間違った手法が行なわれていた場合が多かったと思います。
②患肢の挙上…寝るときは枕を横に置いてのせておくなど。
③弾性スリーブ着用…以前は保険も利かず、高価でした。いきなりスリーブを着用するとすぐにゆるくなってサイズが合わなくなることもあったようです。
という感じでした。でもなかなか良くならないとあきらめていた患者さんも多かったようです。細いリンパ管を吻合して流れを良くする手術も一部の施設で行なわれていますが、成績は必ずしも良好とは言えないようです。
乳癌の罹患率が上がり、リンパ浮腫が社会問題になったことによって、本腰を上げて治療に取り組む施設が次第に増えてきました。欧米では日本より何歩も先に進んでいたため、そこで得られた治療法を導入する形でリンパ浮腫治療が普及して来ています。その代表的な治療法が、フェルディ式複合的理学療法(リンパドレナージ)という方法です。
<フェルディ式理学療法>
①スキンケア
②徒手リンパドレナージ
③弾性包帯(→安定したらスリーブ)による圧迫療法
④運動療法
この4つを基本とした理学療法です。
第1段階(集中排液期)は入院または通院で集中的に浮腫の軽減を行ない(週4-5日から毎日)、浮腫が軽減・安定したら、第2段階(現状維持・改善期)のセルフマッサージ+可能な場合は週1−2回の通院で治療を行ないます。
この治療の禁忌は、感染症を併発しているとき、心不全状態、静脈血栓症がある場合などです。癌が浸潤したために起きてしまった浮腫に対しては慎重に適応を判断する必要があります。
一般的に行なわれているリンパ浮腫マッサージは、逆効果のことがありますので注意が必要です。フェルディ式であればだいたい大丈夫だと思いますが、日本医療リンパドレナージ協会(http://www.mlaj.jp/)の講習会を受けた理学療法士や看護師のいる治療施設に受診するのが良いと思います(http://www.mlaj.jp/information/information.html)。
2 件のコメント:
リンパ浮腫治療として、最近マイクロサージャリーによる管細静脈吻合術が、年間数十例を超える症例が出始めているようですし、効果も高いことが認識されつつあるようです。
第一人者は東大の光嶋先生の様ですが、他の施設でもちらほら実施しているみたいですね。
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/patient/depts/pras_md.html
#再建の世界でも、マイクロサージャリーによる皮弁法(DIEP Flap、SIEA Flap)で、かなり低侵襲な自己組織による再建ができるようになってますね。患者さんにとっては、朗報が一つ一つ増えているのが何よりです。
火田さんへ
microsurgeryを用いたリンパ管の再建術は、もうかなり前から行なわれています。こちらの形成外科でも症例はあり、学会報告もされています。しかし、もう10年以上経過していても、まだ標準的な治療にはなっていません。長期的な開存率の問題などもあるのかもしれません。
また、患肢にメスを入れるのは、うまく行かなかった場合、逆に悪化させる可能性もあります。適応は慎重に考えなければならないと思います。
もちろん、手術で高い確率で治癒するならそれに越したことはありません。今後、良好な手術の長期成績が得られることを願っています。
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