2009年11月18日水曜日

プラセボ(偽薬)効果について

このブログの中でも何度か書いてきたプラセボ効果ですが、皆さんはどういう意味かご存知ですか?

プラセボ(placebo)とは、現代では一般的には”偽薬”の意味で使われていますが、もともとラテン語のplaceboとは”喜ばせる”という意味で、19世紀に患者さんを喜ばせる目的で投与していた薬剤一般を意味していたそうです。

1955年にBeecherという人が解析したところ、手術の痛みや頭痛、狭心痛に対するプラセボによる効果は35%にもなることを報告しています。痛みやストレスの多いときにこのような心理的な介入をすることによって副腎の働きを活発にして、除痛効果を発揮するのではないかと考えられています。他にもプラセボによる心理的な影響が身体に働きかけて、薬剤を投与したときと同様の効果を与えることがあると考えられており、これらをプラセボ効果と呼んでいるのです。

ですから、ある薬剤が、本当に医学的な効果があるのかを正確に証明するためには、このプラセボ効果を明らかに上回る効果があることを証明しなければならないのです(余談ですが、プラセボでも吐き気や頭痛、便秘などの副作用も出るそうです)。現在、認可されている医薬品のほとんどは、このプラセボやすでに効果が証明されている薬剤との比較試験によって有効性が証明されているものです。

一方、民間療法のほとんどは、このプラセボとの二重盲検試験(患者さんも投与する医師も本当の薬剤か偽薬かわからない状態で投与する比較試験)を行なっていません。例えば、民間療法薬で癌が一時的に進行が止まった人がいたとしても、もしかしたらプラセボ効果なのかもしれないのです。進行が止まったのなら良いのではないか、という考え方もあるかもしれませんが、高額のお金を取るからにはきちんとした証明が必要だと私は思います。また、様々な研究でプラセボ効果がみられる頻度はそれなりに高いが、その効果の程度は少ない(痛みでは全長10cmのVASで6.5mm、肥満の軽減は3.2%、高血圧の改善は拡張期圧で3.2mmHg)と言われています。

4 件のコメント:

火田 さんのコメント...

いつも、為になる情報参考にさせてもらっています。

プラセボ(的)効果を逆手にとって、利用したことがあります。

私の家内が、EC療法の初回の時、やはり嘔吐や吐き気に対して強い恐怖心を抱いていました。
初回投与の後、前処置が効いている6時間ぐらいは何の変化もなく経過しましたが、ジワジワと吐き気を感じてきて、不安を感じはじめていました。

そこで、病院から頓服でいただいたカイトリル錠と、個人輸入したイメンドを服用させました(当時イメンドは国内未承認でしたが、個人輸入およびその服用は主治医の許可をいただいています)

家内はアメリカドラマの「セックスアンドシティ」が好きで、その中で乳癌となった女性がACらしき化学療法を受けたり、化学療法後に制吐剤を服用しながら普通に家事をしたりといったシーンを見ていました。

そのシーンを見た家内は「何で抗ガン剤やってるのに普通でいられるの?」という質問をしてきたので、「実はアメリカでは、日本でまだ承認されてないすごく良く効く吐き気止めがあって、それを飲んでるからだよ。なんとか輸入で同じものを入手したから、これで吐き気はほとんどなくなるから」と言って、カイトリルとイメンドを飲ませたのです。
#実際、ドラマ中で服用していた制吐剤の形状はイメンドそっくりでした。ACの際の点滴の色といい、リアルにつくってあるなと少し感心しました。

すると、不思議なことに、服用して5分もしないうちに「楽になってきた」と言って、その後はなんとか無事やり過ごすことができました。結局EC4クールの間、一度も嘔吐もなく、吐き気が出たときは頓服でほとんど解消することができました。

もちろん、5HT3拮抗剤にもNK1拮抗剤にも、ちゃんとした薬効がありますが、いくらなんでも経口で服用して5分で効果が出てくるとは考えられません。
ですが、プラセボ効果を逆手に利用して、さらに効果を上乗せする作戦は上手くいったようでした。

試験や研究ではやっかい?なプラセボですが、使い方によっては武器にもなるなと思っています。

悪用して大金をむしり取る悪徳業者もいるので、諸刃の剣ですが…

hidechin さんのコメント...

>火田さん
お金のかけない、または安価なプラセボ効果なら大歓迎ですよね。プラセボ効果でも薬理効果でも効けばそれでいいんですけど、やはり患者さんの弱みに付け込む悪徳業者の存在には注意が必要ですね。

きみちゃん さんのコメント...

hidechin先生~ごぶさたしてます(~o~)

久しぶりにPCアップしてブログ拝見させていただきましたら興味深い記事でした!

“偽薬”以外に、“喜ばせる”なんて意味もあったんですね~

私は、そのプラセボ効果を発揮しないようにって事で、治験で偽薬を飲んでるってことになるんでしょうか。
私は、治験を提案された時コーディネーターさんから説明された時は、うる覚えですが、
「二重盲検比較試験といって、主治医も患者さんもどっちの薬飲んでるかわからないようにするために“偽薬”も一緒にのんでもらいます・・・なぜなら、極端な話、例えばただの水なのに、この水はこんな効果があるって言われて飲むと、心理的な先入観から症状が和らぐ場合もあるからです・・・」というような感じで説明されたと覚えてます。

説明時は、心理的な作用がここまで働くものなのかな~~と、よくわからずピンときませんでした。

でも、心理的な介入が人体にどのような影響を及ぼすのか、なにがどうなってそんな効果をあげる事ができるのか、メカニズムがわからなかったのですが、ちゃんと副腎の働きを活発にするなどのしっかりとした要因があるんですね~~
この記事を拝見して、なるほど~と納得できました。

でもまぁ偽薬を飲んでるんだと思って飲むより、喜ばせる薬を飲んでるんだって思って飲んだ方が心身ともにいいな~って思いました^^

私にとっても、とても良い情報でした。
hidechin先生いつもありがとうございます!

hidechin さんのコメント...

>きみちゃんさん
喜んでいただけてなによりです(笑)。
きみちゃんさんがどっちに当てはまるのかはわかりませんから、どっちにしても効くんだと思うのが一番ですよね!