片側の乳房にがんができた場合、対側にも乳がんができる確率は約5%と言われています。このうち同時に発見されるのがだいたい1/3(同時両側乳がん)、時間をおいて発見されるのが2/3(異時両側乳がん)です。
私は15年以上、乳がん診療に携わっていますので両側乳がんの患者さんをたくさん経験しました。両方とも乳房切除になる場合も片方ずつ乳房切除&乳房温存術になる場合も両側乳房温存術になる場合もあります。同時両側乳がんで両側乳房温存術を行ない、5年近くたってから片側の別な場所に新たながんができて乳房切除になった患者さんもいました。
一般的には、異時両側乳がんの場合には、第1癌よりも第2癌のほうが早期に発見される場合が多いと言われています。これは、患者さん自身が乳房に関心を持つようになったために自己検診で早期に発見されるということと、定期検査によって無症状のうちに早期に発見されるということが理由に挙げられます。
しかし、まれに第2癌が進行して発見される場合もあります。これは以前学会でも報告しましたが、高齢者であったり術後長期間たったために定期受診をしていなかったケースに多いようです。ですから何歳になっても、また術後何年たっても乳房の定期検査はしたほうが良いと思います。
定期受診している患者さんの対側に乳がんが発生した場合には、担当医としてはできるだけ早期に発見してあげたいと思っています。ベストは小範囲の非浸潤癌で乳房温存術(+センチネルリンパ節生検)だけで治癒可能な状態で発見してあげることです。でも乳がんにもいろいろなタイプがありますので、6ヶ月ごとに検査をしていても必ずしも非浸潤癌で発見できるわけではありませんし、思いのほか広がりが広くて全摘になってしまう場合もあります。こればかりは残念ながら癌の性質にもよりますので仕方ありませんが、できるだけ1期(2cm以下でリンパ節転移がない状態)の中でも1cm以下で見つけるように努力しています。
両側乳がんの場合に注意が必要なのは、家族性(遺伝性)乳がんの可能性があることです。特に若年発生の場合や母親や姉妹さんも乳がんの場合には家族性の可能性がありますので、お子さんの乳がん検診は通常より早めに(遅くても30才、できれば20才くらいから)始めた方が良いと思います。遺伝性かどうかを正確に調べるためには遺伝子検査が必要です。専門のカウンセラーがいる施設でしかできませんので、もしご希望の方は主治医にお聞きになってみて下さい。
米国では遺伝性乳がんに対して予防的乳房切除(+乳房再建)や卵巣切除を行なって良い成績が報告されています。日本では保険適応ではないこともあり、一般的ではありませんが、遺伝性乳がんが増加したら考慮しなければならない時期が来るのかもしれませんね。
3 件のコメント:
いつも参考にさせていただいております。
お忙しいところ、申し訳ありませんが教えてください。
対側にしこりを見つけた場合、約5%以外は良性と考えてよろしいのでしょうか。
それともしこりがあった場合は、ほぼ悪性となるのでしょうか。
色々と調べたのですが、わからず今後のためにお聞かせいただけると嬉しいです。
>ぱん さん
はじめまして。
5%と言うのは、そういう意味ではありません。
片側が乳がんになった方のうち5%くらいの割合で(約20人に1人)一生の間に反対側にも乳がんができるということです。実際に対側にしこりができた場合のがんの確率が5%と言っているわけではありません(冷静によく考えれば理解できると思います)。
片側が乳がんになった人の対側乳房にしこりができた場合の悪性の確率というデータは存在しないと思います。実際にしこりがあるのでしたら、これから検査をするわけですので確率がどのくらいかを統計学的に考えてもしかたがないと思いますのでまずはきちんと検査を受けて下さい。
良性だといいですね。それではお大事に。
お忙しい中、ご丁寧な回答ありがとうございました。
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