2010年9月27日月曜日

乳腺センターという考え方

乳腺疾患を主に扱うのは外科です。しかし、外科の中でも乳腺は長い間、虐げられていました。以前は乳房切除は外科のがん手術の入門のようなものであり、誰にでもできるものとして軽んじられていたのです。私が研修に行ったがん専門病院でも、いまだにそのような言い方をする消化器外科医がいました。

乳腺疾患は外科の中でも特別です。外科の、特にがん診療において、乳がんだけは診断から手術、補助療法、再発治療、終末期まで外科で診るからです。他の領域でもすべて外科で診ている場合もありますが、乳がんだけは他科に委ねることは稀なのです(病院によっては、一時期腫瘍内科や緩和ケア科が乳がん患者さんを診るケースはありますが)。

ですから乳腺疾患を扱う専門医は、「乳腺外科専門医」ではなく、「乳腺専門医」なのです。このことに私は魅力を感じて乳腺外科医になったわけですし、その診療内容に誇りを感じて仕事をしてきました。一身上の都合により、手術からは離れていますが、それでも長くおつきあいする患者さんとの関係に生き甲斐を感じています。


いま新病院建設に向けて、会議を繰り返しています。この新病院のテーマの一つは、「センター構想」という考え方です。今まで消化器内科、消化器外科と分かれていたものを消化器センターとして同じ病棟で診療を展開する、というような考え方です。患者さんにとっても、病棟を移動することなく、専門の内科医、外科医がいる病棟で診療を受けられるのは大きなメリットだと考えています。

今の病院では乳腺は呼吸器外科、リウマチ内科、腎臓内科との混合病棟で診療しています。新病院では、呼吸器内科、外科と一緒になります。当初、「胸部疾患センター」という呼称にする話がありましたが、わかりにくいということで見直すことになりました。私としては、「呼吸器・乳腺センター(もしくは呼吸器センター・乳腺センター)」という呼称の要望を出していたのですが、なぜか「呼吸器センター・乳腺外科」という形になっていることが判明しました。

この間、センター構想についての展望や紹介を各領域の担当者が書くように言われ、私が「乳腺センター」について書いてきましたので、当然、乳腺もセンターなのだと思っていたのですが…。この点についてある責任あるDrに意見を聞いたところ、「乳腺はセンターじゃない」と言われました。

Googleで「乳腺センター」を検索すると約 381,000 件 ヒットします。この呼称が一般的になってきたのは、やはり乳腺診療が外科的な診療だけではないからだと思います。私たちの病院においても消化器や呼吸器のように内科と外科が結合しなくても、乳腺領域は最初から「センター」的な役割を果たしてきたわけです。

いまだに乳腺領域は「外道」だと思われて軽んじられているような非常に悲しい気持ちになりました。罹患率の増加とマスコミの報道によって、乳がんに対する世間の認知度は非常に高くなりました。しかし、医療関係者においてはまだまだステータスを得るには至っていないようです。もっと努力していかなければだめですね…。

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