乳がん患者のパートナーはうつ病のリスクが高いという報告がデンマークの大規模研究で示されました。
今回の研究は、1994~2006年にデンマークに在住し、乳がんを発症した女性パートナー(妻または同居するガールフレンド)をもつ男性2万538人を追跡したものです。教育レベルなどの因子による誤差のないよう統計値を調整して検討した結果、このような男性は他の男性に比べ、うつ病や不安などの気分障害で入院する比率が39%高いことが判明しました。
突然の乳がんの診断、そして病状が深刻になった場合はなおさら、本人だけではなく、パートナーにも精神的に大きな負担がかかるのは容易に想像できます。今回の報告はそれを具体的な数字で示しています。
私自身の経験でも、術後に切除標本をご主人に見せたら倒れてしまったとか、ご本人は落ち着いて話を聞いているのに「先生、絶対死なないって約束して下さい!」と泣きながら訴えるご主人、十分に説明してご本人は理解しているのに温存術後に断端陽性で再手術が必要とわかった途端、激しく動揺して怒り出してしまったご主人、などご本人以上にパートナーにとっても精神的なダメージが大きいと感じることはよくあります。もちろん表面に出さないケースのほうが圧倒的に多いはずです。こちらのほうが私たちとしてもフォローが十分にできない可能性がありますので注意が必要です。
毎年夏に行なっているWith You Hokkaidoですが、患者さんだけではなくご家族も対象になっているのですが、ご夫婦で参加されているケースは稀です。仕事で忙しいこともあるでしょうが、パートナーに対するフォローは十分に行なえていないのが現状です。なんらかの手だてを考えなければならないと今回の報告を見て感じました。
4 件のコメント:
hidechin先生
無事帰ってきました。
この報告は私も読みました。とても興味深いと感じました。
パートナーの病気の深刻度によっても男性のうつ度合いが違ってくるというのも、患者家族をサポートする上で大切な事なのでしょうね。
女性と男性では、大きな出来事が起こったときの受け止め方や、精神的なところが違うのでしょうか?
奥様を亡くされたご主人は元気がなくなるけれど、ご主人を亡くされた奥様は時間が経つと元気になるって....これとは少し話しの次元がちがいますかね?
>Marthaさん
そういう話はよく聞きますね(汗)。
私たちがご主人とお会いするのは、だいたい乳がんの告知や術前(術式)、病理結果のご説明をするときくらいですから、その後どのような精神状態で過ごされているのかまったく伺い知ることができません。患者さんご自身も十分に把握していないこともあると思いますので、術前か退院前にでもご主人への精神的ケアの道筋をつけてあげることも大切ですね。
パートナーのショック。それは確かに大きいと思います。子供さんがいらしたりするとご家族全員に与える影響は計り知れないでしょうね。お母さんて家庭の中心にいる場合が多いのではないでしょうか。
ご家族のケア・・・。確かに医療の現場にいると丁寧なケアは大切で、でも難しいことだなぁと思います。
ほんとにそうですね・・・。
> kaiseijinさん
本当にそうですね。
患者さんご本人はもちろんですが、ご主人や子供さんへの配慮は忘れないようにしたいものです。
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