2011年7月27日水曜日

乳腺術後症例検討会 12 ”放射状瘢痕”



今日は月1回の乳腺術後症例検討会がありました。

今月の症例検討は、まるで皮膚病変か乳輪下膿瘍のように見えた硬がんの1例、ごく普通の典型的な硬がんの1例、そして画像上は小さな硬がんに見えた放射状瘢痕に発生したと思われる非浸潤がんの1例の計3例でした。

そして症例検討にもあった”放射状瘢痕”についてのミニレクチャーを今回は私が担当して行ないました。

放射状瘢痕(radial scar)は、中央部に線維-弾性組織からなる芯を有し、そこから乳腺症で見られるような乳管過形成や腺症を伴う管状構造が放射状に伸びる形態をとる良性複合性病変のことです。10㎜未満をradial scar、10㎜以上をcomplex sclerosing lesion(CSL)と呼ぶこともあります。Rosenという高名な病理医は両者を含めてradial sclerosing lesion(RSL)という用語の使用を勧めています。

画像的には、マンモグラフィにおける中心の高濃度部分を伴わないスピキュラ(硬がんでよく見られる刺状の構造)が特徴的です(写真2枚目)。これは超音波検査でも確認できることがありますが、硬がんと区別がつきにくい場合もあります(写真1枚目)。

この病変の一番の問題点は、しばしば非浸潤がんや異型乳管上皮過形成(ADH…前がん病変)を伴うことです。私たちの施設でも3例ほど経験があります。ですからこの病変を疑った場合は、採取組織量が多い生検方法(マンモトームなど)でがんの合併の有無を検索する必要があります。

マンモグラフィ検診が導入されてからは、この病変で精密検査にまわってくる方が増えているようです。精検をする側から言えば、けっこう神経を使う病変です。マンモトームの件数もこれからさらに増えるのではないでしょうか?

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