2011年7月18日月曜日

乳がんに対するホルモン療法の種類と新薬

乳がんのホルモン剤には以下のようなものがあります(括弧内は商品名)。

①抗エストロゲン剤…閉経前、閉経後ともに有効(ただしトレミフェンの保険適応は閉経後のみ)。再発予防、再発治療ともに使用可。
「エストロゲンレセプターにエストロゲンが結合して増殖を促すのを阻害する薬剤」
例)タモキシフェン(ノルバデックス、タスオミン、アドパンなど)、トレミフェン(フェアストン)

②アロマターゼ阻害剤…閉経後のみ有効、。再発予防、再発治療ともに使用可。
「閉経後の脂肪細胞やがん細胞周囲に増えるアロマターゼ(男性ホルモンを女性ホルモンに変換する酵素)の働きを阻害する薬剤」
例)非ステロイド系:アナストロゾール(アリミデックス)、レトロゾール(フェマーラ) ステロイド系:エキセメスタン(アロマシン)

③プロゲステロン製剤…閉経前、閉経後ともに有効。通常は進行再発乳がんにのみ使用する。
「DNA合成抑制作用、下垂体・副腎・性腺系への抑制作用及び抗エストロゲン作用などにより抗腫瘍効果を発現すると考えられ薬剤」
例)酢酸メドロキシプロゲステロン(ヒスロンH、プロベラ)

④LH-RH アゴニスト…閉経前のみ有効。再発予防、再発治療ともに使用可。
「脳下垂体に作用してFSHの分泌を抑制し、エストロゲンの低下を引き起こして閉経状態にする薬剤」
例)ゴセレリン酢酸塩(ゾラデックス)、リュープロレリン(リュープリン)


以前に「乳癌の治療最新情報11」(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2009/12/11.html)でも触れたことがありますが、上で述べた薬剤に加えて年末ころにさらにもう一つ新しいホルモン剤が使用可能になりそうです。

①の抗エストロゲン剤は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター Selective Estrogen Recepter Modulator(SERM) と呼ばれるもので、子宮や骨などにはエストロゲン様作用(子宮体がんの増加、骨粗鬆症の予防効果)、乳腺(乳がん)などには抗エストロゲン作用を呈します。これに対して、年末に発売予定のフルベストラント(ファスロデックス)は、全てのエストロゲン受容体をブロックしますので子宮体がんの増加の心配はありません。ただし骨量の低下には注意が必要です。適応は閉経後の進行再発乳がんになりそうです。月一回の筋肉注射で投与しますが、かなりの量が必要なようです(痛いかも…)。進行再発乳癌に対する効果はアロマターゼ阻害剤より良好という報告もありますので期待したいところです。正式に発売が決まりましたらまたここでご紹介したいと思います。

2 件のコメント:

サクラ さんのコメント...

先生はじめまして。

7月1日に温存手術しましたサクラと申します。
術後の後遺症に悩み、検索していたらこちらに辿り着きました。

まだ術後の検査結果は出てませんが、術前の検査ではこの後、放射線とホルモン療法の予定です。

こちらのブログはとても勉強になりますので今後も拝見させてください。

札幌は先週は雨ばかりでしたが、今週に入って晴れ続きですね~。
これから暑くなりそうですが、お体に気をつけてお仕事頑張ってください。

hidechin さんのコメント...

>サクラさん
はじめまして。ありがとうございます。
サクラさんも札幌なんですか?本州に比べると過ごしやすい気温ですから贅沢は言えませんがちょっと蒸し暑くなってきましたよね。術後の体調が悪いときでしたらなおさら大変だと思いますが頑張って治療を受けて下さいね。お大事に!