タモキシフェンによる乳がん発生の予防効果についての報告はかなり以前からあります。またタモキシフェンの仲間のラロキシフェンにも同様の作用があることが報告されています(http://www.medpagetoday.com/MeetingCoverage/AACR/19653)。しかし、閉経後の乳がん術後再発予防効果においてタモキシフェンより効果が高いと考えられているアロマターゼ阻害剤の乳がん発生予防効果については今まで充分にされていませんでした。
今回ようやくThe New England Journal of Medicine 2011; 364: 2381-2391にエキセメスタンによる閉経後女性の乳がん予防効果が報告されました。概要は以下の通りです。
報告者:Paul E. Gossら(米マサチューセッツ総合病院がんセンター)
対象:2004年2月〜10年3月に登録された35才以上の閉経後女性のうち以下の条件を満たした4,560例。
(1)60歳以上,(2)乳がん発症リスクを推計するGailの5年リスクスコアが1.66%超,(3)異型乳管過形成,異型小葉過形成,上皮内小葉がん,乳腺切除を伴う非浸潤性乳管がんのいずれかの既往—に1つ以上当てはまること。
方法:対象者を,エキセメスタン群2,285例(年齢中央値62.5歳)とプラセボ群2,275例(同62.4歳)にランダムに分類し、各患者群に,エキセメスタン25mg/日もしくはプラセボを最長5年間もしくは乳がん発症まで投与した。一次評価は浸潤性乳がん発症率とした。
結果:追跡期間の中央値35カ月におけるプラセボ群と比較した浸潤性乳がんの年間発症率は65%低下(0.19% vs 0.77% HR 0.35 p=0.002)、浸潤性+非浸潤性乳がんでは53%減少した(0.35% vs 0.77% HR 0.47 p=0.004)。
また,年間発症率は非浸潤性乳管がんでは0.16% vs 0.24%,異型乳管過形成,異型小葉過形成,上皮内小葉がんの3種を合わせた場合では0.07% vs 0.20%と,いずれもエキセメスタン群はプラセボ群に比べて低かった。
顔面紅潮,疲労感,不眠,下痢,関節炎などの副反応発生数はエキセメスタン群で高頻度だったが、心血管系イベント(106% vs 111%,P=0.78),臨床的な骨折(149% vs 143%,P=0.72),新規の骨粗鬆症(37% vs 30%,P=0.39),その他のがん(43% vs 38%,P=0.58)などの重篤な副反応に有意差は認めなかった。
結論:プラセボの投与に比べ,エキセメスタンの投与により,浸潤性乳がんの年間発症リスクは65%低下することが認められた。さらにエキセメスタンは,浸潤性乳がんの前駆病変である非浸潤性乳管がん,異型乳管過形成,異型小葉過形成,上皮内小葉がんの発症リスクも減少されることが分かった。
まだ観察期間が短いこと、対象者をどう選択するか、投与期間はどのくらいが適切か、などの課題はありますが、少なくともハイリスク症例に対する乳がん発生予防の選択手段の一つとして期待できそうです。
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