2009年10月11日日曜日

予防的乳房切除

Cancerという医学雑誌のオンライン版に、ここ10年でニューヨーク州では乳癌患者が手術を受ける際に、対側の健康な乳房も予防的に切除するケースが5.6%から14.1%と約2倍に増えていると報告されていました。

乳癌の抑制遺伝子であるBRCA1やBRCA2などに遺伝子異常がある場合、予防的に両側の乳房切除を行なうケースは欧米では以前からかなりあり、その効果も報告されています。これらの遺伝子異常がある場合には、生涯における乳癌発生率がきわめて高く、なおかつホルモンレセプター陰性が多く、悪性度の高い乳癌が多いことが、この治療が許容される根拠であり、効果がある理由なのです。

一方、すべての乳癌患者さんの健康な対側乳房を予防的に切除することの効果は証明されていません。

一般的には、乳癌患者さんの対側に乳癌ができる確率は約5%程度と言われています。逆に言うと95%の人には乳癌は発生しないことになります。また、通常、異時対側乳癌の場合は、早期に発見されるケースが多いため、定期的なフォローアップで十分な可能性も高いのです。ですから、遺伝子異常のある人に行なう予防的乳房切除と同じような効果が、すべての乳癌患者の対側乳房の予防的切除で得られるかどうかは疑問です。

欧米の乳癌死亡率はマンモグラフィ検診の普及によって近年かなり改善してきていますが、もともとは予後が悪い病気であったために、乳癌に対する恐怖心が日本よりずっと大きいのではないかと思われます。ですからこのような正常な乳房に対する予防的切除を希望される患者さんが多いのではないでしょうか?

日本人ではこのような手術を希望する人はまれだと思います。なんとなく国民性が伺えるようなニュースでした。

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