2009年11月24日火曜日

「エポジン注」 がん化学療法による貧血に対する追加承認を申請!

がん化学療法による最も代表的な副作用の一つが骨髄抑制です。

骨髄は血球を作る臓器です。血球(白血球、赤血球、血小板)は、癌細胞と同様に分裂・増殖が盛んなため、抗癌剤で影響を受けやすいのです。影響を受けやすい順番は、白血球>血小板>赤血球で、乳癌の化学療法で一般的に問題になるのは白血球の減少です。血小板の減少はあまり問題になることは多くはありませんが(マイトマイシンなどではたまに起きます)、3万以下まで下がると出血の可能性が大きくなるため血小板輸血が必要になることがあります。

赤血球の減少は起きても軽度で、術後の化学療法ではほとんど問題になることはありません(もともと貧血がある人は別ですが)。しかし、再発治療で抗癌剤を繰り返し投与していると徐々に貧血が強くなってくることがあります。骨転移などで放射線治療を受けた方は特に起きやすいようです。

化学療法による貧血は、若い女性に多く見られる鉄欠乏性貧血とは違いますので、鉄剤を投与しても改善しません。ですから、息切れやめまいなどの症状が出るほど貧血が進行した場合は、輸血するしか手はなかったのです。

エリスロポエチンというのは、もともと生体内にある(主に腎臓で生成される)、赤血球の産生を促進するホルモンです。遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤「エポジン注」という薬剤は、もともと腎性貧血や、手術時の自己血採取目的でしか保険適応はありませんでした。
今回、中外製薬から発表された報告によると、国内の第Ⅲ相臨床試験において、エポジン注を12週投与した患者さんでは、プラセボを投与した患者さんと比較して、理論輸血率(投与開始4週後以降に赤血球輸血を施行またはヘモグロビン濃度が8.0g/dL未満となる割合)の有意な低下が認められたとのことです(主な副作用は、血圧上昇・高血圧、便秘、下痢)。この結果をもとに、がん化学療法による貧血に対する追加承認を申請したということです。

新しい化学療法剤の開発とともに、このような副作用対策の新薬が次々と開発・承認されるのはありがたいことです。今すぐにでも使いたい患者さんが待っています。もちろん安全性の確認は必要ですが、今までほかの疾患で投与されてきた薬剤なので大きな問題はないはずです。一日でも早い承認が待たれます。

2 件のコメント:

きみちゃん さんのコメント...

私も術後、FEC100を6クールしましたが、脱毛、吐き気、骨髄抑制は共通して副作用の症状がでますよって言われました。
白血球の値が下がって一回抗がん剤が流れた時もありました。
このときは抗がん剤って本当に人体にどれほどの影響を及ぼす恐ろしい薬なんだろう・・・って思ってしまいました。
癌細胞をたたく薬=強烈な薬=癌っていう病はこれほどまで手ごわい相手なんだ・・・とういう図式は副作用としていろんな症状を味わうたびに、自分はどうなってしまうんだろう・・主は癌をたたく薬なのに、その副作用に負けてしまうんじゃないか・・・と当時は本当に心細く思いました。

患者にとっては、本当にこの副作用対策の薬は一つでも多く開発されればどれほど心強いものでしょう・・

今回の薬も承認されたら、どれほどの患者さんが救われることでしょう。
現代の医学の進歩に期待します!

hidechin さんのコメント...

>きみちゃんさん
そうですね。副作用の軽い薬、副作用を軽くする薬の開発は患者さんにとってとても大きなことですよね。
最近は、薬害の問題が過度に取り上げられすぎて、一生懸命患者さんのために薬を開発している人たちが気の毒に感じることがあります。
製薬会社の方々には、これからも患者さんが笑顔になるような薬剤の開発を期待したいですね!