12/5に病院の外来で患者さん向けの乳がん検診と自己検診についての講演をします。今その準備をしているところです。
患者台帳のデータをいじってみたところ、興味深い結果がわかりました。
過去35年間を5年ごとに区切って、乳癌患者さんの病期別の比率を調べてみたところ、早期癌(0-1期)比率は確かに増加していました。1975-1980年に35.0%だった比率が、1985-1990年には43.2%、1995-2000年には52.9%、2005-2009年では57.1%と、病院で取り組んできた啓蒙活動やマンモグラフィ・超音波検査の精度向上などの効果を確信できるデータでした。
しかし、進行癌(3A-4期)の比率をみてみると、1975-1980年30.0%、1985-1990年14.8%、1995-2000年11.7%、2005-2009年では13.7%と、1985年代からほとんど低下していないのです。
つまり、自己検診で発見可能な大きさの癌(2A-2B期の中期癌)が、画像検査などでより早期で見つかるようになった一方で、自覚症状がありながら、何らかの理由で受診しない患者さんの割合は変化していないということになります。
バブルの崩壊、そしてここ数年の不況、離婚率の増加、核家族化の進行など、受診できないような経済的・社会的要因がここに影響しているのではないかと思います。
乳がん早期発見の啓蒙活動も重要ですが、このような受診困難者をいかに検診に結び付けるかを行政が考えていかなければ、乳癌死亡率の低下にはつながらないのではないかと感じました。
6 件のコメント:
「乳がんで亡くなる人を減らしたい」
啓蒙活動の根本はそこですから
早期発見の大切さは勿論ですが
命の大切さやご自身の存在の大切さを理解して欲しいですね
異常に気付いたら直ぐに受診して下さいとの訴えも活動に盛り込んで行きます。
>ちっこさん
そうですね。それと同時に、なぜ進行するまで受診しなかったかの理由を詳しく分析して、行政に働きかけて行く必要もあると感じています。
患者さんの立場でできること、医療従事者の立場でできること、を最大限に発揮して、少しでも悲しい思いをする人が減るような努力をしていきたいですね。
現状はやっぱり、まだまだまさか自分が乳がんなんかになるわけないっていう前提で、かまえている女性が多く居るってこともあるから自己検診もしないし、検診にもいかないのもあるのかなって思ってしまいます・・
私の周りにも、私と同じように、離婚後に乳がんを発覚した友人が数人いました。離婚すると女性ホルモンのバランスが崩れるから女性ホルモンとの関係が深い乳がんを発症してしまったのではないかと言われたことがありました。
いろんな理由で発症するとは思いますが、離婚=乳がんと因果関係ってあるのでしょうかね・・?
どんな生活環境にしろ、乳がんはほかのがんにくらべて進行が遅く何年もかけて大きくなっていくタイプが多いですし、それに唯一自分でみつけることができるがんでもありますから、1年1年毎年の検診の重要性を訴えていきたいですね。
>きみちゃんさん
離婚と乳癌は関係ないと思いますよ。精神的ストレスでたとえば月経が止まったりすることはありますが、この場合はむしろ女性ホルモンが減少するわけですので乳癌の発生を促すとは思えません。
どんな状況の女性でもどんな体型の女性でも乳癌になりうるわけですから、自分は乳癌にならないと思い込まないように正しい知識の啓蒙が必要ですね。
はじめまして<(_ _)>
ただいまお休み中Nsです。
外科外来が乳腺疾患の担当でそこで働いておりました(リンパ浮腫セラピストもしておりました)
当時を振り返っても、
無症状でマンモでカテゴリーが上がった方、
会社の検診で要検査でいらっしゃって、早期発見された方等
早期発見に至った方もいらっしゃいました。
しかしご指摘されるように「腰痛を訴えいらっしゃる方」「割と高齢の方」そして「地方にお住まいの方」がⅣ期でいらっしゃる方が多かったように思います。
理由を聞くと…
「何となく気づいていたけど、何処にかかってよいものかわからなかった」「恥ずかしくてだれにも相談できなかった」「近所の方に知られるのが嫌だった」などなど…
日本の検診事情の縮図がそこにはありました。
映画のようにきれいごとでは終わらず、自分の病気が家族やパートナーの問題になる事も含め、早期発見をする事が今後の治療にも、自分の人生にも大切なことと知ってもらえるようにしなくてはと思います。
その後の治療や生活についても医療者やケースワーカーがきちんと支えられる制度や連携ももっともっと必要だと考えています。
>itomakiさん
はじめまして!
乳腺外来で仕事をされていたんですね。リンパ浮腫のセラピストはとても貴重ですので是非また職場に復帰してくださいね!
進行乳癌になるまで放置した理由は様々ですよね。経済的理由、癌だと言われるのが怖いから、抗癌剤や手術が嫌だから、離婚後のため子供を預けられないから受診が遅れた、民間療法に頼ってみたがまったく効果がなかった、などなど…。
一般の方への乳癌の知識の普及はまだまだ不十分で誤解している人も多いです。目の前の患者さんを診るだけでは乳癌死亡率は低下しないということが、よくわかりました。
itomakiさんも職場に復帰したら、啓蒙活動に協力してくださいね!
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