2010年6月11日金曜日

ASCO 2010 トピックス

2010.6.4-8に行なわれた米国臨床腫瘍学会(ASCO)のレポートが続々と報告されています。

いくつか乳がんに関するトピックスをお知らせします。ちょっと難しい内容ですがわからないものは読みとばして下さい。

①「再発スコアと臨床病理学的情報を組み合わせた新しいリスク評価で早期乳癌患者の予後を予測」
(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/asco2010/201006/515512.html)

Oncotype DXで算出した再発スコア(RS)と臨床病理学的な情報を組み合わせたRS-pathologic-clinical(RSPC)による再発リスク評価は、RS単独による評価よりも早期乳癌患者の予後を強力に予測し、RSでリスクが「中間」に分類された患者を減らし個別化医療の決定力を高める。

→いまだ日本ではOncotype DXは普及していませんので、あまり身近な問題には感じられません。HER2のように保険適応になれば良いのですが…。

②「BMIが閉経前乳癌患者の内分泌療法に影響する可能性」
(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/asco2010/201006/515502.html)

閉経前の過体重の乳癌患者では、body mass index(BMI)が内分泌療法に影響する可能性がレトロスペクティブな解析から示された。アロマターゼ阻害剤(AI)のアナストロゾール(ANA)を投与した場合に、正常体重の患者と比べて無病生存率(DFS)および全生存率(OS)が悪化した。

→やっぱり肥満は健康にとって良いことがないようです。気をつけましょう!

③「アロマターゼ阻害剤による術後補助療法はタモキシフェンよりも治療中止が少ない」
(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/asco2010/201006/515508.html)

閉経後乳癌患者において、手術後5年間のホルモン療法によって再発が抑制されることが報告されている。米国の乳癌患者およそ1400人を対象にした調査で、アロマターゼ阻害剤による術後補助療法はタモキシフェンよりも治療途中での中止が少ないことが明らかになった。

→私の印象では同じくらいの頻度ではないかと思うのですが…。アロマターゼ阻害剤による関節痛で継続できなくなる患者さんもそれなりにいるの思うのですが、人種の差があるのかもしれません。

④「HR陰性HER2陽性の早期乳癌、術前の化学放射線療法で手術省略の可能性も」
(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/asco2010/201006/515500.html)

早期の原発乳癌に対しては、全例手術を行うのが標準治療になっている。だが、ホルモン受容体(HR)陰性でHER2陽性の患者など一部の対象においては、術前化学療法の後に放射線治療を追加することで、手術を行わなくても済むようになるかもしれない。

→これはまだ先の話ですね。将来的に90%以上の患者さんで病理学的に完全消失できるくらいになれば、初期治療としての手術は不要になるかもしれません。

⑤「luminal乳癌に対するネオアジュバント治療は化学療法がホルモン療法よりも優れる傾向」
(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/asco2010/201006/515498.html)

luminal乳癌(ER陽性乳癌)に対するネオアジュバント治療の成績は化学療法の方がホルモン療法よりも優れる傾向にあり、特に閉経前、ERのAllredスコアが高値、またはKi67が10%を上回る患者で化学療法の方が有意に臨床的奏効率が高いことが示された。一方、副作用はホルモン療法の方が少なかった。

→これは意外な報告です。ER陽性HER2陰性(luminal A)乳癌は化学療法の感受性が悪いと言われているからです。ただこの症例の中にはHER2陽性(luminal B)例も含まれているようですので、この割合によってはこのような成績になるのかもしれません。luminal Aのみで検討したら違う結果になるかもしれません。

⑥「前治療のある日本人の局所進行・転移性乳癌にエリブリンが有効で安全」
(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/asco2010/201006/515462.html)

アントラサイクリン系抗癌剤やタキサン系抗癌剤による治療歴がある、局所進行もしくは転移性乳癌に対し、エリブリンは効果があり、安全に投与できることが日本のフェーズ2試験で明らかになった。

→日本の「エーザイ」が開発したエリブリンの報告です。すでに国内外で承認申請中の薬剤です。分子標的薬の時代に新規抗がん剤の開発はなかなか勇気がいりますが、効果があるのであれば治療の選択肢が増えてありがたいです。

⑦「日本人のHER2陰性転移性乳癌でベバシズマブとパクリタキセル併用がPFSを改善」
(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/asco2010/201006/515470.html)

HER2陰性の転移性乳癌にベバシズマブとパクリタキセルを週1回投与することで、無増悪生存期間(PFS)が延長し、忍容性も認められることが日本のフェーズ2試験で明らかになった。

→すでに大腸癌では認可されているベバシズマブ(商品名 アバスチン)ですが、乳癌にも効果があることは以前から海外で報告されています。国内での臨床試験結果が報告されたことで今後の早期認可に期待が持てます。

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