2010年6月18日金曜日

若年者の乳がん検診〜TBS vs 朝日新聞

先日ここでも触れましたが、TBSがバックアップしている”乳がん検診キャラバン さくら前線キャンペーン ”に対して、乳腺専門医と患者団体、NPO法人がキャンペーンの見直しを求める要望書を送ったことを朝日新聞が報道した件で、TBSと朝日新聞でバトルになりつつあるようです(http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/media/404758/)。

私自身は、若年者にも乳がんに関心を持ってもらいたいというTBSと関係者の主旨は理解できますし、一部で噂されているような金儲けのためや”余命1ヶ月の花嫁”の舞台版の宣伝目的のためではないと信じています。

また一方で、朝日新聞で報道されたように、乳腺外科医の立場としては若年者にマンモグラフィ単独検診を勧めるということには反対です。たとえ十分に検診希望者にマンモグラフィ検診のメリットとデメリットを説明したとしても、このことを正確に理解することはなかなか難しいのです。

マンモグラフィ検診を受けた若年受診者が、「異常なし」という結果をもらえば、「がんはない」と思ってしまうものです。濃い乳腺に隠れてがんが見えていないだけ、という可能性はあまり考えないと思います。その結果、数ヶ月後にしこりを自覚しても、”ついこの前、マンモで異常なしだったからがんじゃないよね…”と思い込んでしまう危険性は否定できません。

また、一般女性に対する影響も大きいです。最近外来を受診される若年女性は、検診目的でも症状があっても、まずマンモグラフィを希望される方が非常に多いのです。マンモグラフィが最高の検査だと思い込んでいるようです。ただ。このように外来を受診される方には、その都度詳しく検査の有用性や問題点を説明できるので、正しく理解していただくことは可能です。しかし、集団検診のような形で行なった場合には、そこまで丁寧な説明は困難なのではないかと危惧しています。少なくとも、この検診を受診される若年女性は、マンモグラフィ検診で乳がんを早期発見できることを期待してわざわざ来ているわけですから、正しく理解できているのかどうか疑問です。

超音波検診の併用を始めたことはこのキャンペーンの進歩ではありますが、要望書にもあるように、いまだに確立された検診法ではなく、検査する技師や医師の技量に大きく影響されるため、精度管理が難しいという問題を抱えています。現在臨床試験中ですので、その結果を待たなければ有益であるとは言えません。

ただ、TBSも朝日新聞も私たち医療従事者も、若年者の乳がんを早期発見したい、という気持ちは同じだと思います。お互いに反発しあうのではなく、これをきっかけに若年女性の乳がん検診をどうしていくべきかを建設的に考えていくことが大切だと私は思います。

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