また新しいタイプの治療薬が開発されました。
HER2陽性乳癌に対する分子標的薬としては、現在ハーセプチン(一般名 トラスツズマブ)、タイケルブ(一般名 ラパチニブ)が使用可能です。一般的にはこれらに抗がん剤を併用することによって治療効果を高めています。
今回スイスのロシュ社が米国食品医薬品局(FDA)に承認申請した薬剤T-DM1は、ハーセプチンと抗がん剤(DM1)を結合させた新しいタイプの薬剤です。このようなタイプを抗体-薬物複合体(ADC)と呼びます。選択的ながん細胞攻撃を可能にするADC技術は次世代がん治療としての応用が期待されています。
すでに日本でも乳がんの適応でフェーズ1試験を実施しているそうです。T-DM1は、ハーセプチンがDM1をがん細胞まで送達し、DM1が悪性腫瘍のみを選択的に攻撃する作用機序を持つため、分子標的薬と抗がん剤が効率的に作用し、既存薬に比べ副作用が少ないのが特徴と言われています。
申請には、治療歴のあるHER2陽性患者を対象とするフェーズ2試験などで得られた結果が添えられています。少なくとも2種類のHER2を標的とする分子標的治療(ハーセプチンとタイケルブ)と化学療法を受けたのちに進行した110人の患者を対象に行われ、T-DM1は、平均7種類の治療を受けてきた進行乳癌患者の33%に腫瘍縮小効果をもたらすことが示されました。
日本ではまだ先になりますが、米国ではFDAの優先審査対象に指定された場合、早ければ来年にも上市できるとのことです。
このほかにもT-DM1を単剤で投与、もしくは他の癌治療薬(カペシタビン、ペルツズマブ、ドセタキセルなど)と併用した場合の有効性と安全性を、ラパチニブやトラスツズマブなどと比較するフェーズ2試験、フェーズ3試験も進行中、または計画されているようです。
分子標的薬やこれを応用した薬剤の開発は世界中で行なわれています。今は難治性のタイプのがんであっても、近い将来には副作用も少なく有効な薬剤が開発されることを期待させてくれるニュースでした。
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