2010年7月22日木曜日

アバスチンの乳がんへの適応遠のく…

ベバシズマブ(商品名 アバスチン)は,血管内皮増殖因子(VEGF)ヒト化モノクローナル抗体製剤(分子標的薬)で,血管新生阻害作用を介し腫瘍増殖を抑制します。

国内では進行再発大腸がんや非小細胞肺がんで保険適応となっています。乳がんに対してはいまだ未承認ですが、2008年に米食品医薬品局(FDA)は進行性の未治療HER2陰性乳がんに対し,パクリタキセルとの併用による一次治療を迅速承認されたため(第Ⅲ相試験で同レジメンによる無再発生存期間の改善が認められていた)、販売元の中外製薬は2009年10月16日に乳がんに対する適応追加の承認申請を厚生労働省に行っていました。

しかし、7月20日,米食品医薬品局(FDA)の抗悪性腫瘍薬諮問委員会が進行性乳がんに対するアバスチンの承認を審議し、12対1で取り消しを可決したことが明らかになったのです!

この判定の根拠は、その後行なわれた追加の二つの臨床試験(AVADO,RIBBON 1)の結果によるものでした。
アバスチン+抗がん剤併用群vs抗がん剤単独群の比較において、多く発生した有害事象は高血圧(10.4% vs. 1.2%),蛋白尿(2.6% vs. 0%)、重篤な有害事象は動脈血栓塞栓性イベント(1.9% vs. 0.3%),出血(1.6% vs. 0.4%),発熱性好中球減少症(5.0% vs. 3.5%)と、ともに併用群に多かったにも関わらず、その全生存率には有意差がなかったということです。結局、有効性より有害性が全面に出てしまったという結果になってしまいました。新たな治療薬として期待していただけに残念です。

この結果を受けて厚生労働省がどういう反応を示すか、中外製薬が申請を取り下げるのか注目しています。非常に高価な薬剤ですので、有効性がなければ認めるべきではない(少なくとも保留すべき)と私は考えています。

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