2010年7月27日火曜日

タモキシフェンとアロマターゼ阻害剤の使い分け

同時期にタモキシフェン(TAM)とアロマターゼ阻害剤(AI)の使い分けについて二つのニュースが入ってきました。

一つ目は米国臨床腫瘍学会(ASCO)が発表したホルモン療法に関する新しいガイドラインです。

これによると、ホルモン療法の効果に関する体系的レビューの結果、閉経後女性ではTAMにAIを追加またはAI単独のほうが、TAMに比べて再発が明らかに減少(無病生存期間が改善し、癌の転移リスクも低減)したとの報告を受け、ガイドライン作成委員会では、ER陽性乳癌に対しては全員TAMの使用前後いずれかにAIを使用するよう勧めているとのことです。また、癌の再発リスク低減のため、同薬はTAM投与後5年間使用できるとしています。なお、現在使用されているAIの3剤(アリミデックス、アロマシン、フェマーラ)の間には明らかな有益性の差はないとしています。


一方、東大の中村祐輔教授らは、TAMを代謝する酵素の遺伝子解析によって、TAMが有効な群と無効な群をあらかじめ選別できる可能性があることを報告し、臨床試験を始めることを発表しました。

TAMは体内で分解され、がんに効く成分ができます。遺伝子の微妙な違いで、分解酵素の働きが「弱い」患者は、酵素の働きが「正常」「やや弱い」患者に比べ、再発の危険性が2.2-9.5倍高かったとのことです。

酵素の働きが弱いのは患者の2割ですので、このグループにはAIを投与し、残りの8割にTAMを投与すれば再発率を10%未満に抑え、効果が高いと予測しています。これによって年間110億円を節約できると試算しています。患者さんにとってもTAMがAIと同等の効果が予測されるとあらかじめわかったら、TAMのほうが安価ですので経済的にかなり助かると思います。この研究がうまくいくといいですね。

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