2010年7月15日木曜日

再発巣完全消失後の治療継続期間

一般的にがんが再発すると完全治癒は困難と言われます。たしかに簡単なことではないのですが、中には治療が非常に良く効いて、長期にわたって再発が消えた状態を維持できることがあります。

このような場合、治療(すなわちがんの消失に非常に有効だった治療)をいつまで継続するか迷ってしまうことがあります。患者さんにとっても高額な治療薬の継続はできれば避けたいという思いもあるでしょう。でも、薬をやめたらまた再発するのではないかという不安も同時にあるのです。それは私たちにとっても同様です。このようなケースでいつまで治療を継続すべきかという明確なガイドラインは存在しないからです。

一応、私はがんのタイプによっておおむね次のように考えています。

①ER(+)、HER2(-)
一般的に進行が遅いため、再再発も遅い可能性があります。再発巣の完全消失後、最低5年はホルモン療法を継続(アロマターゼ阻害剤ならできれば10年、タモキシフェン投与中に閉経したら5年投与後にアロマターゼ阻害剤をさらに5年、若年者ならLH-RH agonistを閉経年齢まで継続または卵巣摘除)します。

②ER(-)、HER2(+)
ハーセプチン+抗がん剤で完全消失した場合、抗がん剤の基本的な投与回数を最低継続(例えばドセタキセルなら4-6回以上)した上で、ハーセプチンのみを完全消失後5年間継続。

③ER(+)、HER2(+)
①と②を併用(症例によってはハーセプチンをもう少し早く終了する可能性もあり)。

④ER(-)、HER2(-)(トリプルネガティブ)
抗がん剤しか効かないため、有効な抗がん剤をできるだけ投与。その後は無治療(XC療法などの経口抗がん剤の投与が有効な場合もあるため、2年間投与しても良いかもしれません)。このタイプは再発する場合は早いため、2年間再再発しなければ治癒している可能性があります。

現在、①でもう1−2年で薬をやめれそうな患者さんが2人、②で秋にハーセプチンを終了予定の患者さんが1人いらっしゃいます。また、すでに治療を終了してお元気に過ごされている患者さんも複数いらっしゃいます(トリプルネガティブで放射線治療と抗がん剤で2回の再発を乗り越えて完全に治癒したと思われる患者さんもいらっしゃいます)。再発しても治療が奏効するとこのようなケースもあります。治療も日々進歩しています。再発しても怖くない時代が一日も早く来て欲しいですね。

0 件のコメント: