2010年9月11日土曜日

乳がん検診に触診が必要な理由

触診、マンモグラフィ、超音波検査のうち、おそらく最も有効な検査手段の組み合わせは、マンモグラフィと超音波検査です。

マンモグラフィは微細石灰化の描出に優れています。もちろん腫瘤も映りますが、小さな腫瘤、特に若年者のように濃い乳腺の場合には描出能が劣ります。一方超音波検査は微細石灰化の描出能は劣りますが、若年者の乳腺においても小さな腫瘤を発見しやすい利点があります。

触診は微細石灰化はもちろんわかりません。腫瘤もある程度の大きさ(腫瘤のある深さや乳房の大きさ、硬さによります)にならないとわかりません。ですから、ある病院では乳がん検診受診者に対して、触診を行なうかわりに超音波検査をマンモグラフィに併用しています。

ではマンモグラフィと触診、どちらが腫瘤の描出能に優れているのでしょうか?もしマンモグラフィが明らかに優れているなら触診は不要になるはずです。しかし現行の乳がん検診では、視触診+マンモグラフィとなっており、触診の併用が必要とされているのです。

その理由として考えられるのは、以下のような点です。

①厚い(硬い)乳腺の表面にある小さな腫瘤は、マンモグラフィでは映らず、触診ではわかる場合がある
②上記の乳腺において、腫瘤を触知しなくてもえくぼ症状で乳がんが発見できる場合がある
③乳頭分泌のみの乳がんは視触診でしかわからない
④マンモグラフィにはブラインドエリア(撮影範囲外になる部分…1方向では内側上部が欠けやすい)があり、逆にここは触診でわかりやすい乳腺の薄い部分である

特に④は重要です。実際にマンモグラフィの撮影範囲外に明らかな腫瘤を触知することがたまにあります。

その他に私が個人的に触診が有用だと考えている理由は、触診で乳腺の硬さや厚さがわかるのでマンモグラフィ上の乳腺濃度が濃いかどうかが推測できるため、あらかじめ超音波検査を勧めることができること、触診しながら自己検診の仕方を同時に指導できること、などがあります。

また、自己検診を指導したり、乳がん罹患率が増加していることや早期発見の重要性、40才代のマンモグラフィ検診では30%近くが映らない問題点があることなどをお話ししながら触診することは、検診受診者の緊張を和らげ、乳がんに対する関心をもっていただくことにもつながり、ひいては乳がん検診受診の継続や周囲の人々へのお誘いにもつながると思っています(ただ、検診受診者が多いと話しすぎて疲れてしまいますが…)。

2 件のコメント:

Martha さんのコメント...

hidechin先生

またまた、勉強になりました。
触診もやはり大事なのですね。
ある勉強会で乳腺外科の先生が「触診は意味がない。意味のない事に時間をかけるのはやめましょう...」みたいなことを言われていたので、そうなのかな..?と思っていました。

私の職場では超音波検査のあと診察までの待ち時間を利用して、自己検診の指導をを看護士さんがして下さっています。
「触診指導やってますよ。良かったらいかがですか?」と日々勧誘しながら検査をしています。(笑)

hidechin さんのコメント...

>Marthaさん
触診が意味がないとは思いませんが、信頼できる超音波技師と、正確な問診(乳頭分泌のチェックも含めた)ができる看護師がいれば、ほとんど触診は不要なのは事実だと思います。ただ、今のところ超音波検査が乳がん検診に導入されていない以上、視触診は必要だと思います。
自己検診の指導は、看護師さんがきちんとしてくれたら助かりますね!