2011年6月8日水曜日

無料クーポン券の本当の効果と課題

乳癌検診学会から届いたメールに掲載されていた小西 宏氏(公益財団法人日本対がん協会マネジャー)のコメントの一部を抜粋します。

国が2009年度に導入した「女性特有のがん検診の無料クーポン券」の効果について(日本対がん協会によるアンケート結果)
①クーポン券が配られた「40歳から5歳刻みで60歳まで」の受診者数は08年度の1.8倍に増えていた(回答28支部)。
②中でも「初めて検診を受けた人」は2.3倍とさらに顕著な増加ぶりであった(回答22支部)。
③調査の対象は07~09年度に続けて住民検診を受託した自治体での受診者数であり、40歳以上の受診者全体で割ると約2割の増加なので「本当の効果」は4倍ほど高かった。
④この政策をさらに効果的にするには、クーポン券を使わなかった人に理由を尋ねることが重要。09年度に使った予算は約140億円。これほどの国費をかけた政策の効果を検証して対策に生かすことが国と乳がん検診に携わる者に課せられたテーマである。


目標の検診受診率50%にはまだほど遠いですが、無料クーポン券の効果はみられたようです。乳がん検診に携わっている一人としてもそう実感してます。ただ、通常の自治体検診の年齢起算日が誕生日であるのに対して無料クーポンは4/1であること、自治体検診は偶数年齢(奇数年齢の地域もあるかもしれませんが…)なのに無料クーポンは45才、55才の奇数年齢が含まれており、場合によっては3年連続でマンモグラフィを受けることになること、クーポン券の配布はいつも遅れる(6-7月)ため、その前に受けた検診患者さんの取扱いが煩雑なこと、などの問題点もあります(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2011/02/blog-post_19.htmlをご参照下さい)。予算が許せば、偶数年齢の全ての検診を無料にしてもらえば混乱を避けることができ、受診率アップにもつながるのですが…。

そういえば昨年、この無料クーポン券の制度の不備に偶然救われた患者さんがいらっしゃいました。春にマンモグラフィ検診(偶数年齢の自治体検診)を受けて異常なしと判定されたましたが、そのあとで無料クーポン券が届いたため、年末に無料クーポン券を持参して再度検診を受けたのです。

通常、1年以内に2回のマンモグラフィはお勧めしませんが、たまたまその患者さんはそんなことは知らずにマンモグラフィを受けたところ、半年ちょっと前には認めなかった多形性の微細石灰化の集簇を認め、精密検査にて乳がんと診断されたのです。もちろん前回のマンモグラフィには複数の医師で何度も確認しましたが、微細石灰化はありませんでした。

このような症例が、通常は中間期乳がん(検診と検診の間=2年以内に自覚症状が出て発見された乳がん)となるのだと思います。往々にしてこのようなタイプは悪性度が高い傾向がありますので、無料クーポン券のおかげで自覚症状が出る前に偶然発見できた例と言えます。

札幌市では今年はまだ無料クーポン券が届いていません。今年もこの制度は継続されるようですのでそろそろ届くと思います。最近では無料クーポン券の情報が広まったためか、クーポンが届く前のこの時期は検診数が少ないです。無料クーポン対象年齢以外の偶数年齢の方は今が検診のチャンスですよ!

2 件のコメント:

itomaki さんのコメント...

近隣の市ではもう届いているところもあるようですが、札幌は7月位と書かれていました。

皆さん検診の予約は早めにお願いします。
3月はかなり混雑し、受けられなくなる事がありますので…<(_ _)>

でも早期発見ができる事が一番ですね。

hidechin さんのコメント...

>itomakiさん
そうですね。早期発見が大切なのはもちろんですし、さらなる検診受診率アップを目指さなければなりませんが、そろそろマンモグラフィ検診の限界も考慮して、より質の高い検診を考えていく時期になってきていると思います。超音波検診の併用の意義を検証するJ-STARTの結果が待ち遠しいですね。