7/4にもここで書きましたが、エリブリン(商品名 ハラヴェン)が13日の中央社会保険医療協議会(中医協)で7/19の薬価収載が承認され、発売開始が決定しました。エリブリンはクロイソ海綿から抽出した抗がん物質ハリコンドリンBの活性部位を合成した微小管阻害剤の1種です。
これに先立ち、先日製薬会社の方に来ていただき、臨床試験結果などの資料をいただきました。効果については、既報のとおり、アンスラサイクリンとタキサンが効かなくなった患者さんに対して、有意に全生存期間(OS)を延長した初めての抗がん剤ということですが、その細かい内容がわかりました。
<EMBRACE試験>
対象:アンスラサイクリン系、タキサン系両薬剤を含む治療歴を有する局所再発または転移性乳がん
方法:エリブリン群と医師選択治療群に無作為に割り付け、全生存期間(主要評価項目)、無増悪生存期間、奏効率、奏効持続期間、安全性(副次評価項目)について解析
結果:エリブリン群508例、医師選択治療群254例、前化学療法レジメン数の中央値は4レジメンであった。
[全生存期間(OS)] 13.1ヶ月 vs 10.6ヶ月(p=0.041)→追跡調査で13.2ヶ月 vs 10.5ヶ月(p=0.014)
[無増悪生存期間(PFS)] 3.6ヶ月 vs 2.2ヶ月(p=0.002 ただし独立評価委員会の評価ではp=0.137)
[奏効率] 12% vs 5%(p=0.002)
[有害事象] 無力症/疲労 54%、好中球減少症 52%、末梢神経障害 35%、悪心 35%、便秘 25%、脱毛症 45%など
多くの薬剤使用歴を有する再発患者さんの治療は容易ではありません。今回、エリブリンが示した奏効率は有意差があってもわずか12%であり、他の治療に比べて有意に延長したという生存期間も2.5ヶ月程度です。そして正式な薬価収載は明日ですが、情報によると薬価もかなり高額で1バイアル(1mg)が64070円もします。体表面積1㎡あたり1回1.4mg投与しますので通常2バイアルは使用します。これを週1回2週連続投与、1週休薬で1クールですので、1クール(3週間)あたり4バイアル=256280円、3割負担で76884円もかかります。
しかし、治療手段が限られた再発患者さんにとって、選択手段が増えることはうれしいことですし、平均2.5ヶ月でも貴重な時間を余分に確保できることは大きな意義を持つと思います。
エリブリンは肝機能が低下した患者さんで副作用(特に骨髄抑制)が強く出ることが報告されています。まだ使用経験の浅い薬剤ですので、特に最初の1年くらいは副作用に十分中止して投与しなければなりません。私たちの病院にももうすでに投与を予定している患者さんが数人いらっしゃいます。安全性を確保でき、予想以上の効果がみられることを期待しています。
4 件のコメント:
はじめまして。
エリブリンの薬価を調べててこちらに辿りつきました。
というのも・・・
早速本日エリブリンの投与が始まったのですが、
薬価がまだ正式にわからないということで会計が保留になり
次回の会計の際、合算して支払うということになり、
いくらくらいするのかな~?と調べてました。
けっこう高いんですね(;´▽`A``
>匿名さん
はじめまして。
さっそくエリブリンを使用されるのですね。副作用が強くなく、期待通りの効果が得られると良いですね!
新規抗がん剤や分子標的薬は本当に高価です。やむを得ない面もありますが、患者さんにとっては大変ですよね。高額医療費制度もありますので有効に使って下さい。
それではお大事に!
はじめまして。
乳がんが再発した家内をもつ三重県の住人です。
非常に詳しい情報を、素人に解り易く解説戴い
ており大変参考にさせて頂いております。
家内は2年前に乳がんを発症し「病期ステージ
ⅡB期相当」と診断され乳房の部分摘出と、わ
きの下のリンパ節の摘出手術を受けました。ホ
ルモンレセプターもHER2も陰性で抗がん剤と
放射線治療しか方法が無いといわれました。術
後3ヶ月間に亘り抗がん剤(エピルビシン・エ
ンドキサン)の投与を受けましたが嘔吐の副作
用が酷く、4ヶ月目から予定していた抗がん剤(パクリタキセル)の投与を中止しました。
その後乳房とわきへの放射線治療を受けて一旦
治療を終えましたが、今年の6月に首の左付け根に「しこり」が見つかり、再発と診断されました。PET-CTでは首以外の転移は見つからず、本日よりハラヴェンの投与を始めました。
こちらのブログ情報で1クール8万円程度は覚悟してましたが、1回の投与で6.2万円の請求を受けてショックを受けてます...
診療明細には「ハラヴェン静注1mg 2mL 3瓶」と記載されており量的にも多いような...
恐れていた吐き気が来ていないのが、せめてもの救いです。
>匿名さん
はじめまして。奥様の病態、ご心配のことと思います。それに加えて高額な薬価で頭が痛くなりますよね…。
少し説明に言葉足らずの点があったようですので補足いたします。本文で書いたのは、”最低でも毎回2バイアル”という意味です。使用量は体表面積に1.4をかけますので、1.43㎡以上の体表面積の方は3バイアル必要になりますので、毎回3×64070=192210円、3割なら57663円かかります。これに手技料その他がかかるとそのくらいになっても不思議ではありません。
なお、薬剤の場合、1バイアルのわずかでも使用したら1バイアル分請求されます。これは残りを他の患者さんには使用できないからです。ですから奥様の場合は過量投与ではなく、体表面積が1.43㎡を越えていたために(痩せて小柄の方でばければこのくらいの体表面積になっても不思議ではありません)3バイアル使用したためと思われますので心配はありません(経済的にはかなり厳しい額ですが…)。
コメントを投稿