2011年7月8日金曜日

乳がん再発治療研究会1

私のライフワークの一つが乳がんの再発治療です。

一般的には乳がんがひとたび再発すると、治癒は困難と言われています。もちろん、実際多くの場合、完全に治癒させるのは難しいのはその通りです。しかし、中には再発治療後、まったく再発なく長期に経過している患者さんもいらっしゃるのです。私の経験上でも再発が治癒したと思われる患者さんは何人もいらっしゃいます。

そもそも遠隔転移したら治癒しないという考え方は正しくないと私は信じています。その根拠は、術後補助療法によって生存率が改善するという事実があるからです。このことは、手術時に存在していた微小転移(何もしなければ将来顕在化して生命を脅かした)を補助療法によって根絶できた患者さんが一定数いるということを意味しています。そうでなければ術後補助療法で生存率は改善しないはずだからです。

術後補助療法で微小転移を根絶できるのであれば、再発でもある条件を満たせば完治できる可能性があるのではないか?というのが、私が再発治療をライフワークに選んだ原点です。

新病院建設に向けて、私たちの病院も少しずつ変わりつつあります。その一つが積極的な学術研究活動へのバックアップです。今までは製薬会社との共催の研究会などに関しては消極的でしたが、最近では後押ししてくれるようになってきています。先日も院長から、乳腺センターで研究会を立ち上げてはどうだ?と言われました。

乳腺関連の小規模の研究会はたくさんあります。そのほとんどは、症例検討会などの診断に関するものや最新の医療機器や新薬の講演、ASCOなどの学会レポートなどが中心です。本当の意味での自分たちが中心になった研究会というのは少なく、特に再発治療に特化した研究会は少ないということに気づいたので、もし立ち上げるなら再発治療、特に長期延命や治癒を目指した研究会にしようと決めました。

製薬会社数社に声をかけてみましたが、好意的に考えてくれていますので実現できそうな雰囲気です。これから年内発足に向けて準備をしていこうと考えています。

16 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

hidechinさま

初めまして。Aと申します。
最近、私のとても大切な方が乳がんである事がわかり、いろいろと検索していてこちらのブログにたどり着きました。
最新の乳がんの情報をわかりやすく発信してくださってありがとうございます。

友人(40代)が乳がんとわかり、検査から治療までずっとご一緒させていただいているのですが、先日手術を受けられまして、予想より状況が悪いと言われました。
腫瘍の大きさは、約7cm×2cmでリンパ節への多数の転移が見つかり40個ほど取られています(これはリンパ節の全廓清と同じ事でしょうか?)。
また、鎖骨上にも転移があったとの事(これは取れていないそうです)で、当初stageⅡb〜Ⅲaと言われていたのですが、stageⅣに該当する、との事でした。
手術前の組織診では、HER2は陰性で異形度はⅠ、と説明されました。
全身への明らかな転移は今のところ認めない、との事ですが、再発のリスクは非常に高いそうですね。
今後、全身治療を行っていく予定ですが、大きな黒い雲に覆われたような気分になってしまいました。
本人は明るく過ごしていますが、皆に心配をかけまいとして無理しているのか、本心はわかりませんが、側にいる身としては何と言葉をかけてよいものやら、悩ましいばかりです。

今回の記事を拝見して、前向きに治療に取り組んでいく事ができればそんな落ち込む事はないのかな、と少し目の前が明るくなりました。
ありがとうございます。

最後に質問させていただきたいのですが、手術直後に本人がきつい肩こりのような痛みの訴えがあり、肩のマッサージをしていたのですが、腋の奥の方に鈍痛があるから押さえて欲しいと言われ、腋の奥から腕の付け根にかけて1〜2時間揉んでしまいました。
今、思うと腋窩のリンパ節を取っており、ドレーンも入っているので、余計な刺激を与えてしまったかと不安になっています。
術直後に、腋窩やその周囲を刺激したら、その後の浮腫や痛みに影響があるのでしょうか?
本人は、マッサージをしたから排液が多くて痛みが強いんじゃないかと案じています。

つまらない質問で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

これからも、hidechinさんのブログで勉強させていただkます。

A

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(Aさん)
大切なご友人が乳がんになったということで大変ご心配のことと思います。
リンパ節転移が多かったということで、厳しい状況ではありますが、術後の化学内分泌療法や放射線治療で治癒できる可能性はあります。私の患者さんでも20個以上リンパ節転移があった患者さんでも再発なく元気に通院されている方もいらっしゃいます。残った病巣が治療にうまく反応してくれると良いですね。
術後のマッサージの件ですが、術直後のドレーンが入っている状況で行なうのは、出血をきたしたり、痛みを悪化させる可能性があるという意味で好ましい行為ではなかったとは思いますが、よほど強く行なったのでなければ今後の浮腫の発生頻度についてはあまり影響はしないと思います(マッサージをしていなくても一定の確率で起こります)。また排液量が多いことの主な原因は、腋窩リンパ節郭清を広範に行なったことに起因すると思いますので、マッサージが主な原因ではないと思いますが、完全に関連性を否定できるものでもありません。いずれにしても、患肢に対するマッサージなどの行為は、術直後でなくても主治医の許可を得てから行なうことが望ましいことは確かです。
ただ、ご友人の場合、かなり腋窩を操作しているはずですので、マッサージをしていなくても痛みが強くリンパ液の排出量が多かったはずです。あまり気になさらなくても良いかと思いますよ。
一日も早く回復すること、今後の治療が順調に行くことをお祈りしています。お大事に!

m.n さんのコメント...

先生 こんにちは。
毎日毎日暑いです。名古屋にいます。
”乳がん再発治療研究会”読みました。
患者としては一番気になるところだと思います。凄いです。 

hidechin さんのコメント...

>m.nさん
小さな研究会ですが、少しずつ症例を集めて今後の治療に活かしていけたらと思っています。

リリー さんのコメント...

hidechinnさま

私もこの4月大切なガン友を亡くしました。再発・転移と必死に闘っていましたが、最後は脊髄転移であっという間でした。

初期治療については標準治療が一般的であっても、再発治療は個人差があってしかるべき。特に抗がん剤治療についてはTry&errorのような方法しかないのでしょうか?
私の知人で肝転移している人ですが、ホルモン剤だけで13年経過しています。ホルモン剤も時々変えたり、戻したりしているとか。とても転移している人とは思えないほど元気です。
先生のように再発治療に興味をもって研究して下さる方がいらっしゃること、本当に嬉しく思います。一般論ですが、再発するともう興味ないという風潮を感じてます。(外科医が多いからかもしれないですね)
今後の研究、楽しみにしています。

hidechin さんのコメント...

>リリーさん
お友達、残念でしたね…。再発後の経過は本当に人それぞれです。どんな治療をしてもまったく効かないものもあれば、長い経過で再投与が有効な場合まであります。
再発を治癒させたいという強い思いはあるものの、実際はそう簡単なものではありません。しかし、少しずつでも経験を蓄積し検討していくことによって、道が開けると信じています。
なお、リリーさんがおっしゃるように、「再発するともう興味ない」という医師は私自身の体験からもネットでの患者さんからの情報を見ても存在しているようです。同じ乳腺外科医としてとても残念に思っています。

A さんのコメント...

hidechinさま

先日コメントさせていただきましたAです。
早々のお返事ありがとうございます。

お返事を頂いて、なぜだか涙が止まらず繰り返し先生のお返事を読み返していました。
友人に「大丈夫だよ」なんて言ってるくせに、自分自身が不安に飲み込まれていたようです。
呆然としているよりも正しい情報を収集し、治療に前向きに取り組んでもらえるようサポートしていこうと改めて思う事ができました。
ありがとうございます。

腋窩のマッサージについてもご丁寧にありがとうございました。
手術後4日目まで側についておりまして、腋窩の状態を観察していました。腫れたり色が悪くなったりはせず、また見た目にはドレーンに異常も見られなかったのですが、ずっと気になっていて、、、hidechinさんからもコメントをいただけて少しほっとしました。
苦しんでいる友人に何かしたくてついつい手が出てしましましたが、忙しそうでも看護婦さんや医師にお聞きするようにします。

ありがとうございました。

A

hidechin さんのコメント...

>Aさん
お気持ちが落ち着かれて良かったです。治療は楽ではありませんし、これから不安も多いと思いますが、無理して一人で抱え込まないようにお友達を支えてあげて下さい。
それではお大事に!

匿名 さんのコメント...

教えてください。
48歳女性です。昨年末右乳がん(充実腺管がん ClassⅤ陽性)のため、乳房を部分切除しました。しかし3ヶ月後には再び同じ右胸にしこりができました。私はホルモンの感受性が3つともなく再発したら化学療法だと言われています。今後右乳腺を全部とる手術を行いますが、予後はどんなものでしょうか?

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
短期間での乳房内再発、大変ショックのことと思います。まず、乳房内再発(これも断端再発と多発がんの2種類がありますし、炎症性乳がん型という特殊な再発形式もあります)と遠隔再発(肺や骨、肝臓などへの転移)を分けて考える必要があります。それぞれによって治療内容も予後も異なります(”再発したら化学療法”という説明は、おそらく遠隔再発のことを想定しての説明だと思います)。匿名さんの場合は局所再発だと思いますが、通常の再発よりかなり早い時期での再発なのが気になります。術後に放射線治療は行なったのでしょうか?
いずれにしても最初の手術の病理所見がどうだったのか、術後治療がどうだったのかも不明ですし、再発の状況の詳細も不明ですので予後がどうかというご質問に私はお答えすることはできませんし、安易にお答えすべきでもないと思います。申し訳ありませんが主治医の先生にお聞き下さい。
治療が順調にいくことをお祈りしています。それではお大事に。

匿名 さんのコメント...

4/5にコメントさせていただいた者です。4/15に乳腺全切除術を行いました。今回は髄様癌ClassⅤ(先回は充実腺癌)でした。一ヶ月後の再診で腋窩リンパ節の転移を疑いリンパ郭清(転移は1つありました)を行いました。4月に撮ったMRIは他への転移は認めず腫瘍マーカーも正常でした。今後化学療法を開始予定です。医師からは早期発見の手立てはこまめに受診しかないと説明を受けましたが、隠れている癌を調べる手立ては他にありますか?

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
主治医の先生がおっしゃる通り、定期的に検査をする以外に方法はありません。
腫瘍マーカーはまったくあてにはなりませんし、PETにも限界があります。隠れているかもしれない微小な転移に対してできる限りの予防策(抗がん剤やホルモン剤など)を行なうことが一番大切だと私は思います。
治療が順調に進むことをお祈りしています。
それではお大事に!

匿名 さんのコメント...

はじめまして
今年の6月、妻(39歳)が、腰痛から受診したところ、乳がんの骨転移が判明いたしまして、放射線治療15回済み、現在化学療法(EC)を1回終了したところです。4サイクル終了後にホルモン治療に入るとの事です。
腰の痛みはほぼなくなり、健常者のように元気に過ごせるようになりました。とてもステージⅣとは想像できないです・・・。
先生のお言葉とても心強く拝見させて頂きました。
私も妻ももちろんあきらめていません。完全に消えてなくならなくても、治療をして、再発しなければいいんだから・・・、といつも話しています。本当にこのブログは勇気付けられました。ありがとうございます。
これからも色々な情報発信お願い致します。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
奥様の病状、大変心配のことと思います。でもとりあえずつらい症状が改善されて良かったですね!
これからもつらい治療が続くと思いますが、笑顔を忘れずにサポートしてあげて下さいね。それではお大事に!

匿名 さんのコメント...

教えて下さい。
最初の手術から10年(見落とし3年間含む)、昨年1ケ所肺転移があり手術しました。
今フェェマーラを服用しています。
やはり1か所でも転移があれば全身に散っているのが通常でしょうか。
現在52歳、子供や親の面倒を見る年齢で悩み過ぎて鬱になってしまいました。
先生のご意見をお願いいたします。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
再発治療中とのことで大変ご不安のことと思います。
ただ、「肺転移が1個でもあれば全身に散っているのか?」というご質問に対してネット上で私がご説明するのは本来は適切ではないと思うのですが…(誤解されてしまう場合もありますので)。主治医の先生にお聞きになって、直接ご説明を受ける方が良いと思うのですが、あくまでも一般論としてお答えします。
肺にかぎらず、遠隔転移が1つでもあった場合は、他にも小さな転移が隠れていると考えるのが普通です。乳房にあったがん細胞が肺に転移するためには静脈に入り込んでちぎれ飛んだということを意味していますから、他にも同じように静脈内でちぎれた可能性があるからです。
ですから手術で転移巣を切除したあともフェマーラを内服しているわけです(原発巣の術後に補助療法を行なうのも同じような理由です)。
私の病院の患者さんの中にも肺転移を切除した患者さんがいらっしゃいますが、もう15年以上も再再発なくお元気に暮らしている方もいらっしゃいます。匿名さんの経過が順調であることをお祈りしています。
それではお大事に!