味覚障害については以前に「抗癌剤の副作用1 味覚障害1(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2009/06/blog-post_05.html)」にも書きましたが、先日の第9回日本臨床腫瘍学会で新たな研究結果が発表されました。
概要は以下の通りです。
[報告者]
独立行政法人国立病院機構四国がんセンター薬剤科 田頭尚士氏
[対象]
2010年6月から7月までに、同センターで外来癌化学療法を施行した患者381人
[方法]
アンケートによる味覚変化に関する実態調査
[結果]
味覚変化の発生:177人(47%)(男性 43人、女性 134人)
診療科別:乳腺外科(56.8%)、血液腫瘍科(58.8%)、消化器外科(50.0%)で発生割合が高い傾向がみられた。
サイクル数別発生頻度:味覚変化は1サイクル目から発生しており、サイクル数を重ねてもほぼ同様の割合で発生していた。前治療歴の有無で分けてみても同様で、どのサイクルで発生しやすいかの特定はできなかった。
レジメン別発生頻度:エピルビシン+シクロホスファミド(EC) 84.6%、ドセタキセル(DTX)±トラスツズマブ 81.1%、ベバシズマブ+パクリタキセル(PTX) 75.0%、ドセタキセル+シクロホスファミド(TC)±トラスツズマブ 74.1%、フルオロウラシル+エピルビシン+シクロホスファミド(FEC) 66.7%で頻度が高かったが、症例が少ないためどのレジメンで起きやすいという特定はできなかった。
薬剤別:エピルビシン 78.9%、シクロホスファミド 75.0%、ドセタキセル 73.2%で高い値だった。S-1でも62.5%で味覚変化が発生していた。添付文書に記載されている副作用の発現頻度と比べると、今回の検討では味覚変化を多くの患者が訴えていることが示された。
発生時期:化学療法の開始2~3日目が26%、4~7日目が30%、8~14日目が12%、15日目以降が9%とばらつきがみられた。味覚変化が続いたのは、2~3日目までが4%、4~7日目までが18%、8~15日目までが22%、16~28日目までが19%だった。
これらの結果から、味覚変化は治療歴の有無に関わらず治療初期から発生し、発生しやすい時期の特定は難しいことがわかったということです。思いのほか高頻度に味覚変化が発生しているように見えますが、最近化学療法を受けた患者さんの声からも納得できる結果です。ただ味覚変化の中には軽いものから重いものまであります。実際に問題になるような味覚の完全脱失などの症状まで訴える患者さんの頻度は低いと思います。
ただ患者さんにとって味覚が変化することは不安なことの一つであることには変わりありません。栄養科などの協力を得てレシピを工夫したり、専門のサイト(http://survivorship.jp/index.html)を参考にするのも良いと思います。
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