2011年11月19日土曜日

乳管内乳頭腫2 検査

乳管内乳頭腫(IDP) を診断するために行なう検査は、他の腫瘤の検査に加えて、乳頭からの分泌物があるときには特殊な検査を行ないます。

IDPと診断する過程で行なう主な検査と所見について書いてみます。

1.視触診: 比較的大きな嚢胞内乳頭腫(ICP)の場合は境界明瞭なしこりが触れることがあります。乳頭分泌がある場合は、出てくる孔の位置と数、分泌物の色、性状を確認します。

2.マンモグラフィ: 小さなIDPではほとんど所見はないことが多いです。ただ脂肪性の乳腺では、拡張した乳管や小さなIDPが写ることも稀にあります。ICPの場合は境界明瞭な嚢胞様のしこりとして写ることがあります。

3.超音波検査: 拡張した乳管の中にポリープとして認められるのが典型的ですが、拡張乳管しか見えなかったり、逆に分泌物のない症例では、単なる境界明瞭な腫瘤(形は様々)として認められることもあります。ICPの場合は、嚢胞の中にポリープを認めます。

4.分泌物の検査: 尿検査で用いる検査紙で分泌物の潜血反応を調べたり、分泌物中のCEA(測定キットがあります)を調べたりすることもあります。

5.分泌物の細胞診: 毎回必ず乳頭腫の細胞がこぼれ落ちているわけではありませんので、分泌物の細胞診では必ず腫瘍であることの証明ができるわけではありません(血液のみだったり、泡沫細胞というものだけのこともあります)。経過観察をする場合は、繰り返し細胞診に提出することが必要です。腫瘍細胞が証明されても、腫瘍からこぼれ落ちた細胞は変性を伴っていることもあり、良性か悪性か判断に迷う場合もあります。

6.穿刺吸引細胞診・針生検: 腫瘤が超音波検査で見える場合には直接腫瘍を穿刺して細胞を採取します。小さい腫瘍では針生検より細胞診の方が適している場合が多いと思います。大きいものでは針生検をする場合もありますが、嚢胞内乳頭腫の場合は穿刺部位に気をつけないと嚢胞内への出血が止まりにくく、血腫になってしまうこともあります。また、細胞診はもちろん、針生検でも良悪の診断が困難な場合があるのは前回述べた通りです。

7.MR: 非浸潤がんとの鑑別や多発病変のチェックに有用です(もちろんMRだけでがんを完全に否定できるわけではありません)。拡張乳管はT2という画像でよく見えるので、乳管の分布や走行がある程度推測できます。

8.乳管造影: 分泌物の出る孔を涙管ブジーという眼科で使う先が鈍になった針で少しずつ拡張して、注射器につけた針から造影剤を注入する検査です。麻酔はしませんが、滑りを良くするためにキシロカインゼリーという表面麻酔剤を針に塗りながら行ないます。怖いと思うかもしれませんが、順調に入ればさほど痛みはありません。むしろ造影剤を注入したあとで乳頭をゴムで縛るのが痛いと言われます(汗)。そのあとマンモグラフィを撮影して終了です。この検査では、超音波検査でわからない小さな乳頭腫の存在や主病巣以外の多発病変がわかることがあります。また、乳管の走行がわかりますので手術の際に乳管を追う方向を決めるのに役立ちます。ただ、腫瘤で乳管が閉塞している時には先に造影剤が入らず、まったく全体の状況がわからない場合もあります。

9.乳管内視鏡: 乳管造影と同じ操作で乳管を拡張してから乳管内に1㎜前後の細い内視鏡(管のようなもの)を入れて乳管の内腔を直接観察する検査です。腫瘤が確認できたら直接細胞診や生検を行なうこともできます。ただ、全例必須な検査というわけではありません。

以上のような検査を駆使して診断を行ないますが、完全に悪性を否定するのが難しい場合もあります。また、IDPの末梢にがんを合併することもありますので最終的には手術をお勧めすることが多いのです。次回は手術についてお話しします。

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