乳管内乳頭腫(IDP)と診断できた場合、分泌を伴っていなければ経過観察する場合もあります。ただ、前回書いたように、乳管内乳頭状病変の良悪の診断は難しい場合もありますし、周囲にがんを伴う可能性もありますので厳重な経過観察が必要です。手術をする場合は、多少周囲に正常乳腺をつけて腫瘤摘出術を行なうようにしています。
乳頭分泌を伴う場合は、良性と診断しても手術を行なうケースが多いです(ご本人が強く希望すれば経過を見る場合もありますが…)。これはやはり血液混じりの分泌物が出続けるのはあまり気持ちの良いことではないからです。良悪の確定診断がつかない場合はもちろん切除が必要です。手術を行なう場合には、乳管腺葉区域切除術という特殊な手術を行ないます。
<乳管腺葉区域切除術>
以下は私たちの施設で行なっている方法です。
①腫瘍の位置と乳管の走行がわかっている場合はあらかじめ超音波検査とMR画像を参考にマーキングしておきます。
②全身麻酔(局所麻酔で行なっている施設もあります)をかけて皮膚消毒後、乳管造影(前回参照)と同じ手技で色素(ピオクタニン)を乳管に注入します。乳頭の孔には色素が出てしまわないように涙管ブジーを留置しておきます。
③腫瘍の位置と乳管の走行を考慮して乳輪に沿って切開をします(乳輪の1/3周前後…乳輪に沿う切開は傷跡が目立ちません)。
④乳輪下組織を分けて、涙管ブジーが挿入された青く染まった乳管を見つけ出し、できるだけ乳頭側を糸で縛って切離します。
⑤切離した乳管を引き上げながら青く染まった乳腺組織を残さないように末梢方向に切除していきます(芋掘りみたいな感じです)。青い組織ぎりぎりで切除するのがコツですがなかなか難しいものです。うまく切除できるとちょうど「わかさいも」(北海道人にしかわからないかも…)か小さめの「海老フライ」のような乳腺組織が取れます。
⑥変形をきたさないように周囲乳腺を吸収糸で縫合し、皮膚も吸収糸で埋没縫合(抜糸不要な縫い方)して創部をステリテープというテープで寄せて終了です。ドレーン(排液用のチューブ)は基本的には入れません。
手術時間は1時間前後です。翌日または翌々日くらいには退院可能です。標本は5㎜間隔くらいですべて病理検索します。もしもIDPではなくがんであったり、IDPのほかにがんの合併があった場合には、後日再手術や放射線治療が必要になることがあります。悪性所見が認められず、IDPだけだった場合はこれで治療終了です。
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