2011年11月25日金曜日

アバスチン続報 FDAの最終決定と今後の展望

米食品医薬品局(FDA)がアバスチンの乳がんに対する適応取り消しを決定した件についてはここで何度か取り上げました(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2010/07/blog-post_22.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2010/12/fda.html)。その後もロシュ社の不服申し立てに対する公聴会などを開いて審議してきましたが、最終的にFDA長官の最終判断により承認取り消しが決まったそうです。
(なお、日本ではパクリタキセルとの併用で先日承認されています→http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2011/09/blog-post_30.html)

今回のFDAの判断は、アバスチンの併用が全生存期間(OS)を延長させなかったことと、安全性に問題があると判断したことが原因とされています。この判断により米国における乳がんの承認取り消しは確定されましたが、ロシュ社では乳がんに対する適応の開発を継続する方針のようです。未治療の転移患者を対象に、パクリタキセルと併用する治験を開始するほか、アバスチンが奏効しやすい患者さんを判別するためのバイオマーカーを開発するということです。AVADO試験において未治療の再発症例に対するドセタキセルとの併用で有意差が出なかったOSが、パクリタキセルとの併用では出るのか?という疑問はありますが、バイオマーカーの開発には期待したいところです。

アバスチンの薬価は、点滴静注用100mg/4ml 1バイアル50291円、400mg/16ml 1バイアル191299円。乳がんに対しては10mg/kgを2週以上の間隔で投与します。体重50kgであれば500mgですので1回につき241590円かかります(3割負担なら72477円)。1ヶ月ではその倍です。抗がん剤の分もかかりますので高額医療費制度で戻るとは言っても経済的負担はかなり大きい薬剤です。

以上のように高額な薬剤ですので、高い確率で効果がある対象を絞ることができるようになれば患者さんにとっても医療経済的にも良いことですので、この承認取り消しが乳がん患者さんにとってプラスになる結果につながれば良いと私は思っています。

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