2012年2月8日水曜日

抗癌剤の副作用18 間質性肺炎

化学療法に伴う注意すべき重篤な副作用の一つに間質性肺炎があります。普通の細菌性などの肺炎は気管支から肺胞内に発生する(肺胞性肺炎…気管支肺炎、大葉性肺炎)のに対して、間質性肺炎というのは気管支や肺胞の外側の支持組織(間質)に発生する炎症です。


原因:抗がん剤や分子標的薬、漢方薬などの薬剤、放射線、ウイルス(サイトメガロウイルス、インフルエンザウイルスなど)、膠原病など原因がはっきりしている場合と原因不明な場合(特発性)があります。

自覚症状:軽度の場合は無症状ですが、悪化すると進行性の咳(痰を伴わない乾いた咳)、息切れ、呼吸困難が出現します。間質性肺炎が慢性的に進行すると肺線維症という状態になり、肺が硬くなってガス交換の能力が低下します。治療が奏効しなければ呼吸不全から死に至ることもあります。

検査所見:聴診で特徴的なVelcroラ音という音が聴こえ、胸部CTでスリガラス状の陰影や蜂巣状の陰影を認めればほぼ診断可能です。血液検査では、CRP、KL-6、SP-A、SP-D、LDHが活動性の指標になります。

治療:薬剤性の場合は原因薬剤を中止します。重症例では大量のステロイドを用いたステロイドパルス療法を行ないます。低酸素血症に対しては酸素を投与します。


昨年後半からFEC→DTX(ドセタキセル)の治療中に間質性肺炎を併発する患者さんが立て続けに発生しています。1例はステロイドの使用を要しましたがあとの3人は軽かったので無治療で経過をみています。ステロイド使用例も改善がみられて幸い大事に至った患者さんはいませんが、間質性肺炎はイレッサで社会問題になったように時に致死的な副作用となりますので厳重な注意が必要です。

以前は乳がんの化学療法中に間質性肺炎を発症したのは数えるほどしかいませんでした。いずれも大事には至っていません。なぜ最近になって続いているのかは不明です。この2年くらいの間の変化と言えばFECの量が100mg/㎡で投与する患者さんが増えたこと、制吐剤の内容が少し変化したこと(グラニセトロンがジェネリックに変わった、イメンドとアロキシを投与するケースがある)くらいですが、これらの症例に共通している事象はありません。

この4例はいずれも術前化学療法の患者さんですので、もしかしたらこまめに効果判定のCTを撮っていたために偶然軽い間質性肺炎が見つかってしまったのかもしれません。術後補助療法として化学療法を行なう場合はあまり高頻度にCTは撮影しません(私は術後半年から1年後くらいに初回の胸部CTを撮ることが多いです)。今までも軽い間質性肺炎は発生していたけれどCTを撮影するまでの間に自然治癒したために気づかなかっただけなのでしょうか?引き続き他の化学療法中の患者さんたちにも注意を払って診ていきたいと思います。

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