再発膵癌などで使用されている抗がん剤”ジェムザール”(日本イーライリリー社:一般名 ゲムシタビン)について手術不能・再発乳癌に対しての効能追加が薬事・食品衛生審議会で認められました。来月中にも正式承認される見通しとのことです。
ジェムザールは、米国では2004年にすでに乳癌に対してFDAでアンスラサイクリン投与後の転移性乳癌治療のファーストラインとして認められていた薬剤です。この時承認にあたって提出された臨床試験の結果は以下の通りです。
対象および方法:
529人の患者において、①ジェムザール+パクリタキセル療法と②パクリタキセル単独療法とを比較。
①群では、21日サイクルの第1日目と8日目にジェムザール1250 mg/m2(静注30分間)を投与、各サイクルの第1日目にはジェムザールの前にパクリタキセル175 mg/m2(静注3時間)を投与。
②群では、単独で薬パクリタキセル175 mg/m2(静注3時間)を各21日サイクルの第1日目に投与。
評価項目と結果:
パクリタキセル併用ジェムザール群では、パクリタキセル単独療法群と比較して、進行までの期間(中央値 TtDPD 5.2ヶ月 対 2.9 ヶ月、 p<0.0001)と全奏効率(RR 40.6% 対 22.1%, p<0.0001)において、統計的有意に良好。ジェムザールとパクリタキセルの併用は、中間生存率分析においても生存率向上の強い傾向あり。
有害事象:
ジェムザール+パクリタキセル群の主なグレード3、4の有害事象は、血液系障害(好中球減少症、貧血、血小板減少症)。グレード3、4の肝臓酵素の上昇も、ジェムザール+パクリタキセル群で多い傾向あり。グレード3,4の検査値以外の毒性症状は、倦怠感、痺れ、筋肉痛。
通常、アンスラサイクリン(EC、AC、FECなど)を術後補助療法として使用したあとの再発に対するファーストラインの治療は、パクリタキセルやドセタキセル、ゼローダなどを単剤で投与するケースが多いのですが、パクリタキセルとジェムザールの併用で奏効率が上がり、奏効期間が伸びるというのはうれしい情報です。ただ、副作用は少し強めになりそうですので、実際に投与してみないと本当に患者さんにとって好ましい治療なのかどうかはわかりません。できることなら単剤での投与や他の薬剤との併用も可能な形で(もちろん裏付けになる臨床試験結果があればの話ですが)承認されると使用する側からすると助かります。
また、欧米ではトリプルネガティブ乳癌の再発治療に対してカルボプラチンとジェムザールの併用がよく行なわれています。今までは両薬剤とも乳癌は保険適応外で使用できませんでした。今回のジェムザール承認を突破口にして、カルボプラチンの保険適応承認につながることを期待しています。
<追加>
薬事日報によると、
”用法用量は、非小細胞肺癌などと異なり、1回1250mg/m2を30分かけて点滴静注し、週1回投与を2週連続し、3週目は休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す。”
となっています。
文面から考えると単剤での投与で承認されるようです。
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