2010年2月12日金曜日

乳癌の治療最新情報15 ラパチニブとレトロゾールの併用療法が米国で承認

昨年国内でもアンスラサイクリン(FECなど)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、トラスツズマブ(ハーセプチン)の投与歴のある、HER2陽性の手術不能または再発乳癌に対して承認販売されたラパチニブ(商品名 タイケルブ)ですが、今のところ国内の使用法は、カペシタビン(商品名 ゼローダ)との併用のみに限定されています。ですからすでにカペシタビンを使用してしまっている患者さんに対してでも、効果がなくなってしまったカペシタビンを再度投与しなければならないという矛盾があります。

今回米国で承認されたのは、HER2陽性、ホルモンレセプター陽性の閉経後再発乳癌の患者さんに対する、ラパチニブとレトロゾール(商品名 フェマーラ)との併用です。

追加承認に至った根拠になる臨床試験では、ER(+)かつHER2(+)の閉経後転移性乳癌患者219人を対象とした無作為二重盲検、プラセボ対照の試験で、ラパチニブとレトロゾールを併用した患者は無増悪生存期間(PFS)中央値がレトロゾール単独投与群に比べて5.2ヵ月延長したということです。併用投与群における最もよくみられた有害事象(発現率20%以上)は、下痢、発疹、嘔吐、倦怠感でした。

今回の承認においても、ホルモン療法剤が、レトロゾールに限定されています。もし、術後補助療法にレトロゾールを使用してしまった場合にはどうすればいいのか、という問いに対する答えはありません。

もし国内でもこのような形で承認されるのであれば、私ならER(+)かつHER2(+)の閉経後乳癌患者さんの術後には、万が一再発した場合のことを考えてレトロゾール以外のホルモン剤を使用するかもしれません。エストロゲン低下作用はレトロゾールが最も強いと言われていますが他のAI剤と大きな予後の差が証明されているわけではありませんので、再発時にラパチニブと併用できるようにレトロゾールを温存しておくほうが良いと考えるからです。

エビデンスが重視されるのは大切なことです。しかし、エビデンスにがんじがらめにされてしまっていて身動きができなくなっています。できればラパチニブと併用できるホルモン剤をレトロゾールに限定しない形で国内では承認されると良いのですが…。最近の傾向では無理そうですね。

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