”がんワクチン”と言えば、全国の大学病院などで研究が進められている(一部では保険外診療で投与しているクリニックなどもありますが…)進行再発がんに対するもの、というイメージが強いですが、今回の報告は、子宮頸がんに対するヒトパピローマウイルスのワクチンと同様の発癌予防目的のワクチン(”がん予防ワクチン”)が開発されたというニュースです。以下はその内容のサマリーです。
報告者:米クリーブランドクリニックのVincent K. Tuohy氏ら
報告文献:Nature Medicine5月30日オンライン版
対象:マウスを用いた動物実験
方法:乳糖合成酵素の補因子になるタンパク質α-ラクトアルブミン(通常の乳腺細胞には現れないが,授乳期間中の乳腺上皮細胞やヒト乳がん細胞の大部分で特異的に発現する)を自己抗原としたワクチンを開発し,乳がんトランスジェニックマウスおよび4T1型乳がん組織を移植したBALB/cマウス計6匹に接種。ダミー・ワクチンを接種した同種マウス6匹と比較。
結果:10か月後,ワクチン接種群では乳がん発症が認められなかったが,対照群ではすべてで腫瘍が確認された。さらに,このワクチンの投与による通常細胞への影響は認められなかった。
結論:α-ラクトアルブミンに対するワクチンには,乳がん予防につながる効果がある。
これはまだ動物実験の段階ですが、将来的には乳がん予防法として子宮頸がんと同様に期待できるワクチンだと思います。今まで開発された”がん予防ワクチン”は、子宮頸がんに対するヒトパピローマウイルスや肝がんの原因になるB型肝炎ウイルスなど、ウイルスをターゲットとしたワクチンでしたが、今回のワクチンは特異的に発現するタンパク質をターゲットにしたという点で非常に興味深いものだと思います。
なお、α-ラクトアルブミンは授乳期にも発現するタンパク質のため、対象者は妊娠・出産後の女性になりますから、実際にはどの程度の効果があるのかは未知数です。また、症例数の少ない動物実験のデータでは信頼性も安全性は十分ではありません。思わぬ副作用の出現という可能性もありますので楽観視はできませんが、期待したいワクチンです。来年には臨床試験に取りかかれる状態ということですので10年後くらいには乳がん予防の画期的な手段になっているかもしれません。
2 件のコメント:
待ちに待ったワクチンですよね~!
来年にもう臨床試験始まるですねぇ
その効果はいかほどの効果があるものか、時間はかかるけどまずは臨床試験でデータを収集しないことには前に進みませんしね
新しい治療や予防薬などの開拓は本当に一歩づつ一歩づつですものね
乳がんの特効薬になる手段が一つでも多く世に出てくれることを強く望みます!
>きみちゃんさん
そうですね。乳癌になってからの治療ももちろん重要ですけど、将来的にはやはり予防できるようになることがベストですからね。
今の子供たちが大人になるころには乳癌の予防が一般的になっているかもしれませんね!
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