今回は乳がんとは直接関係ない話ですが、女性のとっては大切なトピックです。
エストロゲンはコレステロール上昇を抑制する効果があることは以前から報告されています。実際、患者さんの血液検査結果を見ると閉経後にコレステロールの上昇が見られることは多いのです。これは閉経前の乳がん患者さんにLH-RH agonist(ゾラデックスやリュープリン)を投与した場合も同様です。
一方、閉経前女性のコレステロール値の変化についてはあまり報告を聞いたことがありませんでした。今回Eunice Kennedy Shriver米国立小児保健発育研究所(NICHD)のEnrique F. Schisterman氏らによる報告によると、月経周期中はエストロゲン値が上下するためコレステロール値が変動することが確認されたということです。女性のコレステロール値を正確に把握するには、医師は測定時の月経周期の時期を考慮し、2回の月経周期で各月の同時期に測定する必要があると述べています。
<研究の概要>
・対象:18~44歳の健常な女性259人
・方法:2回の月経周期において14回程度採血し、コレステロール値、トリグリセライド(中性脂肪)値とエストロゲン値とを比較。また、排卵を示すホルモンレベルを検出するため、自宅用排卵日検査薬を用いて月経周期の時期をグラフ化した。
・結果:
①大多数(94%)が2回の月経周期で14回以上測定した。ほとんどの女性は運動をしており、喫煙癖はなかった。
②コレステロール値が全ての測定において200mg/dLを超えた女性は5%のみであったが、19.7%は1回以上200mg/dLに達した。
③40歳以上の一部の肥満女性は他の女性に比べてコレステロール値の変動が大きかった。
④エストロゲン値が上昇すると、HDL(善玉)コレステロール値も上昇し、排卵時に最大となった。同時に総コレステロール値、LDL(悪玉)コレステロール値、トリグリセライド値は低下し、この低下はエストロゲン値が排卵で最高値になる2日後から始まり、月経開始直前が最も低かった。
これらの結果はある程度推測できた内容ではありますが、今まで証明されていなかったことなので参考になります。
乳がん患者さんにとっては直接関係はない話ではありますが、エストロゲンの変動がコレステロール値に影響を及ぼしていることがご理解いただけたのではないかと思います。
病院でコレステロール値を調べた際は、月経周期のどの時期だったかメモしておくと良いかもしれませんね。
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