2010年8月11日水曜日

代替補完療法6 ホメオパシー

最近ニュースでこのような代替治療の存在を初めて知りました(http://www.asahi.com/health/feature/homeopathy.html、http://www.asahi.com/health/news/TKY201008100476.html)。ホメオパシーを信じて標準治療を拒否して亡くなった患者さんの関係者が「憂慮する会」を設立し、ホメオパシー療法家らに真相解明を求めて運動を始めたということです。

Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/ホメオパシー)によると、海外ではけっこう前から行なわれていたようです。その後、日本の団体でも財団法人日本ホメオパシー財団、下部組織の日本ホメオパシー医学協会などが活動をしているようです。

詳細はWikipediaに書いてありますが、そもそもこの治療法(と言えるか疑問ですが)は、ドイツ人医師Samuel Christian Friedrich Hahnemann,(1755年 - 1843年)によって始められ、さまざまな病原になりうるような物質(鉱物、植物、動物などの成分)を極端に希釈したものを砂糖粒にしみ込ませて(レメディ)服用させるという治療法です。体にとっての毒物を非常に少量体内に入れ、この毒物に対する体の抵抗力を意図的に引き出すことにより、自己治癒力を含む生命力を高め、肉体的、心理的、精神的な方向が本来あるべき方向へ修正するというのがこの治療の基礎となる理論です。

当初はイギリスなどの欧米で保険適応になるほど浸透した代替医療でしたが、次第にその根拠が理論的ではないこと、この治療を信じたために手遅れになったなどの事例が続出し、ほとんどの国で正当な治療法とはみなされなくなってきています(一見、アレルギーに対する減感作療法に似ていますが、病態がまったく異なりますのでアレルギーに対する治療と同じ効果は理論的に期待できません)。

何度も書いていますが、私は代替補完療法のすべてを否定するつもりはありません。標準治療を受けながら、または標準治療が無効と判断された場合に、有害ではなく、著しく高価ではなく(この判断は難しいですが…)、患者さんが望むのであれば試みるのはダメだとは思いません。しかし、この件における一番の問題点は、標準治療を拒否することによって本来きちんと治療できるはずのチャンスを逃してしまう危険性があることです(最終的にはその患者さんの自己責任なのかもしれませんが、標準治療を受けてはいけないと思わせるような雰囲気があるのでしょう)。

なお、朝日新聞の記事に対する日本ホメオパシー医学協会HPでの由井寅子会長の反論の中では、「標準治療は否定していないし、検査などを受けることも拒否しないように指導している」というような記述があります。しかし、会長の講演では、予防接種がアレルギーや癌の増加の原因だから受けるべきではない、とか、自閉症はワクチンに含まれている水銀化合物が原因だ、などと話すなど、現代医学の常識からはかけはなれた考え方を持っているのは事実です(ワクチン中の水銀と自閉症の関係は米連邦請求裁判所で否定されていますhttp://transact.seesaa.net/article/115960715.html)。しかもこの治療に理論的根拠はないと言って過言ではありません(Wikipediaを見るだけで理解できるはずですが…。しかし、ホメオパシー関係者はLancetに掲載されたホメオパシーは効果がないというメタアナリシスの結果を否定し、エビデンスレベルの低い論文を根拠に有用性を強調しています)。今回提起された運動をきっかけにして、この治療の正当性vs違法性をきちんと評価し、正しい知識の普及に役立つことを期待しています。

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