2010.8.25に第一三共株式会社がAMG162(デノスマブ)の国内製造販売承認申請を行ないました。
今のところ骨転移に対する化学療法剤はゾメタが代表的であり、優れた効果(骨折、痛みなどの骨関連イベントの減少、骨転移自体に対する増殖抑制効果、他臓器転移に対する付随効果など)が報告されています。実際ゾメタの登場により、骨転移の治療がずいぶん進歩しました。
今回承認申請したデノスマブは、「骨転移を有する進行性乳癌患者を対象としたデノスマブのゾレドロン酸(ゾメタ)対照ランダム化二重盲検多施設共同比較試験」において、有効性がゾメタを上回ったと報告されています。
デノスマブは、通常の生理的な骨吸収のメカニズムや骨代謝調整において非常に重要な役割を果たしているRANK-RANKL系のRANKLに特異的に結合する完全ヒト型モノクローナル抗体(分子標的薬)で、骨吸収を抑制するメカニズムを持ちます。
また、骨粗鬆症の治療薬としても国内第3相臨床試験を実施しており、アロマターゼ阻害剤による骨粗鬆症にも有効との報告もあります。リウマチに対する効果もあると言われており、今後さまざまな用途で用いられるようになるかもしれません。
これでまた乳がん再発治療の武器が増えました。骨転移は生命にはあまり影響しませんが、痛みや骨折など、QOL(生活の質)を著しく低下させます。デノスマブの登場は骨転移で苦しむ患者さんに新たな光を与えてくれそうです。
4 件のコメント:
はじめまして。
10数年前に乳がんの手術を受け、その後再発手術、最近足に骨転移があったものです。遠隔転移ということで絶望の淵にいましたが、幸い内臓その他の骨は無事でした。そんな時、先生のHPにたどり着き冷静に病気と向き合う気持ちになりました。有難うございます!先生の記事デノスマブを見て、現在の自分の治療(放射線+ホルモン療法)がベストなのかな?このお薬を使ったほうがいいのかな?と思ったのですが、主治医の先生は化学療法の必要は無いでしょう、とのことでした。どのような場合にデノスマブは適用となるのでしょうか?お忙しい中、突然質問させて頂いて申し訳ございません。もしもご回答頂けましたら幸いです。宜しくお願い致します。
>匿名さん
デノスマブは一般的な化学療法(抗がん剤)とは異なります。骨転移に対してのみ特異的に働く分子標的薬と呼ばれる薬剤の一つです。
デノスマブの細かい適応(どのような状態の骨転移に使用すべきか)についてはまだ定まったものはないと思います(発売前ですし…)。ただゾメタとの比較試験でさまざまな項目で成績が上回っていたようですので適応としてはゾメタと同様と考えて良いと思います。
匿名さんはまだゾメタを使用していないのですね?
ゾメタ発売当初は骨転移で骨折の危険があったり、痛みがある症例にのみ使用していたケースが多かったと思います。しかしその後、症状が出る前から使用した方が良いという報告が出始めて、最近では骨転移と診断した時点からゾメタを投与するケースも多くなってきました。ただこれは医師によって多少の考え方の相違がありますし、転移部位によっても適応が変わる場合もあります。ゾメタの副作用(下額骨壊死など)にも留意した上で投与の判断をしなければなりません。
おそらく主治医の先生はそのあたりを考えた上で今の治療を選択されているのだと思います。
もしゾメタやデノスマブの適応がないのか疑問に思われるのでしたら直接主治医にお聞きになった方が良いのではないかと思います。
治療は長く継続しなければなりませんし、いろいろ不安になることも多いと思いますが、無理せず頑張って下さいね!それではお大事に!
早速のお返事有難うございます!抗がん剤(化学療法)とは違うものなのですね。ゾメタも使ったことはありません。怖い副作用があるとのこと、安易には頼れないのですね。前回主治医の先生に「化学療法は必要ないのでしょうか?」とお聞きしてしまったので、質問の仕方を変えて疑問を解消したいと思います。丁寧に答えて頂き有難うございました。子供が大きくなるまで元気でいられるよう、これからも頑張ります!
>匿名さん
分子標的薬も広い意味では化学療法剤の一つです。抗がん剤という表現をした場合には通常、FECやタキサンなどの殺細胞性の化学療法剤を意味するのが一般的です。
ゾメタやデノスマブは下額骨壊死などの副作用は起こりえますが、高頻度に起きるわけではありませんし、注意事項(歯科治療をあらかじめ済ませておく、投与中の侵襲的な歯科治療はなるべく避ける、口腔内を清浄化するなど)を守ればほとんどの場合、問題なく投与可能です。
匿名さんの場合に適応があるかどうかは主治医の先生の判断だと思いますが、お聞きになってみるほうが良いと思います。
それではお大事に!
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