女性ホルモンと乳がんの関連については広く知られていますが、今回は意外なニュースです。
一般的には更年期障害に対するホルモン補充療法などの女性ホルモンの暴露によって増加するのは、ER陽性乳がんと言われています。理論的にも納得がいきますし、当然と言えば当然です。
しかし、今回のボストン大学スローン疫学センターのLynn Rosenbergらの報告によると、経口避妊薬を投与されていた女性で増加する乳がんのタイプは、むしろER陰性に多かったということです。今までも、経口避妊薬で乳がんが増加する可能性については警告されていました。経口避妊薬も女性ホルモンの合剤ですので、乳がんが増えるのならば、そのタイプはER陽性ではないかと考えるのが普通だと思いますが…。
この疫学研究の対象者はBlack Women's Health Studyの5万9,027人の参加者(21~69歳)のうち、ベースラインでのがん罹患者や,プロゲスチン製剤使用者を除いた5万3,848人でした。12年間追跡し、1,392例が乳がんを発症しました。その解析結果は以下の通りです。
①病理学的情報が得られた789例の乳がん発症例についてのホルモン受容体ステータス
ER+PR+(386例),ER+PR-(109例),ER-PR+(15例),ER-PR-(279例)
①経口避妊薬の使用経験がない場合と比べて,使用経験ありの場合の罹患率比(IRR)
ER+PR+ 1.11 ER-PR- 1.65
②ER-PR-における,経口避妊薬の使用時期、期間との関連
IRRが最も高かったのは,現在の使用(最後の使用から5年未満)で,IRRは1.97
使用期間については,15年以上でIRR 2.25となり, ER-PR-のリスク上昇と有意に関連
④ER+PR+における、経口避妊薬の使用時期、期間との関連
現在の使用で10年以上使用の場合(IRR 1.66)と,最後の使用が5~9年前で5年未満の使用(IRR 2.13)で増加
10~14年の使用でIRR 1.45,15年以上の使用ではIRR 1.24
⑤経口避妊薬の使用経験がない場合と比べて最もリスクが高いカテゴリー
ER-PR-乳がんで,経口避妊薬の現在の使用かつ過去に10年以上使用経験がある場合→IRRは2.52
⑥全乳がん発症例(1,392例)について,経口避妊薬の使用経験がある場合をない場合と比べると,多変量IRRは1.09
以上から,経口避妊薬の使用はER+乳がんよりER-乳がんの発症により強く関連していて,現在の使用や長期の使用がリスクを高めるこという結果でした。
なぜ経口避妊薬の使用がER-乳がんの発症に、より影響するのかは解明されていません。
ER+PR+乳がんについても、最近および長期の使用で増加していたため、経口避妊薬と乳がん発生の因果関係については、異なる二つ以上の機序が関係しているのかもしれません。
0 件のコメント:
コメントを投稿