ベバシズマブ(商品名 アバスチン)に関する情報はここでも何度か取り上げてきました(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2009/10/avastin.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2010/06/asco-2010.html)。特に米国のFDAから承認取り消しの決定が下されたニュースが流れてからは(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2010/07/blog-post_22.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2010/12/fda.html)、日本での承認は困難だと思っていました。
ところが、先日ベバシズマブの「手術不能又は再発乳癌」に対する効能・効果および用法・用量の追加に関する承認を厚生労働省から取得したと販売元の中外製薬が発表したのです。
FDAでの判断は、全生存期間(OS)を改善できなかったというフェーズ3の結果に基づくものです。今回の日本での申請は、国内で実施されたフェーズ2と海外で実施されたフェーズ3の結果に基づいて中外製薬が厚生労働省に対して行なっていたものです。つまり、FDAはフェーズ3で全生存期間(OS)を改善しなかった点を重視して認可を取り消し、日本では無増悪生存期間(PFS)の延長を示した結果と国内での安全性と有効性の試験結果を重視したということなのでしょうか?臨床試験の有効性の評価をどちらで行なうかは非常に難しい問題です。この点に関してはこちらの記述がわかりやすいと思います。→http://blog.goo.ne.jp/cancerit_tips/e/1fba8db2e347f13e42b1ad109835a0b5
以下に今回追加された効能・効果・用法・容量を示します。
<手術不能又は再発乳癌>
パクリタキセルとの併用において、通常、成人にはベバシズマブとして1回10mg/kgを点滴静脈内注射する。投与間隔は2週間以上とする。
欧州と同様に臨床試験で行なわれたパクリタキセルとの併用に限って認可されたということになりますが、併用薬を限定されるとなかなか使いにくくなってしまいます(すでにパクリタキセルを使用している場合も多いですので)。高額な薬剤でもありますし、重篤な副作用の問題もあります(高血圧、消化管出血・穿孔など)。実際に使用できる患者さんはかなり限定されるかもしれません。
6 件のコメント:
拝啓
乳がん患者を家族に持つ者です。
医学・薬学の専門用語がよくわからないので、質問させて下さい。
質問1
現在、アバスチンは、乳がんに対し、投与が認められているお薬なのですか。
(追加承認取得の意味がよくわかりません)
質問2
認められている場合、どのような乳がん患者に適用されるのでしょうか。
以上、よろしくお願いします。
>匿名さん
はじめまして。ご質問にお答えいたします。
質問1
アバスチン の今までの保健適応は、切除不能な進行・再発大腸がんと肺がんでした。
今回はこれに加えて、「手術不能又は再発乳癌」という適応があらたに承認されたということです。ですからこれからはパクリタキセルとの併用においてのみですが使用可能になったのです。
質問2
上記の通り、「手術不能又は再発乳癌」が適応です。術後の補助療法では使用できません。なおホルモンレセプターやHER2の状態でのしばりはありませんのでトリプルネガティブ乳がんでもホルモン陽性乳がんでもHER2陽性乳がんでも使用可能です。ただし、併用薬剤はパクリタキセルと限定されていますので、原則的には単剤での投与や他剤との併用はできません。
以上です。ご理解いただけましたでしょうか?
丁寧なご回答をありがとうございます。
追加の質問をさせてください。
追加質問1
「再発乳がん」と「乳がんの肝転移」とは、同意でしょうか?
追加質問2
家族は現在、肝臓と頚椎に転移が見られ、過去に、AC、パクリタキセル、ゼローダ等を投与しています。現在は、ドセタキセルを投与しています。
パクリタキセルを併用するのならば、アバスチンの投与は可能でしょうか。
よろしく、お願いします。
>匿名さん
質問1
「再発乳がん』と言うのは、文字の通り、術後に再発した状態を言います。それはもちろん「乳がんの肝転移」もその一つですが、肝臓とは限りません。乳がんが再発しやすいのは、肺、肝、骨、リンパ節、局所、脳などですが、それらをすべて含めて「再発乳がん」と言うのです。
質問2
パクリタキセルにアバスチンを併用することはもちろん可能です。しかし以前にパクリタキセルを投与して無効なのであれば、初めてパクリタキセルをアバスチンに併用するのに比べるとアバスチンを併用したとしても効果はかなり落ちると推測できます(アバスチン単独投与に比べてさほど効果の上乗せは期待できません)。アバスチン単独投与の効果は非常に弱いですので、むしろ他の薬剤(ハラヴェンやナベルビンなど)のほうが期待が持てるのではないかと思います。これらの薬剤にアバスチンを併用することは保険では認められていませんので、単剤での投与になると思います。
取り急ぎ以上です。
ご回答ありがとうございます。
さらに、質問をさせてください。
以前投与したパクリタキセルですが、どちらかといえば有効でした。肝臓に見られた腫瘍は画像上縮小し、マーカー値(CA15-3)も、下降しました。そこで、副作用のことを考慮し、ホルモン治療に変更しました。
1年後、再びマーカー値(CA15-3)が上昇し、画像上、腫瘍の増大化が見られました。
その際の治療は、パクリタキセルではなく、ゼローダでした。脱毛の副作用が少ないという理由です。
さらに1年後、ゼローダの効果が無くなり、現在は、ドセタキセルを投与しています。パクリタキセルを選択しなかった理由は、ドセタキセルを試してみようという程度の理由です。
長くなりましたが、ここからが質問です。
上記のような経過ですが、パクリタキセルは
有効と判断できるでしょうか。
よろしく、お願いします。
>匿名さん
パクリタキセルが奏効している途中で中止したのでしたら再投与が有効な可能性はあると思います。ただそのあたりは身近で経過を見ている主治医の先生の判断によると思います。経過をみていない私より主治医の先生のほうが適切な判断ができると思いますよ。
それではお大事に。
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